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Chapter10(鵠沼編)
Chapter10-⑦【神様ヘルプ!】
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「おう、似合うな!」
風呂から上がると、腕組したミサキが待ち構えていた。
もう一週間も外してないリングの中のマラが立体部を持ち上げる。
「そろそろ来る頃だ。」
想定通りにスマホが鳴った。
「はい、今から取りに行きます。」
ピザが届いた様だ。
「ヤマトさ、エントランスに取りに行ってこいよ。」
ミサキが笑いを堪えながら言う。
「えっ…、この格好でですか?」
消え入りそうな声で聞く。
「返事はワンだろ。
とっとと行ってこい!」
荒げた声が背中を押す。
「ワン!」
慌てて財布を持つと、玄関を出た。
左右を見回すと、誰もいない。
『神様、誰とも会いませんように!』
胸の前で十字を切る。
エレベーターでは人に会いそうなので、階段を使う。
一階に着いてエントランスを覗くと、大学生らしきアルバイトが宅配用の箱を持って
待っている。
ここで躊躇していても仕方ない。
覚悟を決めて、出て行く。
自動ドアの前に立つと、ドアが開く。
振り向いたアルバイトの口が開いて止まった。
「トレーニングウエアで失礼します。」
平常を保つ様に努力する。
「トレーニングですか…。」
アルバイトはそう言うのが、やっとだった。
しかし呆然としている割りに、股間から視線を外さない。
「でも勃起してますよね?
何のトレーニングしてたんですか?
先走りでテカってるし。
お客さんも僕みたいな若造に見られて、興奮するんですね。」
アルバイトはしたり顔で言う。
「宅配先でいろんな人を見てきたけど、男の人は珍しいな。
女の人がマッパで待っている事はしょっちゅうあるけど。」
状況を理解したアルバイトは饒舌だ。
「代金は幾らですか?」
話を遮り、財布を出す。
マンションの人が通るのではないかと、気が気でない。
「お客さん、もしかしてゲイなんすか?
ツイッターでは見た事あるけど。」
アルバイトが興味本位で聞いてくる。
「ええ、まあ。」
曖昧に答え、財布を開ける。
五千円札を抜き、箱に乗せる。
アルバイトは札をポケットに捻じ込む。
そして代わりに釣銭と走り書きした領収証を箱に乗せた。
領収書を落さない様に箱を受け取り、そそくさと階段へ向かう。
「ありがとうございます。
またお願いします。」
後方から声が追ってきた。
階段の途中で領収証を確認する。
『今度ゆっくり見てやるよ。
見られたいんだろ?
電話してこい。』
携帯番号が書いてあった。
「どうだった?
イケメンだったか?」
部屋に戻ると、ミサキが笑いながら聞いてきた。
「女のマッパはよくいるけど、男の露出は初めてだと言われました。」
領収証はスパッツの中だ。
「だろうな!
温かい内に食っちゃおうぜ。」
ミサキは立ったまま箱を開け、一切れ摘まむ。
それを口に放ると、満足げに微笑んだ。
「シャワー浴びてくるから、レザー部屋で寛いでいろよ。」
ミサキは声を掛けると、風呂場に向かった。
ドアの閉まる音を聞き、隠していた領収証をバックに仕舞う。
レザー部屋は淫靡な雰囲気を醸し出していた。
一人では落ち着かず、ベッドの端に腰掛ける。
目を凝らし、部屋を見回す。
天井の隅に丸い影が浮かんでいた。
近付いて、確認する。
大きな滑車だ。
「それ、気になる?」
突然、背後から声がした。
慌てて滑車から視線を外し、後ろに向ける。
逆光の中にハーネス男が立っていた。
ハーネスを装着し、チャップスを穿いている。
ロングブーツが鈍い光沢を浮かべていた。
マスクを被ったミサキが一瞬公園のハーネス男とダブって見えた。
(つづく)
風呂から上がると、腕組したミサキが待ち構えていた。
もう一週間も外してないリングの中のマラが立体部を持ち上げる。
「そろそろ来る頃だ。」
想定通りにスマホが鳴った。
「はい、今から取りに行きます。」
ピザが届いた様だ。
「ヤマトさ、エントランスに取りに行ってこいよ。」
ミサキが笑いを堪えながら言う。
「えっ…、この格好でですか?」
消え入りそうな声で聞く。
「返事はワンだろ。
とっとと行ってこい!」
荒げた声が背中を押す。
「ワン!」
慌てて財布を持つと、玄関を出た。
左右を見回すと、誰もいない。
『神様、誰とも会いませんように!』
胸の前で十字を切る。
エレベーターでは人に会いそうなので、階段を使う。
一階に着いてエントランスを覗くと、大学生らしきアルバイトが宅配用の箱を持って
待っている。
ここで躊躇していても仕方ない。
覚悟を決めて、出て行く。
自動ドアの前に立つと、ドアが開く。
振り向いたアルバイトの口が開いて止まった。
「トレーニングウエアで失礼します。」
平常を保つ様に努力する。
「トレーニングですか…。」
アルバイトはそう言うのが、やっとだった。
しかし呆然としている割りに、股間から視線を外さない。
「でも勃起してますよね?
何のトレーニングしてたんですか?
先走りでテカってるし。
お客さんも僕みたいな若造に見られて、興奮するんですね。」
アルバイトはしたり顔で言う。
「宅配先でいろんな人を見てきたけど、男の人は珍しいな。
女の人がマッパで待っている事はしょっちゅうあるけど。」
状況を理解したアルバイトは饒舌だ。
「代金は幾らですか?」
話を遮り、財布を出す。
マンションの人が通るのではないかと、気が気でない。
「お客さん、もしかしてゲイなんすか?
ツイッターでは見た事あるけど。」
アルバイトが興味本位で聞いてくる。
「ええ、まあ。」
曖昧に答え、財布を開ける。
五千円札を抜き、箱に乗せる。
アルバイトは札をポケットに捻じ込む。
そして代わりに釣銭と走り書きした領収証を箱に乗せた。
領収書を落さない様に箱を受け取り、そそくさと階段へ向かう。
「ありがとうございます。
またお願いします。」
後方から声が追ってきた。
階段の途中で領収証を確認する。
『今度ゆっくり見てやるよ。
見られたいんだろ?
電話してこい。』
携帯番号が書いてあった。
「どうだった?
イケメンだったか?」
部屋に戻ると、ミサキが笑いながら聞いてきた。
「女のマッパはよくいるけど、男の露出は初めてだと言われました。」
領収証はスパッツの中だ。
「だろうな!
温かい内に食っちゃおうぜ。」
ミサキは立ったまま箱を開け、一切れ摘まむ。
それを口に放ると、満足げに微笑んだ。
「シャワー浴びてくるから、レザー部屋で寛いでいろよ。」
ミサキは声を掛けると、風呂場に向かった。
ドアの閉まる音を聞き、隠していた領収証をバックに仕舞う。
レザー部屋は淫靡な雰囲気を醸し出していた。
一人では落ち着かず、ベッドの端に腰掛ける。
目を凝らし、部屋を見回す。
天井の隅に丸い影が浮かんでいた。
近付いて、確認する。
大きな滑車だ。
「それ、気になる?」
突然、背後から声がした。
慌てて滑車から視線を外し、後ろに向ける。
逆光の中にハーネス男が立っていた。
ハーネスを装着し、チャップスを穿いている。
ロングブーツが鈍い光沢を浮かべていた。
マスクを被ったミサキが一瞬公園のハーネス男とダブって見えた。
(つづく)
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