妄想日記7<<DAYDREAM>>

Chapter10(続テツオ編)

Chapter10-⑥【異端なスター】

「年内で仕事が一段落します。
撮影は年末か年明けでどうでしょうか？」
宅配で届いたビザを床に置く。
胡座を組んだイツキの手が伸びる。
「年末年始ならジムも休みだから、丁度いいっす。」
口一杯に頬張りながら答えた。
シオンはひたすらスクワットを続けている。
足下にはザーメンが広がっていた。
 
「タカノリさんの行方はご存知ですか？
最近はDVDに出ていないみたいですが。」
「あー、今アメリカにいるみたい。
俺、フォロワーなんすよ。」
「アメリカですか。」
「先週、アップされた動画見ますか？
更にパワーアップしてるっすよ。」
イツキがスマホを取り出す。
「短い動画で、レザーパーティーみたいっす。」
再生ボタンを押すと、画面に指紋が残った。
 
人だかりが影となって蠢く。
その先にスポットライトが見える。
撮影者は人を掻き分け、前に進む。
皆、レザージャケットやハーネスを身に着けていた。
プロレスラーを思わせる猛者達を押し退け、視界が開けた。
スポットライトは一人のラバーマンを照らしている。
「これが現在のタカノリさん？」
「そうみたい。更にデカくなってるでしょ？」
「確かに素晴らしいボディです。」
ラバースーツを着ていても、肥大した乳首は圧倒的な存在感を示していた。
ビデオでは巨峰サイズだったが、今はゴルフボール位ありそうだ。
発達した大胸筋と括れたウエストは正に人造的だ。
ラバースーツにはぺニスシースが付いていて、だらりと下がっている。
ポージングしたラバーマンが観客を煽った。
歓声があがり、ぺニスを掴んでそれに応えている。
後ろを向き、尻を突き出す。
ラバースーツがアナルに直結していた。
「Who will do with me tonight?」
ラバーマンが叫ぶ。
一段と高まった歓声で動画は終わった。
 
「流石にアメリカでしょ。
こんなパーティーは日本じゃ考えられないっすよ。」
イツキがまたビザを咥えた。
「このラバースーツが手に入りませんか？」
タカノリよりラバースーツが気になる。
人造人間には必須に思えた。
「英語のサイトなら幾つかあるっすよ。
見てるだけで抜けるんだ。
後でアドレス送るっす。」
「ええ、宜しくお願いします。」
暫く思考が止まり、グラスを置くのも忘れた。
 
「最後の一枚っすけど、貰っていいっすか？」
脂まみれの口が動く。
「ええ、どうぞ。」
「さっきの動画をTwitterにアップしないっすか？」
「さっきのとは、シオンさんのですか？」
脂ぎった口に聞き返す。
「そう、モナークで撮影したやつ。」
「それでどうするのですか？」
真意が分からない。
「シオンさんの名前でアップしたら、結構人気出ると思うっすよ。
まあ、コアなファンだけっすけど。」
長い舌が脂を拭う。
「面白そうですね。
どんな人がツイートしてくれるか。」
「でしょ。世界中のモンスター達がツイートしてくるっすよ。
それに…、もしかしたら…。」
最後のビザが口に入る。
それを旨そうに咀嚼し、ワインで流し込む。
『もしかしたら』に続く言葉を待つ。
喉仏が大きく動き、飲み込まれたのが分かる。
「もしかすると、大物が引っ掛かるかもしれないっすよ。」
その大物が何を意味するか直ぐに理解出来た。
 
 
(つづく)