妄想日記7<<DAYDREAM>>

YAMATO

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Chapter5(蜻蛉編)

Chapter5-④【HANDS UP】

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シャワーから出ると、丸めた紙を再び広げる。
ラインIDとノエルと書いてあった。
メモの奥のディスプレイに特大のディルドが映っている。
コンドームを拒む巨大な亀頭が脳裏に浮かぶ。
冷たいシャワーを浴びたが、火照った身体に効き目はない。
スマホを手に取り、ラインIDを打ち込む。
ノエルの名前が表示された。

『海でライン貰ったので、連絡してみた。』
短いメッセージを送るのに、数分を要した。
直ぐにライン電話が鳴る。
「もしもし…。」
「連絡ないかと思ってたっすよ。」
明るい声が返ってきた。
「ああ…、貰った以上、連絡しないと悪いかと思って…。」
我ながら歯切れの悪さを実感する。
何故、連絡したのか、自分でも分からない。

「いや、嬉しいっすよ。
何て呼べばいいっすか？」
「あっ、シオン…。」
思わず本名を名乗ってしまう。
「シオンさんか、宜しく！」
快活な声に罪悪感が増す。
「いつもあんなプレイしてるんすか？
俺、ゾクゾクしちゃったっすよ。」
「あっ、いや、初めて…。まだ間もないんだ。」
成り行きでやってしまった風を装う。
「へー、初めてであそこ迄やるなら、仕込んだら何でもしそうっすね。
俺、年上を変態に落としたい願望があるんで。」
そう言われても、返す言葉が浮かばない。
「今度、デートしないっすか？秘密で。」
ノエルはテンポ良く話す。

『秘密』と言われ、テツオの顔を思い出す。
「そっ、それは無理だ。」
言葉を絞り出す。
「残念だな。俺だったらもっとシオンさんを気持ち良くさせてあげれると思ったけど。
でもシオンさんはああいうプレイの方が興奮するんですね。」
思いの外、あっさりと引き下がった。
「ああ、ごめん…。」
「別にシオンさんが謝る必要ないっすよ。
一方的に俺が好きになっただけっすから。」
「えっ、好き？俺の事を…。」
耳から離したをスマホを見詰める。
はっきり人から好きだと言われたのは初めてだった。

「シオンさんみたいなインテリの悶え顔を想像したら、一人暴走しちゃって。
こちらこそすみません。」
浜辺で悪態を吐てた同一人物とは思えない。
「別にプレイなしでも良かったんで。
飯食いながら、話を聞いてもらえれば。」
「飯位なら、別に構わないけど…。」
「えっ、マジっすか！
明日はどうっすか？」
「明日は…。」
ディスプレイでディルドが蠢いていた。
気付かぬ内に、商品説明の動画を再生していた様だ。

「シオンさん、こっち、こっち。」
陽子が手招きをしていた。
隣に複雑な表情をした主任が立っている。
ベストの上にブレザーを着た主任は七五三の様だ。
精一杯のお洒落をしていた。
主任にしてみれば、シオンが急遽来れなくなる事を願っていたに違いない。

イベント会場は想像以上に混雑していた。
「これじゃ、ゆっくり見れんな。」
立ち止まって見る事は出来ず、誘導員に背中を押される。
「写真は取らないで下さい。
館内は撮影禁止です。」
誘導員の張り上げる声が館内を殺伐とさせた。

「不審者はその後、どう？」
主任とはぐれ、本題を切り出す。
「ええ、最近はお兄ちゃんが早めに帰ってきてくれるので、落ち着いています。
でもお兄ちゃんも何時迄、気に留めていてくれるか心配で。」
確かにツグムの事だから、帰りは直ぐに遅くなるだろう。
「お兄さんが遅い時は遠慮なく言ってくれ。
俺が見守りに行くから。」
罪悪感から出た精一杯の罪滅ぼしだった。

(つづく)

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