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YAMATO

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Chapter13(生誕編)

Chapter13-⑥【黒い青春】

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ナリヒラは日曜日の昼過ぎに教習所へ行ってみた。
二階のテラスから教習コースを眺める。
二輪の教習を受けている奴は何人かいた。
四輪に比べると少ない受講者だが、ヘルメットで表情が分からない。
「遠くてよく分かんねぇな。」
独りごちた。
「三浦さん、一時からの二輪の実地にキャンセルが出ましたよ。」
受付嬢の甲高い声に振り返る。
スキンヘッドの男が受付に向かうのが目に入った。
『間違いねぇ、奴だ!
三浦っていうのか。』
ナリヒラの中に燃え滾る怒りが再燃し出す。
時間は12時45分だった。
『仕方ねぇ。一時限待つか。
まあ、その間お仕置きの方法でも考えるとするか。』
ナリヒラは受付で終了時間を確認すると、一階の喫茶店へ向かう。
 
獲物がロビーを突っ切り、自転車置場に歩いて行く。
久し振りの狩りに気持ちが高ぶる。
駐輪場に人気はない。
「よっ、久し振りだな。」
後ろ姿に声を掛ける。
振り返った顔に動揺は感じられない。
手はポケットに突っこんだままで、反抗の意思はないらしい。
「どうだ、マラはデカくなったか?
暫く振りにドライブでもしねぇか?
積もる話もあるしな。」
肩に腕を回し、ガッチリと掴んだ。
強引に進行方向を変え、駐車場へ向かう。
リョウは一言も発しない。
「ビビって言葉も出ねぇか?
少し調子に乗り過ぎ…。」
リョウが話を遮る。
「喉渇いたんだ。
そこの自販機で買って来る。
逃げないから、ちょっと待ってて。」
淡々とした物言いがナリヒラの逆鱗に触れた。
 
缶コーヒーを買って戻って来たリョウの鳩尾に、拳が減り込む。
「うっ…。」
両手で腹を抑え、膝を付く。
「とっとと歩け!」
怒声と共に、頬に激しい痛みを覚える。
頬を押さえた手袋を見ると、真っ赤に染まっていた。
指に光るスカルの指輪で、頬が切れたらしい。
助手席のドアが開くと、頭から押し込まれた。
尻を蹴られ、勢い余った身体が運転席まですっ飛んだ。
 
駐車場を出たナリヒラは河川敷を目指す。
夏場によく日焼けした場所だ。
こんな時期にまず人はいない。
「俺が教習所にいるって、何で知ったんすか?」
頬を押さえたリョウが聞いてきた。
「タレコミがあったんだよ。
名前は知らねえけどな。」
「前に俺と一緒にいた奴?」
リョウは顔を伏せながら、上目遣いで前方を見ている。
「違うな。」
戸惑うリョウを見て、笑いが込み上げてきた。
 
教習所に通っている事はジュンヤにしか言っていない。
「眼鏡を掛けたインテリ風の奴?」
イオリしかいないとピンと来た。
「まあ、そんなところだ。
真冬の川は冷たいぜ。
今の内から心臓をマッサージしておけ。」
ナリヒラが低い声で嘲笑している。
勝利を確信している姿が滑稽だ。
窓を下ろすと、バックミラーの視線が助手席に向く。
「俺は川には入らないから、必要ないっすよ。」
抑揚のない声で言い返す。
『よし、肝心な事は聞き出した。
次の信号で決行だ。
精々、カッカしろ。』
リョウは助手席のドアに寄り掛かると、ハンドルに手を伸ばす。
「てぇめぇ!」
ナリヒラが胸倉を掴む。
手を引くとハンドルが左に切れ、ガードレールが寄ってきた。
接触したミラーが後方へ転がっていく。
 
ナリヒラは教習所に行くまでは、骨の一本でも折れば気が済むと思っていた。
しかし今は、そんな気は更々ない。
「ぶっ殺してやる!」
烈火の如く怒りに震えた。
「そんなカッカしない方がいいっすよ。
信号が赤っす。
俺と心中したいんすか?
俺はゴメンだけど。」
リョウの物言いが火に油を注ぐ。
思い切りブレーキを踏む。
前の車のテールランプが眼前に迫る。
ギリギリ手前でパジェロが止まった。
咄嗟に腕を突っ張る。
危うくハンドルに顔をぶつけそうになった。
「じゃあ!安全運転した方がいいっすよ。」
パジェロを降りたリョウが身を翻して駆けていく。
「あの野郎!」
追い掛けようと、ドアに手を掛ける。
信号が青に変わった。
急いで助手席のドアを閉め、アクセルを踏み込む。
獲物が左に曲がるのが見えた。
殆ど減速させることなく、ハンドルを左に切る。
タイヤの軋む音が交差点に響く。
逃げていると思った獲物が立ち止まって、狩人を見ていた。
視線が合うと、リョウが笑った。
「ふざけやがって!」
慌ててブレーキペダルを踏み込んだ。
 
 
(つづく)
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