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YAMATO

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Chapter11(焦燥編)

Chapter11-⑧【偶然を言い訳にして】

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店先にあった公衆電話に10円玉を入れる。
番号を確認しながら回す。
今度は直ぐに出た。
「はい。」ソウイチロウの声だった。
「リョウっすけど…。」
名前を名乗る。
「おう、随分早いな。
冬休みでする事がないのか?」
ソウイチロウが質問と欠伸を同時にした。
「今日、ジムに行ってもいいっすか?」
10円玉は3枚しかない。
話をとっとと進めたい。
「ああ、いいぜ。
午前中は柔道の練習で、昼からのシフトだ。
一時頃来いよ。
着いたら、俺を呼べ。
いいな。ジムは…。」
ソウイチロウも慌ただしい時間帯らしく、ジムの場所を簡単に説明した。
「俺、昨晩のままなんで、着るウエア持ってないっすけど…。」
遠慮がちに言う。
「だったら、おいらの貸してやる。
めっちゃエロいから、覚悟して来い。
じゃあな。」
電話は切れ、10円玉が戻ってきた。
後6時間どうしようかと、考え込んだ。
 
ジムは学校の二つ手前のターミナル駅にあった。
リョウはとりあえず学校に向かう。
独りでも前転や後転、ブリッジの練習は出来る。
当然、部室には誰もいない。
ロッカーにバッグを押し込み、シングレットとシューズを出す。
ジャンパーとジャージを脱ぎ、ハーネス姿になる。
シーンとした部室で股間が疼く。
恐る恐るトールのロッカーに手を掛ける。
『カチッ。』施錠はされていない。
扉を開けると、中には着放しのシングレットやケツワレが溢れていた。
男の刺激臭が欲望を掻き立てる。
リョウはロッカーの奥を弄った。
何が出てくるか、鼓動が高鳴る。
指先に紐状の物が引っ掛かった。
それを引っ張り出し、確認する。
それはとてつもなく小さなTバックだった。
丸でヌードダンサーが身に纏う様な代物だ。
「これを先輩が?」
リョウには信じられなかった。
『あんな男らしい先輩が、こんな小さいTバックを穿くなんて。』
指先に掛かった紐が、尻の割れ目に当たる部分らしい。
これを穿いているトールを想像すると、気持ちが掻き乱された。
リョウはTバックに足を通してみる。
古びた鏡の前に立ってみた。
勃起したマラは全く隠れていない。
秘密を知ったリョウは、狂おしい想いでトレーニングに耽った。
トールを股間に感じ、前転や後転を繰り返す。
口に含んでブリッジし、仮想のトールと格闘した。
初練習日が待ち遠しくて、居ても立ってもいられない。
壁の時計を見ると、既に11時を過ぎていた。
 
リョウはハーネスを外す。
そしてディルドを取ると、またアナルに戻す。
もうこの程度のディルドでは何の抵抗もなく、物足りさを感じた。
『フィストか…。』
一瞬悩んだが、トールのTバックに再び足を通す。
『これは盗みではない。
偶然開いてたロッカーから拾っただけなんだ。』
リョウはそう自分に言い訳をする。
ジャージとジャンパーを着ると、駅へ向かう。
ターミナル駅で降りると、12時を回っていた。
牛丼屋に入り、大盛りを頼む。
計り知れない食欲を感じた。
カウンターの椅子に腰掛けると、Tバックが食い込む。
「先輩…。」思わず口を吐く。
ふと股間に目をやると、グレーのジャージに大きな染みが出来ている。
リョウは初めて穿いたTバックに、レザーと同じ愛着を覚えた。
 
線路沿いを五分程歩くと、ジムは直ぐに分かった。
雑居ビルの二階に、ボディビルダーの絵が描かれた窓ガラスが見えたからだ。
「ソウイチロウさんをお願いしたいんですが…。」
初めて入った一般のジムにリョウは戸惑う。
学校や公共のジムとは勝手が違う。
「少々お待ち下さい。」
受付の女性がトレーニングフロアへ走って行く。
少し待つと、スタッフウエアを着たソウイチロウが現れた。
受付の女性と短い会話をして、リョウに視線を向ける。
「本日は体験入会への参加という事で宜しいですか?」
ソウイチロウが気取って言った。
 
 
(つづく)
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