98 / 147
Chapter10(覚醒編)
Chapter10-①【制服のマネキン】
しおりを挟む
期末テストが終わり、部活が再開した。
冬場の水泳部は筋トレが中心で、週二回市営の温水プールに行く。
イオリとの勉強の成果があり、ジュンヤはクラスの中盤へと飛躍的にアップした。
母親の機嫌が頗る良く、クリスマスプレゼントは奮発してくれそうだ。
教えてもらった問題が幾つもテスト用紙に出ていた。
イオリから授かった武器が悉く役に立ったのだ。
テスト期間中、泳いでなかったジュンヤはこの日を待ち侘びた。
テストの好成績も伴い、気力が漲る。
「リョウはどうしたんだ?
急にスキンヘッドなんかにして?」
タクローが声を掛けてきた。
ジュンヤはコースの中で泳いでいるリョウにゆっくりと視線を向ける。
専門外のバタフライを豪快に泳いでいた。
水飛沫を撒き散らし、良く言えばダイナミックな泳ぎだ。
しかしジュンヤの目には、藻掻いている様にしか見えない。
「ああ、目標でも見付けたんじゃないか?
俺達も頑張らないとな。」
ジュンヤは適当な答えをし、ストレッチを始める。
「そうか…、だったらいいんだ。」
タクローは腑に落ちない表情だが、それ以上は聞いてこなかった。
ジュンヤが屈伸をしていると、ふと視線を感じた。
その方向に顔を向けると、下級生のひとりと視線が合う。
スグルだった。
無口な奴で、殆ど話をしたことがない。
スグルは直ぐに視線を逸らし、プールに入って行った。
二時間みっちり泳いだ。
泳ぎ疲れると、今度は性欲が頭を擡げる。
『帰りにリョウを誘ってみよう。』
ジュンヤはリョウを探す。
プールの中で、スグルと話していた。
『リョウとスグル?』
意外な組み合わせだ。
どちらも社交的ではなく、接点に見当が付かない。
リョウはスグルの肩を叩くと、プールサイドに上がった。
「リョウ、一緒に帰らないか?」
ジュンヤが声を掛ける。
「ゴメン、今日は下級生が教えて欲しいというから、少し残っていくよ。」
リョウがためらいがちに言う。
「下級生って、スグルか?」
違和感を拭い切れず、聞いてみる。
リョウが下級生の練習に付き合うなんて、今まで一度もない。
「ああ…。悪いな。」
リョウはそう言うと、そそくさと立ち去って行った。
「全員集合!」
タクローが皆に声を掛ける。
「今日の練習はここまで。
居残り練習をするのは勝手だが、各自気を付けて帰宅するように。以上。」
声を張って、注意を促した。
タクローを始め、殆どの部員がロッカーへ向かう。
ジュンヤはリョウに視線を向ける。
スグルに話し掛け、プールに入って行く。
一瞬、振り返ったスグルと視線が絡み合った。
駅へ向かう途中、急な便意が襲ってきた。
これから駅に向かうより、体育館に隣接する公園の便所の方が早く着きそうだ。
ジュンヤは方向転換すると、体育館へ戻る。
危機一髪だった。
ズボンを下ろすと同時に、肛門は決壊した。
「ふっー、間に合った。」
安堵感から、つい独り言が口を衝く。
真冬の公衆便所は非道く寒い。
身震いすると、ズボンを上げる。
水を流そうとペタルを踏みかけた時、話し声が近付いて来た。
「声を出すなよ。」
その言葉に、ペタルを踏みかけた足を元に戻す。
「うっす。」囁く様な返事が聞こえた。
ジュンヤは気配を消し、聞き耳を立てる。
隣の個室のドアが閉まる音がした。
「まさかお前がゲイだとは思わなかったよ。」
聞き覚えのある声だ。
『えっ、リョウ?』
ジュンヤは生唾を飲む。
その音が異常に大きく感じられた。
相手は何も言わないが、誰だか想像は付く。
「おらっ、プールの中でやってた事をやってみろ。
とっとと制服を脱げっ!」
リョウが威圧的に言う。
普段のおどおどしたリョウとは別人だ。
凍てつく空間に微かな衣擦れの音が響く。
「お前さ、ジュンヤを見ながら、チンポ扱いていただろ。
公共の施設をザーメン塗れにする気か?あぁ?」
リョウが動かぬ証拠を突き付ける。
「うっす。で、でも、射精はしてないっす。」
蚊の鳴くような声で、スグルが訴えた。
「当たり前だ!」
リョウはこのシチュエーションに興奮してきた様子だ。
抑え気味だった声は、次第に声高になっていく。
(つづく)
冬場の水泳部は筋トレが中心で、週二回市営の温水プールに行く。
イオリとの勉強の成果があり、ジュンヤはクラスの中盤へと飛躍的にアップした。
母親の機嫌が頗る良く、クリスマスプレゼントは奮発してくれそうだ。
教えてもらった問題が幾つもテスト用紙に出ていた。
イオリから授かった武器が悉く役に立ったのだ。
テスト期間中、泳いでなかったジュンヤはこの日を待ち侘びた。
テストの好成績も伴い、気力が漲る。
「リョウはどうしたんだ?
急にスキンヘッドなんかにして?」
タクローが声を掛けてきた。
ジュンヤはコースの中で泳いでいるリョウにゆっくりと視線を向ける。
専門外のバタフライを豪快に泳いでいた。
水飛沫を撒き散らし、良く言えばダイナミックな泳ぎだ。
しかしジュンヤの目には、藻掻いている様にしか見えない。
「ああ、目標でも見付けたんじゃないか?
俺達も頑張らないとな。」
ジュンヤは適当な答えをし、ストレッチを始める。
「そうか…、だったらいいんだ。」
タクローは腑に落ちない表情だが、それ以上は聞いてこなかった。
ジュンヤが屈伸をしていると、ふと視線を感じた。
その方向に顔を向けると、下級生のひとりと視線が合う。
スグルだった。
無口な奴で、殆ど話をしたことがない。
スグルは直ぐに視線を逸らし、プールに入って行った。
二時間みっちり泳いだ。
泳ぎ疲れると、今度は性欲が頭を擡げる。
『帰りにリョウを誘ってみよう。』
ジュンヤはリョウを探す。
プールの中で、スグルと話していた。
『リョウとスグル?』
意外な組み合わせだ。
どちらも社交的ではなく、接点に見当が付かない。
リョウはスグルの肩を叩くと、プールサイドに上がった。
「リョウ、一緒に帰らないか?」
ジュンヤが声を掛ける。
「ゴメン、今日は下級生が教えて欲しいというから、少し残っていくよ。」
リョウがためらいがちに言う。
「下級生って、スグルか?」
違和感を拭い切れず、聞いてみる。
リョウが下級生の練習に付き合うなんて、今まで一度もない。
「ああ…。悪いな。」
リョウはそう言うと、そそくさと立ち去って行った。
「全員集合!」
タクローが皆に声を掛ける。
「今日の練習はここまで。
居残り練習をするのは勝手だが、各自気を付けて帰宅するように。以上。」
声を張って、注意を促した。
タクローを始め、殆どの部員がロッカーへ向かう。
ジュンヤはリョウに視線を向ける。
スグルに話し掛け、プールに入って行く。
一瞬、振り返ったスグルと視線が絡み合った。
駅へ向かう途中、急な便意が襲ってきた。
これから駅に向かうより、体育館に隣接する公園の便所の方が早く着きそうだ。
ジュンヤは方向転換すると、体育館へ戻る。
危機一髪だった。
ズボンを下ろすと同時に、肛門は決壊した。
「ふっー、間に合った。」
安堵感から、つい独り言が口を衝く。
真冬の公衆便所は非道く寒い。
身震いすると、ズボンを上げる。
水を流そうとペタルを踏みかけた時、話し声が近付いて来た。
「声を出すなよ。」
その言葉に、ペタルを踏みかけた足を元に戻す。
「うっす。」囁く様な返事が聞こえた。
ジュンヤは気配を消し、聞き耳を立てる。
隣の個室のドアが閉まる音がした。
「まさかお前がゲイだとは思わなかったよ。」
聞き覚えのある声だ。
『えっ、リョウ?』
ジュンヤは生唾を飲む。
その音が異常に大きく感じられた。
相手は何も言わないが、誰だか想像は付く。
「おらっ、プールの中でやってた事をやってみろ。
とっとと制服を脱げっ!」
リョウが威圧的に言う。
普段のおどおどしたリョウとは別人だ。
凍てつく空間に微かな衣擦れの音が響く。
「お前さ、ジュンヤを見ながら、チンポ扱いていただろ。
公共の施設をザーメン塗れにする気か?あぁ?」
リョウが動かぬ証拠を突き付ける。
「うっす。で、でも、射精はしてないっす。」
蚊の鳴くような声で、スグルが訴えた。
「当たり前だ!」
リョウはこのシチュエーションに興奮してきた様子だ。
抑え気味だった声は、次第に声高になっていく。
(つづく)
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説







ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる