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YAMATO

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Chapter8(魔法使い編)

Chapter8-⑫【少年よ 嘘をつけ!】

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イオリはモニターに映し出された映像に、硬直する。
「リョウの奴!」一気に憤りが込み上げてきた。
早送りで映像をチェックする。
射精したザーメンを瓶詰めにしているリョウを見て、唖然とした。
高校生だと思って、甘く見ていた事を自省する。
こうなると、もう見過ごす訳にはいかない。
このままでは歯止めの利かなくなる。
リョウは遅かれ、早かれ犯罪を犯すだろう。
『止めなくちゃ。』
イオリは難問に思考を巡らす。
階段を上がる足音が近付いて来た。
イオリは停止ボタンを押すと、静かに元の位置に戻る。
 
「もうすぐ期末テストだな。」
イオリは表面上は穏やかに話し掛ける。
「はい。」リョウは落ち着かない様子で、貧乏揺すりをしていた。
「はいって、もう少し気の利いた答えはないのか?」
イオリは苦笑する。
「リョウ君はマッサージ上手いんだな。
熟睡しちゃったよ。」
話題を変えてみた。
「…。」リョウは足元を見たまま無言だ。
「やっぱり大学でも水泳をやるのか?」
答え易い様に具体的な質問をする。
リョウは首を振った。
「俺はジュンヤやタクローみたいに素質ないし。」
ボソッと答える。
 
「俺は柔道整復師になりたい。
ジュンヤみたいな才能のある選手の手助けをしたいんだ。」
リョウが初めて本心を語った。
「じゅうどうせいふくし?
それはどうすると、なれるんだ?」
イオリには初めて聞く単語だ。
「国家試験の受験資格を取得できる厚生労働大臣認定の専門学校に3年間、通わなく
ちゃならないんだ。」
的確な説明に驚く。
きちんと調べていた事に感心した。
リョウはリョウなりに未来を見据えていたんだ。
イオリはこの時初めてリョウが、自分に似ている事を知った。
親の思い描くシナリオから外れた苦悩を思い出す。
「両親には言ったのか?」
聞きづらい事を聞いてみた。
リョウは首を重そうに振る。
「反対するに決まっているさ。
親は俺の気持ちより、会社の方が大事なんだから。」
苦々しそうに吐き出す。
イオリにはリョウの苦しみが痛いほど分かる。
雁字搦めのもどかしさの中、唯一の救いが性だった。
藻掻けば藻掻くほど、逃避手段として性に傾向していく。
その過程を通り過ぎたイオリは、何とかリョウを助けてあげたい。
しかし一介の家庭教師が生徒の進路に口出ししても、親は耳を傾けないだろう。
「ねぇ、先生。」
不意にリョウが呼び掛けてきた。
「なんだい?」
イオリは顔を上げる。
「先生は男とやったことある?」
リョウが真っ直ぐな眼差しを向けてきた。
いつもの怯えた視線ではない。
イオリは答えに詰まる。
正直に言うか、はぐらかすか瞬時に判断が付かない。
 
「やっぱりそうか。」
沈黙を肯定と受け取ったリョウはニヤリと笑う。
「やっぱり。ノンケがチンポにピアスする訳ないもんな。」
リョウがイオリの股間に顔を埋めた。
すると一転して嗚咽を漏らす。
「先生助けてよ!
俺、どうしたらいいか、分からないんだ!」
安堵したのか、リョウは突然泣きじゃくる。
そしてイオリのベルトに手を掛けた。
イオリはその手を払う事が出来ない。
『今、出来る事は、現実逃避の手助けだけかもしれない。』
イオリは暗い気持ちで、リョウの暴走を見守った。
 
二階の窓からイオリの後ろ姿を見送る。
『意外と単純だな。』
リョウは舌を出す。
口の中の残滓を舌で掬うと、ザーメンの芳醇な香りが蘇った。
まだ顎に違和感が残っている。
『先生のはデカ過ぎだな。
顎が怠いや。
ヨウ先輩のは小さいし、中々丁度いいサイズってないもんだ。
やっぱジュンヤのが一番だな。』
リョウは夜風に当たりながら、ひとり表情を緩める。
部屋に戻った時、ポーズで止めたビデオが停止になっていた。
『見られた!』
それを察したリョウは咄嗟に一芝居打ったのだ。
こんな愉快な夜を独りで過ごすのは勿体ない。
「ジュンヤの所へ行って来るよ。」
玄関から声を掛けると、返事を待たずに表に出た。
自転車に跨がり、一気に加速させる。
全力でペダルを漕ぐと、自電車が宙を舞う。
視界は澄み切っていた。
遮るモノは皆無だ。
「ヒャッホー!」
リョウの奇声が夜の住宅街に響き渡った。
 
 
(完)
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