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YAMATO

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Chapter7(朋友編)

Chapter7-⑥【On Your Mark】

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再び戻ったリョウは建物の陰からカメラを回す。
RECボタンを押すと、身体が震える。
しかし罪悪感より怒りが優った。
ジュンヤがヨウをバックから犯す。
「俺にはしてくれた事ないのに…。」
ヨウの悲鳴はリョウの心の叫びと同調した。
耳を塞ぎたいが、カメラは離さない。
最後のキスは見ていられなかった。
リョウはSTOPボタンを押すと、部屋に戻る。
暗い部屋では、タクローが既に寝ていた。
微かに寝息が聞こえる。
リョウはビデオカメラを元の場所に戻すと、布団に潜り込む。
涙が溢れ出る。
「気分…、悪いのか?」
寝ていると思ったタクローが声を掛けてきた。
「いや、緊張して寝れないんだ。」
涙声になっている事にリョウは気付かない。
「そっか。無理矢理でも目を瞑った方がいいぜ。」
タクローの優しいさが身に沁みた。
 
「ジュンヤ、頑張れ!
もう少しだ!」
ヨウが声を張り上げる。
男子100m自由型はデッドヒートだ。
50mのターンでは身体半分の差で2番手だったジュンヤが、後半伸びをみせた。
差が徐々に縮まる。
会場は割れんばかりの声援が響く。
鈴木先生、リョウはもちろん、いつも冷静なタクローも立ち上って声援を送る。
タッチはほぼ同時に見えた。
皆が掲示板に注目する。
2着にジュンヤの名前が表示された。
 
「残念だったな。
3/100秒差だ。」
観客席に戻って来たジュンヤにヨウが声を掛ける。
「いや、あれが限界っす。
後10m長かったら、失禁してたっすよ。」
ジュンヤの伸ばした手がヨウとガッチリ握手した。
リョウはそれを複雑な思いで見詰める。
「バカ、それを言うなら失神だろ。」
鈴木先生が訂正すると、皆がどっと笑う。
「いや、それにしても今大会は大収穫だ。
ヨウ以来出てなかったインターハイに、来年は一挙に二人も出場出来るだろう。
これで予算もたんまり請求出来るぞ。」
鈴木先生はご満悦だ。
タクローは安定した泳ぎで、余裕の1着だ。
府大会レベルでは、タクローの心を乱す相手はいなかった。
逆にリョウの泳ぎは精彩を欠き、ベストラップから10秒近く遅れた。
結果が出なかったリョウはふさぎ込んでいる。
ジュンヤと一緒にインターハイに出るのが、リョウの夢だった。
それが無残に砕け散る。
『全てはヨウの所為だ。』
燃えだぎる視線でヨウを睨んだ。
その視線にタクローだけが気付いていた。
 
「ヨウ、今回はありがとな。
お前、もしかすると選手よりコーチに向いているんじゃないか。」
鈴木先生がヨウの肩を叩く。
「こちらこそありがとうございます。
選手達のひたむきな泳ぎを見たら、つまらない過去が吹っ切れました。
俺もマスターズ目指して、頑張ってみます。」
ヨウは先生に握手を求めた。
「じゃあ、お前達帰るぞ。」
鈴木先生が生徒達に声を掛ける。
「ありがとうございました。」
生徒三人が頭を下げた。
「タクローとジュンヤはインターハイ頑張れよ。
リョウはめげずに練習して、次見返してやれ。」
ヨウはリョウの肩に手を置こうとしたが、身を翻したリョウはそれを避けた。
手が空を切り、その場の空気が淀んだ。
「先輩、インターハイはまだ気が早いっすよ。
先生、そろそろ電車の時間です。」
タクローが機転を利かし、先生に声を掛ける。
「そ、そうだな。
じゃあ、俺達は行くから。」
鈴木先生も咄嗟の事で動揺していた。
リョウの背中を押すと、駅に向かう。
一度駅に歩き掛けたジュンヤが戻って来た。
「先輩、気にする事ないっすよ。
良かったら、連絡下さい。」
はにかんだジュンヤが紙袋を差し出す。
その中身を見たヨウは、股間が熱くなるのを感じた。
 
 
(つづく)
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