68 / 147
Chapter7(朋友編)
Chapter7-②【匂艶 THE NIGHT CLUB】
しおりを挟む
ヨウはプレッシャーを感じない予選や記録会では好成績を残した。
しかし少し大きな大会になると、力み過ぎて空回りに終わる。
そんなヨウが一度だけインターハイに出場する機会に恵まれた。
学校には横断幕が張られ、ヨウは一躍時の人となる。
サッカー部との掛け持ちもこの時ばかりは止め、水泳に集中した。
インターハイで記録を残せば推薦もあると、邪心が働く。
加減をしらないヨウは、がむしゃらに練習をした。
普段は練習にも出てこないヨウが、練習に明け暮れる。
顧問の鈴木先生も折角やる気を出したヨウを無理に止めなかった。
気持ちがあれば何とかなると信じていたのだ。
当日は緊張のあまり寝れなかった。
疲労と寝不足でヨウの泳ぎは精彩がない。
挙げ句の果て、試合で足が攣り、途中棄権する。
好成績を上げるどころか、記録すら残せなかった。
ヨウは一夜にして学校の人気者から笑い者に転落した。
「ジュンヤには同じ蹉跌を踏んで欲しくないんだ。」
鈴木先生の話しを聞いて、ヨウは自分が今日呼ばれた訳を知る。
それだけこのジュンヤに期待しているのだろう。
「敵は他の選手じゃない。
自分自身だ。
それを胆に銘じて、泳いでこい。」
鈴木先生は話しを締めた。
三人は思い思いに泳ぎ始める。
「悪かったな。嫌な事を思い思させて。」
鈴木先生がヨウの肩を叩く。
「もう忘れたっすよ。
おーい、バサロやってみろよ。」
ヨウは照れ隠しにプールの中のタクローに声を掛けた。
「チキショウ!
鈴木の奴、ふざけやかって!」
恥を掻かされたジュンヤは苛立ちを抑え切れない。
「そんなイライラすんなよ。
明日の試合で結果出せばいいんだし。」
リョウが宥める。
ジュンヤは泳ぎが乱れた理由を親友のリョウにも話していない。
ヨウの透けたハイドロが脳裡に焼き付き、動揺したのだ。
今も瞼を閉じると、その映像がハッキリと蘇る。
「チキショウ!」
ジュンヤはロッカーを蹴って、憂さを晴らす。
「じゃ、先に行くから。」
着替えの終わったタクローが出て行く。
「何だ、あいつ。
ここまで来ても単独行動か!」
ジュンヤのイライラは募るばかりだ。
「まあまあ、とにかく着替えろよ。
俺、シャワー浴びて来るよ。」
リョウは着替えを持つと、シャワーブースに消えた。
『何でこんなに苛立つんだ?』
独りになると、ジュンヤは自問自答する。
答えは分かっていた。
「じゃ先生、先に行ってて下さい。
シャワー浴びたら直ぐに戻るっすよ。」
外からヨウの声がした。
ジュンヤは慌ててシャワーブースに隠れる。
シャワーを全開にして、カーテンの隙間から覗く。
ヨウが入って来た。
鼻歌を口ずさんでいる。
誰もいないと思ったヨウは無防備だ。
競パンを脱ぎ、パイパンの睾丸にコックリングを嵌めている。
ケツワレを穿くと、ジャージを着込んだ。
「Night clubは男も濡らす…。」
その歌がドアの外に消えていった。
「えっ、ヨウ先輩がパイパン?
しかもリングにケツワレ?
もしかしてヨウ先輩も?」
ジュンヤは確信した。
熱いシャワーに頭を突っ込む。
「俺のKissはきっと痛いよ!」
いつしかジュンヤも鼻歌を口ずさんでいた。
夕飯は大広間の一画に用意されていた。
鈴木先生とヨウが昔話で盛り上がる一方で、生徒三人は黙々と食べている。
「先生、部屋でイメトレして来ます。」
箸を置いたタクローが立ち上がる。
「ああ、明日は頼んだぞ。」
ほろ酔い加減の鈴木先生が見上げて言う。
「はい。失礼します。」
頭を下げて、大広間から出て行った。
ヨウはポカンとして、タクローの後ろ姿を見送る。
「あれで大丈夫なんですか?」
タクローが消えた襖を見たまま質問した。
(つづく)
しかし少し大きな大会になると、力み過ぎて空回りに終わる。
そんなヨウが一度だけインターハイに出場する機会に恵まれた。
学校には横断幕が張られ、ヨウは一躍時の人となる。
サッカー部との掛け持ちもこの時ばかりは止め、水泳に集中した。
インターハイで記録を残せば推薦もあると、邪心が働く。
加減をしらないヨウは、がむしゃらに練習をした。
普段は練習にも出てこないヨウが、練習に明け暮れる。
顧問の鈴木先生も折角やる気を出したヨウを無理に止めなかった。
気持ちがあれば何とかなると信じていたのだ。
当日は緊張のあまり寝れなかった。
疲労と寝不足でヨウの泳ぎは精彩がない。
挙げ句の果て、試合で足が攣り、途中棄権する。
好成績を上げるどころか、記録すら残せなかった。
ヨウは一夜にして学校の人気者から笑い者に転落した。
「ジュンヤには同じ蹉跌を踏んで欲しくないんだ。」
鈴木先生の話しを聞いて、ヨウは自分が今日呼ばれた訳を知る。
それだけこのジュンヤに期待しているのだろう。
「敵は他の選手じゃない。
自分自身だ。
それを胆に銘じて、泳いでこい。」
鈴木先生は話しを締めた。
三人は思い思いに泳ぎ始める。
「悪かったな。嫌な事を思い思させて。」
鈴木先生がヨウの肩を叩く。
「もう忘れたっすよ。
おーい、バサロやってみろよ。」
ヨウは照れ隠しにプールの中のタクローに声を掛けた。
「チキショウ!
鈴木の奴、ふざけやかって!」
恥を掻かされたジュンヤは苛立ちを抑え切れない。
「そんなイライラすんなよ。
明日の試合で結果出せばいいんだし。」
リョウが宥める。
ジュンヤは泳ぎが乱れた理由を親友のリョウにも話していない。
ヨウの透けたハイドロが脳裡に焼き付き、動揺したのだ。
今も瞼を閉じると、その映像がハッキリと蘇る。
「チキショウ!」
ジュンヤはロッカーを蹴って、憂さを晴らす。
「じゃ、先に行くから。」
着替えの終わったタクローが出て行く。
「何だ、あいつ。
ここまで来ても単独行動か!」
ジュンヤのイライラは募るばかりだ。
「まあまあ、とにかく着替えろよ。
俺、シャワー浴びて来るよ。」
リョウは着替えを持つと、シャワーブースに消えた。
『何でこんなに苛立つんだ?』
独りになると、ジュンヤは自問自答する。
答えは分かっていた。
「じゃ先生、先に行ってて下さい。
シャワー浴びたら直ぐに戻るっすよ。」
外からヨウの声がした。
ジュンヤは慌ててシャワーブースに隠れる。
シャワーを全開にして、カーテンの隙間から覗く。
ヨウが入って来た。
鼻歌を口ずさんでいる。
誰もいないと思ったヨウは無防備だ。
競パンを脱ぎ、パイパンの睾丸にコックリングを嵌めている。
ケツワレを穿くと、ジャージを着込んだ。
「Night clubは男も濡らす…。」
その歌がドアの外に消えていった。
「えっ、ヨウ先輩がパイパン?
しかもリングにケツワレ?
もしかしてヨウ先輩も?」
ジュンヤは確信した。
熱いシャワーに頭を突っ込む。
「俺のKissはきっと痛いよ!」
いつしかジュンヤも鼻歌を口ずさんでいた。
夕飯は大広間の一画に用意されていた。
鈴木先生とヨウが昔話で盛り上がる一方で、生徒三人は黙々と食べている。
「先生、部屋でイメトレして来ます。」
箸を置いたタクローが立ち上がる。
「ああ、明日は頼んだぞ。」
ほろ酔い加減の鈴木先生が見上げて言う。
「はい。失礼します。」
頭を下げて、大広間から出て行った。
ヨウはポカンとして、タクローの後ろ姿を見送る。
「あれで大丈夫なんですか?」
タクローが消えた襖を見たまま質問した。
(つづく)
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説







ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる