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Chapter6(十三夜編)
Chapter6-②【終りなき疾走】
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揺れに任せ、背後から全身を押し付けてくる。
パンツの中に入れた手がケツワレを弄ぶ。
いつしかイオリは男の隆起した股間に、尻を押し付けていた。
吊り革が離せない事を言い訳にして。
地下鉄がターミナル駅に停車した。
人が一気にドアへ向かう。
抗い切れず、イオリは車外に押し出される。
電車のドアが閉まり、ホームに取り残された。
呆然と闇に消えていく電車を見え送る。
ふと脇を見ると、サラリーマンが立っていた。
イオリよりも若干背が高く、短めの髪を七三に分けている。
黒縁の眼鏡を掛けたスーツ姿だ。
ワイシャツ越しにも隆起した筋肉が見て取れた。
細身のパンツはパツンパツンで、変身前のスーパーマンといった態だ。
『こいつが痴漢の犯人か。』
イオリは無言のまま男を上から下まで観察する。
「悪いと思ったんだが、ジムから付いて来たんだ。」
リーマンがはにかみながら言う。
「えっ!ジムから?
それって尾行じゃん!」
全く記憶にない。
「結構、傍でトレーニングしてたんだけどな。
まあ、あれだけ欲情して筋トレしてたら、回りは目に入らないか。」
リーマンがクスリと笑った。
イオリは返す言葉もない。
リーマンが手に持ったジャケットを羽織る。
立ち去るのかと思い、イオリは安堵の溜息を吐く。
「茶でもしないか?
それとも便所の方がいい?」
リーマンが小声で聞く。
二人の後ろには、次の電車を待つ帰宅人が並んでいた。
「お茶でいいよ。」
イオリは列を抜けると、エスカレーターに向かう。
「ちょっと待てよ。」
リーマンが慌てて追ってきた。
追い付くと、一段下のエスカレーターに乗る。
首筋に温かい息が当たった。
身体を密着させ、イオリの尻を摩る。
「止めろよ。人が見てるだろ。」
イオリは振り返り睨んだ。
「別にいいじゃないか。
二度と会わないさ。
それにジムじゃ、あんな大胆だったんだし。」
リーマンは苦情など意に介さず、更に力を込めた。
改札を出ると、ソウイチロウと待ち合わせした店に向かう。
「ここでいい?」他に店を知らないイオリが聞く。
「ああ、いいぜ。
転勤して間もないんで、土地感が全くないんだ。」
リーマンはハンカチで汗を拭きながら答えた。
席に座ると、リーマンはジャケットを脱ぐ。
ネクタイを外し、胸元のボタンを外した。
はち切れそうな大胸筋が現れる。
イオリは視線を逸らし、メニューに目を向けた。
「俺はアイスコーヒーでいいや。」
リーマンは勢い良く扇子で扇ぎだす。
「もう10月なのに、そんなに暑い?」
汗で濡れたワイシャツの下に乳首が透けている。
濡れた腋の下が、やけに卑猥に見えた。
「風呂から慌てて追ってきたからな。」
リーマンが照れ顔で答える。
「君はいつもあんな格好でトレーニングしているのか?
あんなエロいウエアを着て、筋トレしている奴を初めて見たぞ。
東京にもいないぜ。」
笑みの中に好色さが加わった。
「エロい?イオリは普通だと思っているんだけど…。」
イオリは惚けて答える。
「イオリ君って言うんだ。
俺はマサル。通称マッスルだ。」
マサルは一気にアイスコーヒーを飲み干す。
「一緒にいたのは彼氏か?」
今度は水を一口飲んで聞いてきた。
「うん、まあ…。微妙なところ。」
曖昧な答えをする。
「付き合ってないのか?
だったら俺にも希望はあるな!」
マサルは不明瞭な答えを都合良く解釈した。
「俺さ、Sなんだ。
イオリ君みたいな変態Mを見ると、血が騒ぐんだ。
さっきみたいなエロいウエアを着させてさ、オイル塗れにして犯したい。
君が望むなら拘束してもいいぜ。
イオリ君はヒーローになりたくないか?」
マサルはひとり舞い上がり、矢継ぎ早に語りだす。
「ヒーロー?イオリが?」
イオリは最後の質問の意図が理解出来ずにいた。
変身前のスーパーマンは目の前の男の方だ。
「ああ、ヒーローだ。」
マサルは顔を寄せて、繰り返した。
(つづく)
パンツの中に入れた手がケツワレを弄ぶ。
いつしかイオリは男の隆起した股間に、尻を押し付けていた。
吊り革が離せない事を言い訳にして。
地下鉄がターミナル駅に停車した。
人が一気にドアへ向かう。
抗い切れず、イオリは車外に押し出される。
電車のドアが閉まり、ホームに取り残された。
呆然と闇に消えていく電車を見え送る。
ふと脇を見ると、サラリーマンが立っていた。
イオリよりも若干背が高く、短めの髪を七三に分けている。
黒縁の眼鏡を掛けたスーツ姿だ。
ワイシャツ越しにも隆起した筋肉が見て取れた。
細身のパンツはパツンパツンで、変身前のスーパーマンといった態だ。
『こいつが痴漢の犯人か。』
イオリは無言のまま男を上から下まで観察する。
「悪いと思ったんだが、ジムから付いて来たんだ。」
リーマンがはにかみながら言う。
「えっ!ジムから?
それって尾行じゃん!」
全く記憶にない。
「結構、傍でトレーニングしてたんだけどな。
まあ、あれだけ欲情して筋トレしてたら、回りは目に入らないか。」
リーマンがクスリと笑った。
イオリは返す言葉もない。
リーマンが手に持ったジャケットを羽織る。
立ち去るのかと思い、イオリは安堵の溜息を吐く。
「茶でもしないか?
それとも便所の方がいい?」
リーマンが小声で聞く。
二人の後ろには、次の電車を待つ帰宅人が並んでいた。
「お茶でいいよ。」
イオリは列を抜けると、エスカレーターに向かう。
「ちょっと待てよ。」
リーマンが慌てて追ってきた。
追い付くと、一段下のエスカレーターに乗る。
首筋に温かい息が当たった。
身体を密着させ、イオリの尻を摩る。
「止めろよ。人が見てるだろ。」
イオリは振り返り睨んだ。
「別にいいじゃないか。
二度と会わないさ。
それにジムじゃ、あんな大胆だったんだし。」
リーマンは苦情など意に介さず、更に力を込めた。
改札を出ると、ソウイチロウと待ち合わせした店に向かう。
「ここでいい?」他に店を知らないイオリが聞く。
「ああ、いいぜ。
転勤して間もないんで、土地感が全くないんだ。」
リーマンはハンカチで汗を拭きながら答えた。
席に座ると、リーマンはジャケットを脱ぐ。
ネクタイを外し、胸元のボタンを外した。
はち切れそうな大胸筋が現れる。
イオリは視線を逸らし、メニューに目を向けた。
「俺はアイスコーヒーでいいや。」
リーマンは勢い良く扇子で扇ぎだす。
「もう10月なのに、そんなに暑い?」
汗で濡れたワイシャツの下に乳首が透けている。
濡れた腋の下が、やけに卑猥に見えた。
「風呂から慌てて追ってきたからな。」
リーマンが照れ顔で答える。
「君はいつもあんな格好でトレーニングしているのか?
あんなエロいウエアを着て、筋トレしている奴を初めて見たぞ。
東京にもいないぜ。」
笑みの中に好色さが加わった。
「エロい?イオリは普通だと思っているんだけど…。」
イオリは惚けて答える。
「イオリ君って言うんだ。
俺はマサル。通称マッスルだ。」
マサルは一気にアイスコーヒーを飲み干す。
「一緒にいたのは彼氏か?」
今度は水を一口飲んで聞いてきた。
「うん、まあ…。微妙なところ。」
曖昧な答えをする。
「付き合ってないのか?
だったら俺にも希望はあるな!」
マサルは不明瞭な答えを都合良く解釈した。
「俺さ、Sなんだ。
イオリ君みたいな変態Mを見ると、血が騒ぐんだ。
さっきみたいなエロいウエアを着させてさ、オイル塗れにして犯したい。
君が望むなら拘束してもいいぜ。
イオリ君はヒーローになりたくないか?」
マサルはひとり舞い上がり、矢継ぎ早に語りだす。
「ヒーロー?イオリが?」
イオリは最後の質問の意図が理解出来ずにいた。
変身前のスーパーマンは目の前の男の方だ。
「ああ、ヒーローだ。」
マサルは顔を寄せて、繰り返した。
(つづく)
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