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Chapter5(楽園編)
Chapter5-⑩【話しかけたかった】
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イオリは周辺を見回す。
数人の男達がえげつない笑みを浮かべ立っていた。
中にはペニスを扱いている者もいる。
依然のイオリならここで冷静になった。
しかし今のイオリは止まらない。
内で燃え上がった炎が、イオリを突き動かす。
「下の兄ちゃんが感じてないみたいだから、代わってやろうか?」
ギャラリーの一人が声を掛けてきた。
ソウイチロウがその男を見る。
太鼓腹に六尺を絞めた年配の男だ。
「あんたじゃ、役不足だ。」
吐き捨てる様に言う。
ソウイチロウはバッグからオイルを取り出すと、イオリの肩から浴びせ掛けた。
流れ落ちるオイルを掌で万遍なく伸ばす。
陽光を浴びるイオリを下から見上げる。
脂肪のない細身の筋肉がキラキラと輝く。
『美しい。』と思う。
しかしまだ何かが足りない。
ソウイチロウは両手でイオリを撫で回しながら、足りない物を探した。
「クッソォ!好き勝手しやがって!」
岩の陰から見ていたジョージは心中穏やかでない。
「何、ぶつぶつ言ってるの?」
突然、背後から声がした。
振り向くと、競パンを穿いた青年が立っていた。
顔立ちはイオリに似ているが、肩幅のガッチリした水泳体型だ。
「こんな遠くから見て悶々とする位なら、もっと近くから見ればいいじゃないの?」
青年は極めて最もな事を言う。
「確かにな。お前は見に行かないのか?」
ジョージは年上の威厳を保つため、態とぞんざいに聞く。
「出来てる奴らを見たって意味ないし。
僕はやれる相手を探してるんだから。
他人の交尾には興味ないさ。」
青年はまたもや当たり前の事を言った。
「おじさん、僕とやる?」
青年は無駄な駆け引きはしない様だ。
『おじさん?まだ30半ばなのに…。』
ジョージは失笑するしかない。
それに沖縄の件が片付くまで、性欲どころではなかった。
しかしこの青年は使えそうだ。
「お前、なんて名前だ?」
ジョージは青年の質問には答えず、質問をした。
「訂正が二つ。
まずは僕の質問に対する回答がない。
二つ目は人に名前を尋ねる時は、先に自分が名乗るのが常識。
ちなみに名前はトウマ。」
トウマは悪戯っ子の様な笑みを零す。
『何がちなみにだ!
どいつもこいつも俺を馬鹿にしやかって!』
ジョージは必死に冷静さを保とうと怒りを抑える。
「悪かったな。
俺はジョージだ。
実はよ、上に乗ってるのは俺の相方なんだ。
下の奴に寝取られた。」
ジョージは当たらずとも遠からずな説明をした。
「ふーん。で、ジョージはどうしたいの?」
トウマの関心を引いた様だ。
「年上はさん付けで呼ぶのが常識だぜ。」
ジョージが言い返す。
「ゴメン。ジョージさんは上の奴を取り戻したいんだ?」
トウマは素直に言い直す。
ジョージはサッパリした性格のトウマが気に入った。
「ああ、何とかして、取り戻したいんだ。
協力してくれないか?」
ジョージも素直に薄くなった後頭部を見せる。
「別に構わないよ。
どうせ今日はタイプがいなくて、暇してるから。
で、どうすればいい?」
トウマが乗ってきた。
「じゃあ、あいつらの所に行って…。」
ジョージが耳打ちする。
イオリが仰け反り、快楽に身を委ねている。
陽射しがジリジリと二人を焦がす。
ソウイチロウはその光景に満足しつつも、イオリの深淵に踏み込む手段を苦慮してい
た。
そこに踏み込むには、ドアを開ける鍵が必要だ。
『イオリ本来の姿を見たい。
おいらが覚醒してやる。』
ソウイチロウはギャラリーが一人増えた事に気付く。
イオリと雰囲気の似た青年だった。
その青年と視線が絡み合う。
「いつまでそんな甘ったるい絡みをしているの?
もう飽きちゃったよ。
どうせなら、あの岩場に吊っちゃえば?」
青年が口を開く。
ソウイチロウは身体を起こし、青年の視線の先を見る。
岩場の先端が突き出し、波が打ち寄せていた。
確かにその先端は、吊すのに丁度良い。
(つづく)
数人の男達がえげつない笑みを浮かべ立っていた。
中にはペニスを扱いている者もいる。
依然のイオリならここで冷静になった。
しかし今のイオリは止まらない。
内で燃え上がった炎が、イオリを突き動かす。
「下の兄ちゃんが感じてないみたいだから、代わってやろうか?」
ギャラリーの一人が声を掛けてきた。
ソウイチロウがその男を見る。
太鼓腹に六尺を絞めた年配の男だ。
「あんたじゃ、役不足だ。」
吐き捨てる様に言う。
ソウイチロウはバッグからオイルを取り出すと、イオリの肩から浴びせ掛けた。
流れ落ちるオイルを掌で万遍なく伸ばす。
陽光を浴びるイオリを下から見上げる。
脂肪のない細身の筋肉がキラキラと輝く。
『美しい。』と思う。
しかしまだ何かが足りない。
ソウイチロウは両手でイオリを撫で回しながら、足りない物を探した。
「クッソォ!好き勝手しやがって!」
岩の陰から見ていたジョージは心中穏やかでない。
「何、ぶつぶつ言ってるの?」
突然、背後から声がした。
振り向くと、競パンを穿いた青年が立っていた。
顔立ちはイオリに似ているが、肩幅のガッチリした水泳体型だ。
「こんな遠くから見て悶々とする位なら、もっと近くから見ればいいじゃないの?」
青年は極めて最もな事を言う。
「確かにな。お前は見に行かないのか?」
ジョージは年上の威厳を保つため、態とぞんざいに聞く。
「出来てる奴らを見たって意味ないし。
僕はやれる相手を探してるんだから。
他人の交尾には興味ないさ。」
青年はまたもや当たり前の事を言った。
「おじさん、僕とやる?」
青年は無駄な駆け引きはしない様だ。
『おじさん?まだ30半ばなのに…。』
ジョージは失笑するしかない。
それに沖縄の件が片付くまで、性欲どころではなかった。
しかしこの青年は使えそうだ。
「お前、なんて名前だ?」
ジョージは青年の質問には答えず、質問をした。
「訂正が二つ。
まずは僕の質問に対する回答がない。
二つ目は人に名前を尋ねる時は、先に自分が名乗るのが常識。
ちなみに名前はトウマ。」
トウマは悪戯っ子の様な笑みを零す。
『何がちなみにだ!
どいつもこいつも俺を馬鹿にしやかって!』
ジョージは必死に冷静さを保とうと怒りを抑える。
「悪かったな。
俺はジョージだ。
実はよ、上に乗ってるのは俺の相方なんだ。
下の奴に寝取られた。」
ジョージは当たらずとも遠からずな説明をした。
「ふーん。で、ジョージはどうしたいの?」
トウマの関心を引いた様だ。
「年上はさん付けで呼ぶのが常識だぜ。」
ジョージが言い返す。
「ゴメン。ジョージさんは上の奴を取り戻したいんだ?」
トウマは素直に言い直す。
ジョージはサッパリした性格のトウマが気に入った。
「ああ、何とかして、取り戻したいんだ。
協力してくれないか?」
ジョージも素直に薄くなった後頭部を見せる。
「別に構わないよ。
どうせ今日はタイプがいなくて、暇してるから。
で、どうすればいい?」
トウマが乗ってきた。
「じゃあ、あいつらの所に行って…。」
ジョージが耳打ちする。
イオリが仰け反り、快楽に身を委ねている。
陽射しがジリジリと二人を焦がす。
ソウイチロウはその光景に満足しつつも、イオリの深淵に踏み込む手段を苦慮してい
た。
そこに踏み込むには、ドアを開ける鍵が必要だ。
『イオリ本来の姿を見たい。
おいらが覚醒してやる。』
ソウイチロウはギャラリーが一人増えた事に気付く。
イオリと雰囲気の似た青年だった。
その青年と視線が絡み合う。
「いつまでそんな甘ったるい絡みをしているの?
もう飽きちゃったよ。
どうせなら、あの岩場に吊っちゃえば?」
青年が口を開く。
ソウイチロウは身体を起こし、青年の視線の先を見る。
岩場の先端が突き出し、波が打ち寄せていた。
確かにその先端は、吊すのに丁度良い。
(つづく)
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