47 / 147
Chapter5(楽園編)
Chapter5-⑤【evolution】
しおりを挟む
イオリは待ち合わせの駅へ向かう為、環状線に乗る。
夕方のラッシュ時でもないのに、電車は混み合っていた。
ドアのガラスに頬を寄せ、窮屈な状態で車窓を眺めた。
ヨウという本命がいながら、ジョージとソウイチロウの間を往ったり来たりしてい
る。
頭では一カ所に留まりたいと願うが、イオリの中で燻る焔がそれを許さない。
丸で迷宮の中を彷徨っている様だ。
景色が流れ、観覧車が見えた。
幼い頃、良く祖母がデパートの屋上の観覧車に乗せてくれた。
イオリは無性に乗りたくなった。
『ソウイチロウは一緒に乗ってくれるかな?』
高まる鼓動を感じながら、満員電車を降りる。
コウスケの書いてくれたメモを頼りに、地下街に入って行った。
地下街は放射状に伸びていて分かり難い。
何回来ても迷ってしまう。
メモには曲がり角の店が書いてあり、何とか待ち合わせの店に辿り着いた。
ウインドウ越しに中を覗いてみる。
ジャージに帽子を目深に被ったソウイチロウが、ビールを飲んでいた。
イオリはアナルが疼くのを感じた。
始めてアナルだけで射精した、あの日を思い出す。
ヨウに掘られていても、一度も気持ちいいとは思った事がない。
そんなイオリをソウイチロウの拳が変えた。
これは果たして進化なのだろうか?
「お待たせ。」イオリは背後から声を掛ける。
訝しいげにソウイチロウが振り返った。
「お前、どうしてここにいるんだ?」
ソウイチロウは目を見開き、驚きを表現する。
「ここに座っていい?」
イオリは正面の椅子を指差す。
「ああ、構わんが、直ぐに連れが来るぞ。」
零れそうな瞳がイオリを見上げて言う。
「コウスケは来ないよ。」
イオリは経緯を説明した。
「どうも変だと思ったぜ。
こんな場所で飲んだ事ないからな。」
ソウイチロウが愉快そうに笑う。
「だったらたっぷり飲もうぜ。
何にする?」小振りな拳がメニューを差し出す。
『この手だ。』何度も夢に見た手を凝視する。
イオリが注文したシャンディガフが届く。
「よし、乾杯だ!」
ソウイチロウがジョッキを高々と持ち上げた。
イオリはそれにグラスを重ねる。
ソウイチロウが一気に飲み干す。
「暑いな。身体が火照るぜ。」
ソウイチロウはジャージを脱ぎ、タンクトップ姿になる。
張り裂けそうな筋肉に、小さ過ぎるタンクトップが眩しい。
イオリは視線を逸らし、口を開く。
「プールで迷惑掛けちゃったみたいで…、ゴメン。」
イオリはグラスの中の泡を見詰める。
「気にすんな。どうせシーズンは終わりだ。
それより、もう少し相手を選べ。」
ソウイチロウが軽く睨む。
イオリは言い訳しようとしたが、結果的には同じだと思い直し止めた。
「イオリはどんな奴がタイプなんだ?」
ソウイチロウは新しいビールを飲み干し、三杯目を注文する。
「…。」タイプなんて、考えた事もなかった。
ヨウ、ジョージ、ゴウ、年齢もルックスも性格もバラバラだ。
ガタイが良いのが、唯一の共通点だった。
「ソウイチロウは?」
答が見出だせないイオリは、同じ質問をしてみる。
「おいらはな、生意気な奴が好きだ。
正確に言うと、生意気な奴をこいつで征服するのが好きだ。」
ソウイチロウはイオリの目の前で手首を回して見せた。
「お前さ、勉強出来ただろ?」
ソウイチロウが唐突に聞く。
「うん、まあ…。」
イオリは曖昧に答える。
「俺のクラスにもイオリみたいなのがいた。
俺達が騒いでいると、小馬鹿にした視線で見やがるんだ。
まあ、コンプレックスかな。
今でも賢そうな奴を見ると、こいつが反応すんだ。」
ソウイチロウは股間を指した。
イオリは違うと思った。
そいつは馬鹿になんかしてない。
そういう表情しか出来ないんだ。
イオリもヨウと出逢うまで、そうだった様に。
(つづく)
夕方のラッシュ時でもないのに、電車は混み合っていた。
ドアのガラスに頬を寄せ、窮屈な状態で車窓を眺めた。
ヨウという本命がいながら、ジョージとソウイチロウの間を往ったり来たりしてい
る。
頭では一カ所に留まりたいと願うが、イオリの中で燻る焔がそれを許さない。
丸で迷宮の中を彷徨っている様だ。
景色が流れ、観覧車が見えた。
幼い頃、良く祖母がデパートの屋上の観覧車に乗せてくれた。
イオリは無性に乗りたくなった。
『ソウイチロウは一緒に乗ってくれるかな?』
高まる鼓動を感じながら、満員電車を降りる。
コウスケの書いてくれたメモを頼りに、地下街に入って行った。
地下街は放射状に伸びていて分かり難い。
何回来ても迷ってしまう。
メモには曲がり角の店が書いてあり、何とか待ち合わせの店に辿り着いた。
ウインドウ越しに中を覗いてみる。
ジャージに帽子を目深に被ったソウイチロウが、ビールを飲んでいた。
イオリはアナルが疼くのを感じた。
始めてアナルだけで射精した、あの日を思い出す。
ヨウに掘られていても、一度も気持ちいいとは思った事がない。
そんなイオリをソウイチロウの拳が変えた。
これは果たして進化なのだろうか?
「お待たせ。」イオリは背後から声を掛ける。
訝しいげにソウイチロウが振り返った。
「お前、どうしてここにいるんだ?」
ソウイチロウは目を見開き、驚きを表現する。
「ここに座っていい?」
イオリは正面の椅子を指差す。
「ああ、構わんが、直ぐに連れが来るぞ。」
零れそうな瞳がイオリを見上げて言う。
「コウスケは来ないよ。」
イオリは経緯を説明した。
「どうも変だと思ったぜ。
こんな場所で飲んだ事ないからな。」
ソウイチロウが愉快そうに笑う。
「だったらたっぷり飲もうぜ。
何にする?」小振りな拳がメニューを差し出す。
『この手だ。』何度も夢に見た手を凝視する。
イオリが注文したシャンディガフが届く。
「よし、乾杯だ!」
ソウイチロウがジョッキを高々と持ち上げた。
イオリはそれにグラスを重ねる。
ソウイチロウが一気に飲み干す。
「暑いな。身体が火照るぜ。」
ソウイチロウはジャージを脱ぎ、タンクトップ姿になる。
張り裂けそうな筋肉に、小さ過ぎるタンクトップが眩しい。
イオリは視線を逸らし、口を開く。
「プールで迷惑掛けちゃったみたいで…、ゴメン。」
イオリはグラスの中の泡を見詰める。
「気にすんな。どうせシーズンは終わりだ。
それより、もう少し相手を選べ。」
ソウイチロウが軽く睨む。
イオリは言い訳しようとしたが、結果的には同じだと思い直し止めた。
「イオリはどんな奴がタイプなんだ?」
ソウイチロウは新しいビールを飲み干し、三杯目を注文する。
「…。」タイプなんて、考えた事もなかった。
ヨウ、ジョージ、ゴウ、年齢もルックスも性格もバラバラだ。
ガタイが良いのが、唯一の共通点だった。
「ソウイチロウは?」
答が見出だせないイオリは、同じ質問をしてみる。
「おいらはな、生意気な奴が好きだ。
正確に言うと、生意気な奴をこいつで征服するのが好きだ。」
ソウイチロウはイオリの目の前で手首を回して見せた。
「お前さ、勉強出来ただろ?」
ソウイチロウが唐突に聞く。
「うん、まあ…。」
イオリは曖昧に答える。
「俺のクラスにもイオリみたいなのがいた。
俺達が騒いでいると、小馬鹿にした視線で見やがるんだ。
まあ、コンプレックスかな。
今でも賢そうな奴を見ると、こいつが反応すんだ。」
ソウイチロウは股間を指した。
イオリは違うと思った。
そいつは馬鹿になんかしてない。
そういう表情しか出来ないんだ。
イオリもヨウと出逢うまで、そうだった様に。
(つづく)
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説







ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる