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Chapter3(臥籠編)
Chapter3-⑤【if】
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「いや、こちらこそすみません。
喉がカラカラで、焦ってたもんで。」
イオリは頭を下げた時に、自分の股間をチェックする。
ロングスパッツに自慢の巨根が横たわっていた。
先端の突起がピアスである事に、この男なら気付く筈だ。
アルバイトの女の子が代わりのアイスコーヒーを持って来た。
「スマンが、この兄さんにもアイスコーヒーを出してくれ。」
男が低い声で言うと、代金をカウンターに置く。
「代金は自分で払います。」
イオリは慌てて、財布を出す。
「迷惑掛けたんだ。
これくらいさせてくれ。」
男がアイスコーヒーを差し出した。
「すいません。では戴きます。
少しご一緒していいですか?」
カップを受け取り、聞いてみる。
「ああ、構わん。
俺は煙草を吸うが、大丈夫か?」
男は奥の喫煙室へ進む。
「ええ、平気です。」
イオリは後を追う。
「君は随分、立派な一物を持っているな?」
煙草に火を点けると、煙りを旨そうに吐き出す。
「飛行機の中は吸えんからイライラする。
この一服が旨いんだ。」
笑った顔は意外とチャーミングだ。
厳つい顔立ちが破顔するのを見て、男の印象が少し変わった。
冷酷無比なSを想像していたが、そうでもないかもしれない。
「旅行ですか?」
巨根の件には答えず、違う質問をしてみた。
「ああ、沖縄からだ。」
煙りが目に入ったのか、男は顔を顰める。
「ピアスは何ゲージを入れているんだ?」
煙草を揉み消すと、真っ直ぐイオリを見た。
「4Gです。」イオリはその視線を見返す。
「君はSか?」男は二本目の煙草に火を点けた。
「イオリといいます。
駆け出しのSです。」
イオリは卑下して答える。
「俺はゴウだ。
イオリ君は何故、態とぶつかってきたんだ?」
ゴウがニヤリと笑う。
『見破られていたか…。』
イオリは失態を悔やむ。
「ゴウさんみたいなハードなSになりたくて…。
見掛けた瞬間、どうしても話をしたくて…。
すいません。」
イオリは咄嗟に次の嘘を付く。
「別にいいさ。
こんなハードゲイスタイルが好きなんて、奇特な奴だ。
まあ、その格好で街を歩いているくらいだから、見込はあるがな。」
ゴウは声をあげて笑った。
「ゴウさんは飼い犬がいるんですか?」
早速、本題に入る。
「まあな。」ゴウは短く答えた。
「調教している所を見せてくれませんか?
お願いします!」
神妙に頭を下げる。
「それが目的か。
まあ、いいだろう。」
ゴウは煙りを吐き出すと頷いた。
『この男に嘘はダメだ。
正面から突破するしかない。』
イオリは作戦を変更する。
「実はジョージさんのジムに通ってるんです。
それで、今日の午前中に…。」
イオリはジョージの部屋に行った経緯を説明した。
「どうしてもケージの中のジョージさんを見たいんです!」
テーブルに額が付く程、頭を下げる。
「そうか。そんなに興味があるのか。
俺にもそんな時代があったな。」
ゴウが懐かしげに微笑んだ。
「あのケージが頭から離れません。」
イオリは更に訴える。
「分かった。だったら明日の夕方4時に家へ来い。
いいものを見せてやる。」
ゴウは急に立ち上がると、出て行った。
「イオリ、ケーキ買って来たぞ!」
ヨウが箱をテーブルに置く。
越して来てから、ヨウは毎日何かしら土産を買って来てくれた。
「ヨウ、毎日無駄遣いしなくていいよ。
気持ちだけで充分。」
イオリはヨウを諭す。
「でもよ、俺はイオリの欲望に応えられないから、これくらいしたいんだ。」
ヨウはネクタイを解きながら言う。
「…。」イオリは言葉が出ない。
「もしさ、本当にもしもの話なんだけど…。」
勿体振った前置きが、仮定でない事を意味していた。
「もしも、イオリの性欲が爆発しそうな時は、他の男としてきていいぜ。」
ヨウはクローゼットに向かっているので、表情は分からない。
「そ、そんな事しないよ!」
イオリは動揺を隠す。
「だから、もしもの場合だよ。
でもその時は、気持ちは入れるな。
ハートは俺だけを見てて欲しいんだ。
じゃ、シャワー浴びて来る。」
ヨウは背中を見せたまま、浴室に向かった。
(つづく)
喉がカラカラで、焦ってたもんで。」
イオリは頭を下げた時に、自分の股間をチェックする。
ロングスパッツに自慢の巨根が横たわっていた。
先端の突起がピアスである事に、この男なら気付く筈だ。
アルバイトの女の子が代わりのアイスコーヒーを持って来た。
「スマンが、この兄さんにもアイスコーヒーを出してくれ。」
男が低い声で言うと、代金をカウンターに置く。
「代金は自分で払います。」
イオリは慌てて、財布を出す。
「迷惑掛けたんだ。
これくらいさせてくれ。」
男がアイスコーヒーを差し出した。
「すいません。では戴きます。
少しご一緒していいですか?」
カップを受け取り、聞いてみる。
「ああ、構わん。
俺は煙草を吸うが、大丈夫か?」
男は奥の喫煙室へ進む。
「ええ、平気です。」
イオリは後を追う。
「君は随分、立派な一物を持っているな?」
煙草に火を点けると、煙りを旨そうに吐き出す。
「飛行機の中は吸えんからイライラする。
この一服が旨いんだ。」
笑った顔は意外とチャーミングだ。
厳つい顔立ちが破顔するのを見て、男の印象が少し変わった。
冷酷無比なSを想像していたが、そうでもないかもしれない。
「旅行ですか?」
巨根の件には答えず、違う質問をしてみた。
「ああ、沖縄からだ。」
煙りが目に入ったのか、男は顔を顰める。
「ピアスは何ゲージを入れているんだ?」
煙草を揉み消すと、真っ直ぐイオリを見た。
「4Gです。」イオリはその視線を見返す。
「君はSか?」男は二本目の煙草に火を点けた。
「イオリといいます。
駆け出しのSです。」
イオリは卑下して答える。
「俺はゴウだ。
イオリ君は何故、態とぶつかってきたんだ?」
ゴウがニヤリと笑う。
『見破られていたか…。』
イオリは失態を悔やむ。
「ゴウさんみたいなハードなSになりたくて…。
見掛けた瞬間、どうしても話をしたくて…。
すいません。」
イオリは咄嗟に次の嘘を付く。
「別にいいさ。
こんなハードゲイスタイルが好きなんて、奇特な奴だ。
まあ、その格好で街を歩いているくらいだから、見込はあるがな。」
ゴウは声をあげて笑った。
「ゴウさんは飼い犬がいるんですか?」
早速、本題に入る。
「まあな。」ゴウは短く答えた。
「調教している所を見せてくれませんか?
お願いします!」
神妙に頭を下げる。
「それが目的か。
まあ、いいだろう。」
ゴウは煙りを吐き出すと頷いた。
『この男に嘘はダメだ。
正面から突破するしかない。』
イオリは作戦を変更する。
「実はジョージさんのジムに通ってるんです。
それで、今日の午前中に…。」
イオリはジョージの部屋に行った経緯を説明した。
「どうしてもケージの中のジョージさんを見たいんです!」
テーブルに額が付く程、頭を下げる。
「そうか。そんなに興味があるのか。
俺にもそんな時代があったな。」
ゴウが懐かしげに微笑んだ。
「あのケージが頭から離れません。」
イオリは更に訴える。
「分かった。だったら明日の夕方4時に家へ来い。
いいものを見せてやる。」
ゴウは急に立ち上がると、出て行った。
「イオリ、ケーキ買って来たぞ!」
ヨウが箱をテーブルに置く。
越して来てから、ヨウは毎日何かしら土産を買って来てくれた。
「ヨウ、毎日無駄遣いしなくていいよ。
気持ちだけで充分。」
イオリはヨウを諭す。
「でもよ、俺はイオリの欲望に応えられないから、これくらいしたいんだ。」
ヨウはネクタイを解きながら言う。
「…。」イオリは言葉が出ない。
「もしさ、本当にもしもの話なんだけど…。」
勿体振った前置きが、仮定でない事を意味していた。
「もしも、イオリの性欲が爆発しそうな時は、他の男としてきていいぜ。」
ヨウはクローゼットに向かっているので、表情は分からない。
「そ、そんな事しないよ!」
イオリは動揺を隠す。
「だから、もしもの場合だよ。
でもその時は、気持ちは入れるな。
ハートは俺だけを見てて欲しいんだ。
じゃ、シャワー浴びて来る。」
ヨウは背中を見せたまま、浴室に向かった。
(つづく)
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