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Chapter2(惜春編)
Chapter2-⑤【空が泣くから】
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「ただいま!」
土曜日の夕方、ヨウが帰ってきた。
「おかえり。研修はどうだった?」
イオリはワープロに目を向けたまま聞く。
「毎日朝から晩まで勉強漬けで、参ったよ。
これ土産だ。」
ヨウはテーブルに袋を置くと、ネクタイを緩めた。
「身体がすっかり鈍っちまった。
ジム行かないか?」
走る真似をすると、大胸筋が揺れる。
トレーニングの成果が確実に表れていた。
椅子を回し、タンクトップ姿を眺める。
久し振りに見るヨウは眩しかった。
「その前に一発抜かないか?」
ヨウが悪戯っ子の様に笑う。
イオリは朝方までいたスバルで性欲は満たされていた。
しかし精神がヨウを欲している。
イオリは立ち上がり、ヨウにキスをした。
そしてベッドに誘う。
スパッツ越しに、勃起したペニスへ唇を寄せる。
雄の刺激臭が鼻を突く。
「やっぱリング外しておいて良かったぜ。
皆で風呂入る時に、毛がないから緊張したけどよ。」
明るく笑う顔は体育会系そのものだ。
ヨウはスパッツを脱ぐと、自ら脚を抱える。
一週間、剃毛してないので、陰毛が疎らに生えていた。
熱り立つペニスを見て、もう少し拡張出来ないかと思い立つ。
普段使用している12センチのディルドではなく、18センチを宛がってみる。
「いっ、痛えよ!
いつものハリガタで頼むぜ。」
ヨウが苦情を言う。
「ゴメン…。」イオリは素直に謝る。
12センチのディルドはいとも簡単に挿入出来た。
これなら少し我慢すれば、18センチの挿入は可能だろう。
物足りなさを感じながら、Gスポットに刺激を与える。
「おうっ、おうっ!」
ヨウはあくまでもスポーツ感覚だ。
最初にトレーニングの為と、説明した事を後悔する。
「スッキリしたぜ!
これでトレーニングに集中出来るぞ。
さあ、出掛けようぜ。」
ヨウはスパッツを穿くと、リュックを背負う。
その姿を見て、イオリは初めて違和感を覚えた。
空は相変わらずどんよりとしている。
ヨウは道すがら、研修での出来事を身振り手振りを交えて話した。
イオリはそれを適当な相槌で聞き流す。
ジムが見えた所で、雨粒が頬に当たった。
「ヤバい!傘を忘れた。
ちょっと取って来るよ。」
イオリは歩みを止める。
「傘なんて、どうでもいいじゃん。
もうジムに入るんだし。」
ヨウは不可解な表情を浮かべる。
「でも気になるから、取ってくるよ。
先にやってて。」
イオリはそう言うと、引き返した。
こんな傘ひとつでも、考え方が違う。
今まで気付かなかったヨウとの性格の違いが、一気に露呈した。
半分程戻った所で、雨は本降りになる。
『空が泣くから、ヨウへの想いが流れていきそうだ。』
びしょ濡れのイオリは雨空を見上げた。
その晩、イオリは熱を出した。
トレーニング中から怠さを感じていたので、ヨウは自分のアパートに戻っている。
『どうも風邪みたい。
移ると困るから、治るまで家には来ないで。』
翌朝、イオリはヨウにメールを出す。
返事が来たのは陽が沈んでからだった。
『了解。無茶するなよ。』
短い文章だった。
引っ越しの際、体温計を持って来たか、覚えてない。
ただ高熱に堪えるしかなかった。
翌日、呼び鈴の音で目を覚ます。
誰かがドアを忙しなくノックしていた。
ヨウかと思い、よろけながら玄関へ向かう。
ドアを開けると、スバルが立っていた。
「大丈夫か?さっきヨウ君がトレーニングに来て、イオリが風邪引いてると聞いたか
ら。」
武骨な掌が額に当たる。
「凄い熱じゃねえか!」
イオリは抱き上げられ、ベッドに運ばれた。
「ちょっと待ってろ!
熱冷ましを買って来る。」
スバルが額にキスをする。
「ありがとう。」
礼を言い終った時には、既に姿はなかった。
(つづく)
土曜日の夕方、ヨウが帰ってきた。
「おかえり。研修はどうだった?」
イオリはワープロに目を向けたまま聞く。
「毎日朝から晩まで勉強漬けで、参ったよ。
これ土産だ。」
ヨウはテーブルに袋を置くと、ネクタイを緩めた。
「身体がすっかり鈍っちまった。
ジム行かないか?」
走る真似をすると、大胸筋が揺れる。
トレーニングの成果が確実に表れていた。
椅子を回し、タンクトップ姿を眺める。
久し振りに見るヨウは眩しかった。
「その前に一発抜かないか?」
ヨウが悪戯っ子の様に笑う。
イオリは朝方までいたスバルで性欲は満たされていた。
しかし精神がヨウを欲している。
イオリは立ち上がり、ヨウにキスをした。
そしてベッドに誘う。
スパッツ越しに、勃起したペニスへ唇を寄せる。
雄の刺激臭が鼻を突く。
「やっぱリング外しておいて良かったぜ。
皆で風呂入る時に、毛がないから緊張したけどよ。」
明るく笑う顔は体育会系そのものだ。
ヨウはスパッツを脱ぐと、自ら脚を抱える。
一週間、剃毛してないので、陰毛が疎らに生えていた。
熱り立つペニスを見て、もう少し拡張出来ないかと思い立つ。
普段使用している12センチのディルドではなく、18センチを宛がってみる。
「いっ、痛えよ!
いつものハリガタで頼むぜ。」
ヨウが苦情を言う。
「ゴメン…。」イオリは素直に謝る。
12センチのディルドはいとも簡単に挿入出来た。
これなら少し我慢すれば、18センチの挿入は可能だろう。
物足りなさを感じながら、Gスポットに刺激を与える。
「おうっ、おうっ!」
ヨウはあくまでもスポーツ感覚だ。
最初にトレーニングの為と、説明した事を後悔する。
「スッキリしたぜ!
これでトレーニングに集中出来るぞ。
さあ、出掛けようぜ。」
ヨウはスパッツを穿くと、リュックを背負う。
その姿を見て、イオリは初めて違和感を覚えた。
空は相変わらずどんよりとしている。
ヨウは道すがら、研修での出来事を身振り手振りを交えて話した。
イオリはそれを適当な相槌で聞き流す。
ジムが見えた所で、雨粒が頬に当たった。
「ヤバい!傘を忘れた。
ちょっと取って来るよ。」
イオリは歩みを止める。
「傘なんて、どうでもいいじゃん。
もうジムに入るんだし。」
ヨウは不可解な表情を浮かべる。
「でも気になるから、取ってくるよ。
先にやってて。」
イオリはそう言うと、引き返した。
こんな傘ひとつでも、考え方が違う。
今まで気付かなかったヨウとの性格の違いが、一気に露呈した。
半分程戻った所で、雨は本降りになる。
『空が泣くから、ヨウへの想いが流れていきそうだ。』
びしょ濡れのイオリは雨空を見上げた。
その晩、イオリは熱を出した。
トレーニング中から怠さを感じていたので、ヨウは自分のアパートに戻っている。
『どうも風邪みたい。
移ると困るから、治るまで家には来ないで。』
翌朝、イオリはヨウにメールを出す。
返事が来たのは陽が沈んでからだった。
『了解。無茶するなよ。』
短い文章だった。
引っ越しの際、体温計を持って来たか、覚えてない。
ただ高熱に堪えるしかなかった。
翌日、呼び鈴の音で目を覚ます。
誰かがドアを忙しなくノックしていた。
ヨウかと思い、よろけながら玄関へ向かう。
ドアを開けると、スバルが立っていた。
「大丈夫か?さっきヨウ君がトレーニングに来て、イオリが風邪引いてると聞いたか
ら。」
武骨な掌が額に当たる。
「凄い熱じゃねえか!」
イオリは抱き上げられ、ベッドに運ばれた。
「ちょっと待ってろ!
熱冷ましを買って来る。」
スバルが額にキスをする。
「ありがとう。」
礼を言い終った時には、既に姿はなかった。
(つづく)
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