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Chapter1(イオリとヨウ編)
Chapter1-⑤【キセキ】
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イオリにとって、ヨウとの出会いは正に奇跡だ。
あの日、便所を振り返らなければ、不動産の看板は目に入らなかった。
二人の距離は瞬く間に縮まった。
毎日の様に、ヨウは仕事帰りにイオリのアパートを訪れる。
「おっす!」合い鍵を使い、ヨウが入って来た。
「あれ、今日は早いね?」
イオリはワープロを閉じ、椅子に座ったまま振り返る。
「ああ、研修は昨日で終わりだ。
後は来月の試験に受かれば、晴れて自由の身だ!
イオリの脳みその半分でもあれば、試験なんて楽勝なのになぁ。」
ヨウが恨めしげな表情で睨む。
「資格試験は新規問題はほぼ出ないさ。
過去問だけ解ければ、いいんだよ。
もし法規が変われば、逆にそこから出題される。
簡単だと思うんだけどな。」
悩む理由が今ひとつ理解が出来ない。
「頭のいい奴の言う事は、やっぱ違うよな。」
ヨウはジャケットをハンガーに掛けながら、ボソッと言った。
「それよかよ、折角早く帰れたんだ。
これからジムへ行かないか?」
ヨウが座ったままのイオリの唇を覆う。
翻訳の仕事は順調に進んでいる。
今日も9時から始めて、この時間まで没頭していた。
「いいよ。それに腹も空いたし。
途中で、何か食べて行こうよ。」
昼飯を食べていない事を思い出す。
「俺も腹ぺこだ。ちょいトイレ借りるぜ。」
ヨウがトイレに向かう。
ドアの閉まった音を聞くと、椅子から降りる。
置きっ放しの鞄の中を覗く。
Tシャツやスパッツ、ランパンが入っている。
そこからランパンを抜き取り、元に戻した。
「ヤベー!ランパン忘れた!」
ロッカールームで、スパッツ姿のヨウが大声を出す。
「スパッツを穿いているんだから、それでいいじゃん。」
イオリは振り向きもせず、自分の着替えをする。
「でもよ、これ見て見ろよ。」
真っ赤な顔をしたヨウが、股間を指す。
白いスパッツに、くっきりとペニスの形が露わになっていた。
「別に普通じゃん。
そんな事、気にする必要ないよ。」
必死に笑いを堪える。
「そうかな?」納得のいかないヨウは首を捻った。
「それにその方が、イオリは好きだよ。
さあ、行こう!」
訝しいげなヨウの手を引っ張ると、ジムエリアに向かった。
「本日、担当するマエダスバルです。」
真っ黒に焼けたビルダーが愛想よく挨拶した。
年は若干上の20代半ばだろう。
スタッフ用のポロシャツの下は、ヒョウ柄のスパッツを穿いている。
ヨウの視線がそこから離れない。
『ヨウって、絶対スポユニフェチだ。
様々なエロウェア着せて、辱めてやろう。』
イオリは資料に目を通す振りをして、別の事を考えていた。
「お客様方はトレーニングの経験はありますか?」
スバルがマニュアル通りの質問する。
「俺は学生時代、サッカーの合間にしてました。」
股間にタオルを置いて答えた。
「イオリは以前ここに通っていたので、マシンの使い方位は分かるよ。
今回はフリーウェイトに挑戦してみたくて。」
入会の目標を口にする。
「分かりました。
それではプログラムを作成しましょう。
週に何回位、来られますか?」
スバルが二人を交互に見て聞く。
イオリとヨウは互いに顔を見合わせた。
「とりあえず三日くらいかな。」
イオリが答える。
「では、週三日のプログラムを組みましょう。
今日は胸と腕のトレーニングを行ってみましょう。
早速、ベンチプレスをやってみますか。
こちらへどうぞ。」
スバルは立ち上がると、フリーウェイトエリアに歩き出す。
「それでは手本をお見せします。」
スバルはベンチに横たわると、バーの持ち方や姿勢を説明する。
捲れ上がったポロシャツから、ヒョウ柄のスパッツが露わになった。
薄手の生地に大きな陰影が浮かんだ。
(つづく)
あの日、便所を振り返らなければ、不動産の看板は目に入らなかった。
二人の距離は瞬く間に縮まった。
毎日の様に、ヨウは仕事帰りにイオリのアパートを訪れる。
「おっす!」合い鍵を使い、ヨウが入って来た。
「あれ、今日は早いね?」
イオリはワープロを閉じ、椅子に座ったまま振り返る。
「ああ、研修は昨日で終わりだ。
後は来月の試験に受かれば、晴れて自由の身だ!
イオリの脳みその半分でもあれば、試験なんて楽勝なのになぁ。」
ヨウが恨めしげな表情で睨む。
「資格試験は新規問題はほぼ出ないさ。
過去問だけ解ければ、いいんだよ。
もし法規が変われば、逆にそこから出題される。
簡単だと思うんだけどな。」
悩む理由が今ひとつ理解が出来ない。
「頭のいい奴の言う事は、やっぱ違うよな。」
ヨウはジャケットをハンガーに掛けながら、ボソッと言った。
「それよかよ、折角早く帰れたんだ。
これからジムへ行かないか?」
ヨウが座ったままのイオリの唇を覆う。
翻訳の仕事は順調に進んでいる。
今日も9時から始めて、この時間まで没頭していた。
「いいよ。それに腹も空いたし。
途中で、何か食べて行こうよ。」
昼飯を食べていない事を思い出す。
「俺も腹ぺこだ。ちょいトイレ借りるぜ。」
ヨウがトイレに向かう。
ドアの閉まった音を聞くと、椅子から降りる。
置きっ放しの鞄の中を覗く。
Tシャツやスパッツ、ランパンが入っている。
そこからランパンを抜き取り、元に戻した。
「ヤベー!ランパン忘れた!」
ロッカールームで、スパッツ姿のヨウが大声を出す。
「スパッツを穿いているんだから、それでいいじゃん。」
イオリは振り向きもせず、自分の着替えをする。
「でもよ、これ見て見ろよ。」
真っ赤な顔をしたヨウが、股間を指す。
白いスパッツに、くっきりとペニスの形が露わになっていた。
「別に普通じゃん。
そんな事、気にする必要ないよ。」
必死に笑いを堪える。
「そうかな?」納得のいかないヨウは首を捻った。
「それにその方が、イオリは好きだよ。
さあ、行こう!」
訝しいげなヨウの手を引っ張ると、ジムエリアに向かった。
「本日、担当するマエダスバルです。」
真っ黒に焼けたビルダーが愛想よく挨拶した。
年は若干上の20代半ばだろう。
スタッフ用のポロシャツの下は、ヒョウ柄のスパッツを穿いている。
ヨウの視線がそこから離れない。
『ヨウって、絶対スポユニフェチだ。
様々なエロウェア着せて、辱めてやろう。』
イオリは資料に目を通す振りをして、別の事を考えていた。
「お客様方はトレーニングの経験はありますか?」
スバルがマニュアル通りの質問する。
「俺は学生時代、サッカーの合間にしてました。」
股間にタオルを置いて答えた。
「イオリは以前ここに通っていたので、マシンの使い方位は分かるよ。
今回はフリーウェイトに挑戦してみたくて。」
入会の目標を口にする。
「分かりました。
それではプログラムを作成しましょう。
週に何回位、来られますか?」
スバルが二人を交互に見て聞く。
イオリとヨウは互いに顔を見合わせた。
「とりあえず三日くらいかな。」
イオリが答える。
「では、週三日のプログラムを組みましょう。
今日は胸と腕のトレーニングを行ってみましょう。
早速、ベンチプレスをやってみますか。
こちらへどうぞ。」
スバルは立ち上がると、フリーウェイトエリアに歩き出す。
「それでは手本をお見せします。」
スバルはベンチに横たわると、バーの持ち方や姿勢を説明する。
捲れ上がったポロシャツから、ヒョウ柄のスパッツが露わになった。
薄手の生地に大きな陰影が浮かんだ。
(つづく)
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