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Chapter1(イオリとヨウ編)
Chapter1-②【さくら】
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営業マンが窓を開け、空気を入れ換えた。
満開の桜が見える。
三月の末に季節外れの大雪が降った。
その為蕾のままだった桜が、最近の暖かさで一気に花開く。
「洗面台はシャワーからお湯が出て、便利です。
リフォームしたてでこのお値段ですので、大変お得だと思います。」
営業マンは身振り手振りで、この部屋を褒め讃える。
4月だというのに20度を超え、汗ばむ陽気だ。
営業マンが頻りに汗を拭う。
かなりの汗拭きの様だ。
「どうでしょうか?」
一通り説明を終えた営業マンが聞いてくる。
気持ちは既に決まっていたが、この好青年を困らせたい衝動に駆られた。
ひとひらの花弁が床の上に落ちている。
「設備は気に入ったんだけど、フローリングがくすんでいる気がするんだよな。
本当にリフォームしたてですか?」
腕を組み、首を傾ける。
「ちょ、ちょっと待って下さい。」
営業マンが部屋を飛び出していく。
直ぐに戻って来ると、手に雑巾を持っていた。
「少し埃っぽいだけです。
水拭きすれば、元の輝きが戻ります。」
営業マンは上着を脱ぐと、腕まくりをした。
体育会系らしく、肩の筋肉の盛り上がりがYシャツの上からも分かる。
四つん這いになり、雑巾拭きを始めた。
イオリはその行動をニヤニヤしながら見守る。
同い年くらいの営業マンの一生懸命さが、可笑しくも羨ましい。
細身のパンツが尻にピッタリ張り付いていた。
『あれっ?』イオリはその尻に違和感を覚える。
二本のラインが浮き出ていた。
『これって、ケツワレじゃん!』
イオリはワクワクしてきた。
この好青年が羞恥に困惑する姿を想像する。
下半身が熱くなるのを感じた。
表に出て、自販機でコーヒーを二本買う。
部屋に戻ると、丁度拭き終わる所だった。
営業マンの目の前に立ち、コーヒーを差し出す。
見上げる瞳が見開く。
視線がコーヒー越しの巨根に、釘付けなのが分かった。
「コーヒーは嫌いですか?」
「あっ、いや…、好きです。
ありがとうございます。
ただ無糖の方が…。」
営業マンは立ち上がると、コーヒーを受け取った。
直にYシャツを着ているため、汗で地肌が透けている。
発達した大胸筋に、小振りの乳首が艶めかしい。
コーヒーを飲み込む時の喉仏の動きに、ゾクッとした。
「ご馳走様です。」
はにかんだ笑顔が礼を言う。
『ゲイに間違いない!』
イオリは確信した。
タイトなパンツの股間が、盛り上がっていたからだ。
「見違える程、ピカピカだ。
だったらここにしようかな。」
窓から見える桜が背中を押した。
「ほ、本当ですか!
実はこれが初契約なんです!」
営業マンがイオリの手をがっちりと握る。
その笑顔が羞恥に変わるのを想像した。
「失礼ですが、学生さんですか?」
営業所に戻ると、営業マンが聞いてきた。
「いや、自営業です。」
適当な答えでごまかす。
「お若く見えたので、すみません。
それであれば、問題はありません。」
営業マンは汗を拭きながら、資料を用意する。
「マジっ!俺…、いや、私と同じ学年です。」
イオリの生年月日を見て、営業マンが驚きの声をあげた。
「へぇ、そうなんだ。
だったら今度飲まない?
この辺りに知り合いいないんで、心細いんだ。」
人懐っこい笑顔が気持ちを解す。
「マジっすか?
俺もここに配属になったばかりで、飲み友達もいなかったんで嬉しいっす。
内緒で引っ越しも手伝いますよ。」
営業マンは左右を見回し、小声で言った。
「ヨウ君って言うんだ?」
名刺を見て聞く。
「太平洋のヨウ。
ヨウでいいっすよ。」
初々しい笑顔が眩しい。。
「だったらヨウ…は、イオリって呼んでよ。」
顔が上げれず、書類に書き込みながら告げる。
初めて下の名前で人を呼んだ。
こうしてイオリの友達は意外と簡単に出来た。
(つづく)
満開の桜が見える。
三月の末に季節外れの大雪が降った。
その為蕾のままだった桜が、最近の暖かさで一気に花開く。
「洗面台はシャワーからお湯が出て、便利です。
リフォームしたてでこのお値段ですので、大変お得だと思います。」
営業マンは身振り手振りで、この部屋を褒め讃える。
4月だというのに20度を超え、汗ばむ陽気だ。
営業マンが頻りに汗を拭う。
かなりの汗拭きの様だ。
「どうでしょうか?」
一通り説明を終えた営業マンが聞いてくる。
気持ちは既に決まっていたが、この好青年を困らせたい衝動に駆られた。
ひとひらの花弁が床の上に落ちている。
「設備は気に入ったんだけど、フローリングがくすんでいる気がするんだよな。
本当にリフォームしたてですか?」
腕を組み、首を傾ける。
「ちょ、ちょっと待って下さい。」
営業マンが部屋を飛び出していく。
直ぐに戻って来ると、手に雑巾を持っていた。
「少し埃っぽいだけです。
水拭きすれば、元の輝きが戻ります。」
営業マンは上着を脱ぐと、腕まくりをした。
体育会系らしく、肩の筋肉の盛り上がりがYシャツの上からも分かる。
四つん這いになり、雑巾拭きを始めた。
イオリはその行動をニヤニヤしながら見守る。
同い年くらいの営業マンの一生懸命さが、可笑しくも羨ましい。
細身のパンツが尻にピッタリ張り付いていた。
『あれっ?』イオリはその尻に違和感を覚える。
二本のラインが浮き出ていた。
『これって、ケツワレじゃん!』
イオリはワクワクしてきた。
この好青年が羞恥に困惑する姿を想像する。
下半身が熱くなるのを感じた。
表に出て、自販機でコーヒーを二本買う。
部屋に戻ると、丁度拭き終わる所だった。
営業マンの目の前に立ち、コーヒーを差し出す。
見上げる瞳が見開く。
視線がコーヒー越しの巨根に、釘付けなのが分かった。
「コーヒーは嫌いですか?」
「あっ、いや…、好きです。
ありがとうございます。
ただ無糖の方が…。」
営業マンは立ち上がると、コーヒーを受け取った。
直にYシャツを着ているため、汗で地肌が透けている。
発達した大胸筋に、小振りの乳首が艶めかしい。
コーヒーを飲み込む時の喉仏の動きに、ゾクッとした。
「ご馳走様です。」
はにかんだ笑顔が礼を言う。
『ゲイに間違いない!』
イオリは確信した。
タイトなパンツの股間が、盛り上がっていたからだ。
「見違える程、ピカピカだ。
だったらここにしようかな。」
窓から見える桜が背中を押した。
「ほ、本当ですか!
実はこれが初契約なんです!」
営業マンがイオリの手をがっちりと握る。
その笑顔が羞恥に変わるのを想像した。
「失礼ですが、学生さんですか?」
営業所に戻ると、営業マンが聞いてきた。
「いや、自営業です。」
適当な答えでごまかす。
「お若く見えたので、すみません。
それであれば、問題はありません。」
営業マンは汗を拭きながら、資料を用意する。
「マジっ!俺…、いや、私と同じ学年です。」
イオリの生年月日を見て、営業マンが驚きの声をあげた。
「へぇ、そうなんだ。
だったら今度飲まない?
この辺りに知り合いいないんで、心細いんだ。」
人懐っこい笑顔が気持ちを解す。
「マジっすか?
俺もここに配属になったばかりで、飲み友達もいなかったんで嬉しいっす。
内緒で引っ越しも手伝いますよ。」
営業マンは左右を見回し、小声で言った。
「ヨウ君って言うんだ?」
名刺を見て聞く。
「太平洋のヨウ。
ヨウでいいっすよ。」
初々しい笑顔が眩しい。。
「だったらヨウ…は、イオリって呼んでよ。」
顔が上げれず、書類に書き込みながら告げる。
初めて下の名前で人を呼んだ。
こうしてイオリの友達は意外と簡単に出来た。
(つづく)
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