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4.本家からの再出発

203.記念撮影

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「ダブルピースして?」
「そうそう」
「じゃあ、ピース……っと」
 二人目の店員さんのひざに乗り、ボクの頭に店員さんが頭を乗せダブルピースして撮影さつえい。マキナのほほがぴくぴくしてる。

「こ、こう?」
「そうそう」
「じゃ、じゃあ、行きますよ! っと」
 三人目は、店員の胸に顔をうずめて撮影する。マキナの不機嫌に拍車はくしゃがかかる。

「ほっぺに?」
「そうそう」
「じゃあ、ります、よっと!」
 四人目には店員さんの頬にくちびるをよせキスする振りのポーズを取る。本当は、ほっぺにキスしてだったけど、最高潮のイラつきでマキナが爆発しそうで店員さんはトーンダウン、キスの振りになる。

「はいはい、皆さん仕事に戻って」
「「「は~い」」」
 名残なごりしそうな店員さんを笹さんが追い払う。

「キョウ、あとで話がある」
「ウッ……、分かった」
「何で見ず知らずの店員にあそこまでサービスするんです」
「そうですよ。私たちだって、そこまで……」
 気更来きさらぎ歩鳥ほとりの二人が文句をつける。

「だってさ~、マキナがお世話になるんだから無碍むげにはできないでしょう」
「さすがはキョウ様」
 打木さんが手放しでめてくれる。若干じゃっかんマキナの機嫌が直った気がする。

「それは、そうかも知れませんが……」
 気更来きさらぎさんはまだ納得できないみたい。

「お待たせしました! あなたたち、仕事に戻りなさい」
 いいところに責任者の人が返ってくる。

「は~い」
「分かってますって」
 まだ店員さん、残ってたんだ。

「さあさあ、こちらから選んでください」
 責任者の──牧村さんがパイプイスの上に買い物カゴを置く。

「うわ~、いっぱいあるね」
 中にはドロワーズとかがいっぱいれてある。ありったけ持って来てくれてる。

「試着なさいますか?」
「いえ、試着はいいです」
「そう……ですか……」
 牧村さんが気落ちする。そんなに落胆らくたんしなくても。

「これはいい。これはダメ……短パンとブルマは顰蹙ひんしゅくを買うかな~……」
 選んだら半分もない。四、五着あれば使い回しできるしね。

「これで精算、お願いします」
「そう、ですか……。不用な商品はそのままで結構です」
 だから、何で落胆するの? 誰だって差し出されたものをすべて穿くワケじゃないでしょう?

「一番近いレジを案内してください」
「こちらです」
「待て。私が買ってくる」
 牧村さんに付いて行こうとするのをマキナが止める。

「え~、悪いよ」
「気にするな」
 まあ、ボクが払っても財布は一緒なんだけど。売り場にボクが出ていくのはリスクが上がるからなんだろう。
 カゴを抱えてマキナが牧村さんのあとを付いていく。

「笹さん、メガネの使い方は慣れました?」
「まあ、ほどほどには」
「それより、私たちとも記念撮影しましょう」
「そうです。こんな機会なかなかないです」
「それって歩鳥ほとりさんと気更来きさらぎさんが思ってるだけだよね?」
 同意を求めて笹・打木さんの二人を見たら何か悩んでる。

「笹さんたちも撮りたいの?」
 同意の言葉を発しもうなずきもしないけど二人で顔を見合わせている……。

「分かった。今は、羽衣さんも斎木さいきさんも居ないから家に帰ってからね?」
「本当ですか?」
「やった~!」
 そんなに写真撮りたいの? 確かにマキナとの写真はボクも撮りたいけど。

「買ってきたぞ」
「うん、ありがとう」
「あの~……それで」
「写真ですね。いいですよ」
 マキナが買って来てくれ牧村さんがおずおず聞いてくる。用事が完了するのを待ってたんですから了承する。

「それでは──」
 おとなしめのポーズを牧村さんは注文した。抱き合って顔をよせるもの。またマキナが少し不機嫌に……あれ?


 約束の撮影を終わらせるとバックヤードを移動して職員用エレベーターで一階に下りる。

「お前は、まったく」
「さ、さあ早く帰ろ?」
 なかなか機嫌が直らないマキナをなだめる。というより意識をらす。

「笹さんもメガネのあつかいが上手くなったよね?」
「いや、まだまだだろう」
「そんなことないよね……気更来きさらぎさん」
「えっ?……はあ、そうです、ね?」
「ほら~」
「は~~、まあ、そういうことにしておくか」

 職員区画を通り抜け守衛室で入館証を返す。

「──またの来訪をお待ちしております」
「はい、また今度」
「では、また」

 わざわざ部屋から出てきた守衛さんと別れ駐車場のワゴン車へ。

「上手くなったと言うなら笹に運転してもらうか?」
「え、いや、それは……。帰りは運転するってマキナは言ったよね」
「冗談だ」
「むう~」

 みんな乗り込み職員駐車場から道路に出るといえへ向け走りだす。

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