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4.本家からの再出発

200.バイトのお誘い

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「うぐっ……もう食べられない……」
「ほとんど食べてるじゃないか」
「まあそうだけど……。マキナも食べられて良かったね?」
「まあな」

 味が物足りないとか言ってスダチやレモンを追加、リゾットやおかゆしぼりかけてマキナは食べてた。ともかく食べられて良かったよ。

「あのえずき﹅﹅﹅ってアレだよな」
「おそらく、アレだな」
「なに? アレって」
 こそこそ話す歩鳥ほとりさんと気更来きさらぎさんにく。

「あ~、いや、まだ話されないので私からは何とも」
「アレって言えばアレです。伝説上の」
「お前たち、マキナ様が認めないものを軽々しく話すんじゃない」
 気更来きさらぎ歩鳥ほとりの話を笹さんが止めてしまう。

「何なのさ~、アレってマキナに関係してるの?」
「マキナ様が話す機会までお待ちください」
「羽衣や斎木さいきなんかキョウ様相手なら✕✕チョメチョメできるって精漿せいしょう注射してたんですよ」
あの﹅﹅あとも✕✕チョメチョメしたって注射つづけてるんですよ。笑っちゃいますよ……ね」
 一気に話のトーンが落ちる。何だと思ったらマキナから声なき圧力がかかってた。

「何かマキナの話みたいだけど……」
「気にするな。お前は買い物リストでも考えてろ」
「はい……」
 何かマキナこわ。アレとか✕✕チョメチョメが何なのか聞けなくなったよ。


 コーヒーで食休みしているとスーツを着た年嵩としかさの女性がウエイトレスを連れテーブルにやって来る。

「マキナ様ですね。店長を務めます井原いはらと申します」
「あ~これはどうも。わざわざ恐縮きょうしゅくです」
 マキナがテーブルから外れて立ち上がり店長さんを迎える。ボクもあわててマキナにならいブースから出てマキナに並ぶ。

「モール勤めになられるとか」
「はい。近日、正式な場でご挨拶あいさつできるかと思います」
「それで……」店長さんはボクに視線を向ける。

「ん? あ~。これは夫のキョウです」
「はじめまして、キョウと申します。マキナがお世話になります」
「キョウ様、はじめまして。キョウ様もこちらでお勤めになるとか……。是非ともレストランをよろしくお願いいたします」

「いや、まだ正式に決まってませんが」
「キョウちゃ──キョウ様、一緒にウエイトレスやりましょ」
「キョウちゃ──様が来てくれたら楽しいです」
「いつから来れますか?」
「そんなこと言われても」
「お前たち、止さないか」って群がるウエイトレスたちを店長さんが止める。

「まだ、決定していませんので、何とも……。二、三日中に契約してからです」
「あ~そうそう」
 契約とかがまだだったよ。

「そう、ですか……」
「じゃ、じゃあ写真、一緒にりましょう」
「それいい! 撮りましょ撮りましょ」
「は、はあ~」
「おい、お前たち失礼だぞ」
 一応、店長の井原さんは止めてくれるけど。
 写っていいのかマキナをうかがう。しぶしぶマキナがうなずく。「それじゃあ」と了承する。

「やった~」
「「こっちこっち」」
「え、えっ? ちょっとぉ~」
 ウエイトレスのお姉さんたちに引っ張られて奥へ進む。スタッフルームのドアをくぐると休憩きゅうけい室と更衣室がある。
 その更衣室に連れ込まれる。いいのかな~?

「Mかな~Sかな~?」
「あの~一体なにを?」
 空きロッカーからラップされた衣装を取り出し見比べている。

「ウエイターの制服。あ~Mかな?」
 ウエイターの制服とやらのみごろを体に当てて吟味ぎんみしてる。

「あの、もしかしてソレに着替えろ、と?」
「そうそう。Sは……ちょ~っと小さい、か?」
 もう一人も別の制服を当ててくる。制服ってさ~エプロンドレスっていうか、メイド服なんですけど~?
 そんな恰好じゃお給仕きゅうじしかできない……ああ、お給仕で合ってるのか。

「ん~~むしろLを着てもらう?」
「面倒だから全部着てもらう?」
「「それいい!」」
 いや、よくないよ。

「じゃあ、まず無難なMで」
 ってMサイズだという制服メイド服を渡される。

「あの~出ていってもらえます?」
「一人で着替えられる?」
「着替えられますよ。それくらい」
「そう。じゃあ外にいるから手伝いが要るなら言って? 一人じゃ着られないんだけど……」
「何か聞捨てならない言葉が聴こえましたけど?」
「気にしない気にしない」
 気にするよ。

「さて……」
 パッケージから出してながめてみる。広げて前みごろ、後みごろを見て絶句。背中がぱっくり開いてるじゃん。それに前はエプロンで隠れるけど後ろはお尻が見えるくらい超~ミニじゃん。

 こんなの誰も着ないよ? なに考えてんのさ。
 だまされた……こんなの着るなら時給一万でも安いわ!
 苦悶くもんしてる間にドアからノックがする。

「どう? 着られそう?」
「着れません。ちょっとマキナを呼んできてもらえます?」
「え~~、ここはスタッフオンリーだから部外者は呼べません」
 何だ、その理屈りくつは。

「あの、マキナも社員になるんですけど?」
「残念。まだ正式に辞令じれいも出てないから社員じゃありませ~ん」
「そう言われるとボクもバイトじゃないんですけど?」
「バイトは準社員だし、今は採用試験みたいなものだから」
こいはおとなしく俎板まないたればいいんですよ」
「…………」
 ぐぬぬぬぬ~、だまされたばかりかめられていたとは。はなから着せられる運命だったのね。

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