【悲報】みんながボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~

ペロりねった

文字の大きさ
上 下
195 / 203
4.本家からの再出発

195.カエデ姉妹の見送り

しおりを挟む


 長いエスカレーターを折返し折返し、九十九折つづらおりに下っていく。

「こんなに深くて地下水は大丈夫かな~」
「むしろ地下水対策で深いと聞いた気がするな」
「そうなんだ。伊勢わんを越えるところはもっと深いのかな~?」
「深いな」
「ふう~、やっと底か~」
「こっちだ」

 やっとエスカレーターが終わる。ジオフロントの底に着いた気分だ。

 道中、マキナは相変わらず気のない返事ばかり。

「エレベーターがあればいいのに」
「あるが、個室はマズいだろう」
「……ああ」
 そうか、ボクを気遣きづかってエスカレーターを使ったのか。

「上《のぼ》り線は、あっちだな」
「うん」
 のぼりとくだりを示す矢印の銘板があり、左の指示に従って進むと今までと比べ小さく短い階段がある。
 階段を下りると上り線のプラットホームに着く。

 頭上の運行表示板には、先着・超特急エクストリーム、次着が特急スープラと表示されている。すぐに来るエクストリームは停車駅をしぼった超特急、スープラは各駅停車の特急列車らしい。

「ちょうど列車が来るな。しっかり勉強してこいよ」
「いや、もう卒業だから」
「編入手続き、早くしてね」
「そういう浮わついた気持ちがダメだと言ってる」
「わ、分かってるって」

「みんな、元気でね?」
「そんな、もうお別れみたいに言わないで……」
「きっと帰ってくるから~、キョウちゃん」
「あ~、はいはい」

「来たな」
 ヒューンという音が聞こえ、耳がつんとしてくる。
 マキナの言葉どおりエクストリームがプラットホームに姿を現す。先頭車両は青と黄色のストラップが入った銀色のロケットに見える。

「待っててね」
 そういいカエデさんが抱き着いてきてキスしてくる。

「あっ」
 感嘆したツバキちゃんも、おずおず抱き着いてきてカエデさんを押し退けキスしてくる。
 今さらなので二人を受け入れる。

 列車の入構にゅうこうする音で、周りから起こる〝おおおおお~っ〟という低いどよめきが、かき消される。

「おい、着いたぞ」
 一両三十メートルくらいの車両が八両は連結され目の前に停まっている。

「それじゃあ……」
「それじゃ、また」
「うん、待ってる」

「じゃあ、しっかりやれよ」
「うん」
「分かってるって」
 二人は小さく手を振り、列車リニアとプラットホームをへだてる乗降ゲートを越え、銀色の胴体の中に消える。
 ボクも小さく手を振り見送る。
 しばらくして列車のドアがプシュっと音を立て閉まり乗降ゲートも閉まると、列車がするするすべりだし、あっと言う間に暗いあなの中に消えた。

「行っちゃったね」
「そうだな。連れて来るのも一苦労したが送り返すのも手を焼くとは……。帰るか」
「うん」
 タマちゃん水無ミナちゃんもここを伝って帰ったんだな~。いつかボクもリニアに乗ってみたい……。

 少し感傷的になりながら、降車客の流れに乗って連絡階段に向かう。もう遠慮することなくマキナと指をからめて歩く。

「──リニアのプラットホームで公然キス」
「──キョウちゃんのあやしい関係。若い女二人はだれ?だって……」
 もと来たみちを戻っていると護衛がつぶやく。

「妖しくも怪しくもない。妻の二人だと書き込んでやれ」
 護衛に振り向いてマキナが言う。

「ダメだよ。余計な情報を与えたら」
「……それもそうか」
 ボクの提案にマキナもうなずく。

「──若い女は新しい妻、らしい。もう暴露ばくろされてます」
「──マキナ様は〝ふるい妻〟だとか書かれてますね~」
「ほぉう……」
 ぴきぴきとマキナの額に青筋が立つ。

気更来きさらぎさん、投稿主を特定、制裁せいさいして」
 それは、さすがにゆるせない。

「私にそんなこと出来ません。まず、被害とどけでしょう?」
「じゃあ、そうして」
「いいですけど、単なる未婚者のやっかみですよ?」
「じゃあ、早く結婚しろって言って」

「そんな無茶な……」
「──うわっ。キョウ様は〝毒舌どくぜつ・報復ちゅう〟とか書かれてます」
「それって、ほぼ実況に近くない?」
 そう言って後ろを振り向く。あわててそっぽ向く数人が目に入る。

「直後に中傷者、発見。確保」
 その女性ひとたちを指さし宣言する。

「ち、違います」
「全然」
「マジ捕まえます?」
「捕まえて」

「──待て待て。放っておけ」
「でも……挙動不審だよ」
「挙動不審だけでは護衛といえど捕まえるなんてできないぞ」
 マキナが小声でなだめてくる。まあ、そうなんだろう、けど。

「──一旦、後ろをやり過ごす」
 エスカレーターの折返しで改札へ向かう流れから外れる。後ろにいた人たちが追い越しエスカレーターを流れて上っていく。

「悔しいな~」
「公衆の面前でべらべらしゃべるからだ」
「だって~」
「地下街で彷徨うろついてみるか?」
「ほんと?」
「ああ、なんなら昼を食べてもいいぞ」
「いいの? あ……でも……」
「なに?」
「何でもない……」
 ボクのご機嫌きげんとりなんだろうけど、う~ん、外の料理をマキナが食べられるかな~?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

処理中です...