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4.本家からの再出発
189.洗い役
しおりを挟む「狭い……狭すぎる……」
「何?」
「何でもない……」
大きかったマキナの背中が小さく見える。あっと言う間に洗い終わってしまった。
「そこはいいぞ?」
「もうちょっと洗っていたかったな……」
背中に抱きついて手をお腹に回して擦る。
「さあ、みんなに洗ってもらえ」
「……うん」
マキナがシャワーを浴びて浴槽に行ってしまう……
「はあ~~。で、誰が洗うの?」
後ろで控えていた羽衣さんに訊く。
「私と気更来、歩鳥、斎木──」
「何それ。ほとんど、全員じゃん」
「──洗い流すのに笹と打木、です」
「洗い流す役まであるの?」
「ええ」
「──ちょっと待った!」
「今度は何?」
話にカエデさんが割り込んでくる。
「流し役に私たちも入れてもらう」
「そうそう」
カエデさんに加えてツバキちゃんもかよ。
「もう、好きにして」
「好きに、して!?」
「好きにしてって言いましたね?」
羽衣さんと斎木さんが聞き返してくる。
「いや、分担は好きに、ってことだからね?」
ちょっと言葉を間違ったかな。言質もらった~、って騒ぎ、お風呂マット持ってこいって指示してる。
「ちょっと、マットで何するの? 正妻も差し置いて、子供たちの前は教育上よくないよ?」
「だって『好きにして』って言いました」
「男に言われたい言葉ですよ」
そんなことを聞いたら舞い上がって、女は止まりません! って力説してくる。そんなこと知らないよ。
「とにかく、ここはマズいから……」
「どこなら良いんですか? あそこですか?」
「子供がいなきゃ良いんです?」
あそこって三階のあの部屋かな? でもマキナがいるのに流石にマズいわ。
「ね~ね~、マットを使うのがそんなにダメなの?」
ツバキちゃんがまた割り込んで聴いてくる。
「「すごくいいです」」
ボクが答える前に羽衣・斎木が熱く反論する。
「──そうでもない」って必死に割って入る。
「やれば分かります」
「そ、そうなの?」
「──分かりたくないよ」
どうせならマキナと……と、そちらを見たら……反応が薄い。まあ、知らないしね。
気づいたらぬるぬるにされててボクもよく分からなかったけど。
「──とにかく、アレはだめ」
「「そんな~」」
「お前たち、そのうち機会もある」と気更来さんが大人な発言。護衛たち、そんなに年は変わらないと思うけど。
「そうだな……」
「なら……深夜、空いてます?」
「深夜?……ダメ。予定がある」
今夜はみんな寝静まったころ、マキナとむふふ……の予定なのだ。まだ、言ってないけど、サプライズしても楽しい。
婚外の人に慮る必要はない。
「深夜に予定って? 姉妹で寝るだけだよね」ってツバキちゃんが聴いてくる。
「それは……大人の事情?」
「大人って一つしか変わらないよ」
でも、だいたい分かったって訳知り顔になる。
「ツバキちゃんはあと三年あるよね?」
女は十八以上、学生でないことが結婚の条件なんだから。それで大人って言えるんだよ。
「──大人って言うので分かった」
分かったか~、まあ、分かるか。
「それでマットはナシですか?」
「もちろん。子供のいないところでなら」
「深夜に時間、空けてくださいよキョウ様」
「マキナがいるのに、そんなことできるワケないでしょ?」
お風呂マットは片付けさせて、イスに座った状態で四人に洗ってもらう。何か偉いさんになった気分。健全健全。
洗い終わると流す番。笹・打木さんにカエデさんツバキちゃんも加わりシャワーをかけて洗い流してくれる。
「ふい~~」
極楽気分で浴槽に浸かる。マキナの隣に座って息をつく。すかさず、アリサちゃんが膝に上がってくる。
「やっぱり広いお風呂はいいね~」
「……そうだな」
「あっと言う間に週末が終わっちゃった」
「まあな」
「明日から、どうなるんだろ……」
「分からん」
そう、他愛もない話をしながら、お風呂タイムを過ごす……。回りに人がいてマキナとゴニョゴニョ話ができない。特に子供たち。
これは……婦夫の符牒を決めておかねばいけないのでは?
お風呂から上がるとタンポポちゃんたちを拭いて下着やパジャマを着せると、マキナも着付けてしまっている。まあ、仕方ない。
みんなと連れ立って本館に戻り二階でタンポポちゃんたちと別れる。三階に上がり三階の部屋に戻る途中、マキナに話そうと思ってたのに話せなくなった。
ボクたちの部屋の前に鬼君様が仁王立ちしているのが見えたから。
「こんばんは。レニ様、どうされました?」
「どうもこうも、ありませぬ!」
いたくご立腹のよう。ボク、何かしたっけ?
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