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4.本家からの再出発
185.サガラ・バラエティー
しおりを挟む「それで……ツバキちゃんやカエデさんは帰らないの?」
「心配だから今夜、泊まるよ」
「私も。卒業まで暇だし」
「…………」
アヤメさんが無言で聴いてほしそうにしてる。
「それで学校はいいの? ボクの友達は帰ったよ?」
うん、帰ったはず。拉致騒ぎで、お別れは言えなかったけど。
「大丈夫大丈夫」
「キョウちゃんの方が大事だよ」
それで良いのかな~? アヤメさんが自分自身を指さして聞いてよ~って顔、してる。
「……アヤメさんも残るんだね?」
「そうだよ~。私も残るからね?」
──はいはい。
「そ、そう言えば、サガラの番組はどうなってるかな~?」
何とか昼間の話題を変えようとサガラの名前を出してみる。
「キョウ、食事中のテレビは感心せんな」
「そう……ごめん」
マキナの言うことも尤もだね。
「番組……。そう言えば、どうなってるのかな~」
「うちも観たい」
「おい!」
マキナが止めるも、カエデ・ツバキの二人がリモコンを捜し当ててテレビのスイッチを入れる。
『こんにちは。今日はまた、特別に蒼湖五條銀行からお送りします──』
ちょうど番組のオープニングに合ったらしい。サガラが挨拶している。
「どう言うことだ?」
「銀行からって……スゴいね?」
「そうだね?……」
ほ~ら、銀行から放送って変だよ。どうなってんの? 前の放送を観てないからよく分からない。
「それはね、放送局に視聴者が殺到したことが有ってね、一番安全で保管するのに便利な銀行になったんだよ?」
アヤメさんが聴きもしないのに解説する。いや、ボクもなぜ銀行なのか知りたかったけどさ~。何で知ってんの?
意味ありげな〝保管〟ってのが気になる。
「放送局に殺到って、蒼湖は物騒だな」
「局に物騒なものが有ったからね?」
「ギクッ。黙って見ようか、アヤメさん」
あ~~、銀行の意味、分かったかも……。
「それで銀行……まさか……」
「物騒なブツって……」
カエデ姉妹が一斉にボクを見る。
「な、何?」
「まあまあ、今日のファッションショーを観れば少し分かるよ」
「アヤメ姉、何知ってるの?」
「う~~ん……少し?」
「どうして疑問形?」
「だから見れば分かるって」
画面では、場所を提供した五條支店長とのお礼のやり取り、ワイプで映されたスタジオのパネラーとの番組オープニングの流れを消化している。
『さて皆さん、こちらにお邪魔していると言うことは、お分かりですね?』
『分かってるから早せぇ~や』
サガラの説明にワイプ向こうのパネラーが急かす。
『少年Kの衣装プレゼントに多数のご応募くださり、ありがとうございました──』
『ワイも応募したで~』
『そうそう。応募せんヤツ、居らんやろ?』
『もう、説明はええねん。はよ発表』
パネラーがそろって応募したと報告している。
「ちょっと。まさかとは思うけど」
「少年Kって」
「…………」
ツバキ・カエデ二人が感づいたようで、こちらを見てくる。マキナは無言で圧力かけてくる……。アヤメさん、説明してよ?
『では、発表、します──』
テレビからドラムロールがドロドロドロドロ鳴っている。
それを聞き、マキナ姉妹は画面に目を移す。
『──市内にお住まい、サクヤさん。商品はこちら!』
画角の外から人形に装着された下着がフレームインしてくる。
「「ああ~~!」」
「…………」
まあ、そうなるよね? ボクは慣れたし予想できたから良かった? けど。
人形がボクを模したものだもん。無言でにらんで観てるマキナが怖いんですけど。
「これ、問題だよね~?」
「セクハラだよ、羞恥プレイだよ。抗議してやる」
まあ、無理だと思うけど。カエデさんが携帯を取り出している。
「サキちゃん──お館様? が推進してるみたいだから無理だと思う……」
「「はあ?!」」
「キョウちゃん、知ってる、知ってたの?」
「ひどい。みんなのオナ──目で凌辱されてるよ、きっと」
それは考えたくないかも……
「何か、蒼湖の人々にボクを知らしめるため、らしい。あと、男に慣れさせるため、とか?」
だから抗議は無意味。
「勝手に人の夫のプライベートを曝すなんて……」
「マキナ姉、知ってたの? 許していいの?」
「いや、知らなかった。お館からは……キョウが知られるくらいは辛抱しろと……」
「……ひどい」
「そんな~……」
「お前たちも覚悟しておくんだな」
「「…………」」
姉妹会議の間も抽選に中った人たちが発表され人形が並んでいく。
『──次は……市内にお住まい、京の狗さん。商品はこちら……』
遠く──と言っても館内から奇声が聴こえる。それに合わせて騒音も上がる。聴かなかったことにしよう。
「何だ、今の声は?」
「さあ? 館の中っぽいけど」
「気にしないで。続きを観よう」
想像つくけど詮索されたくないな~。
下着の当選者発表がすみ、普段着の発表に移っていく。姉妹たちは歯ぎしりしながら観入ってる。
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