【悲報】みんながボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~

ペロりねった

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4.本家からの再出発

177.アヤメの奇行

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「ふ~ん……なるほど……」

 アヤメは、ふところから黒メガネを取り出し装着する。警護がつけるものとは違うものだ。
 おまけに聴診ちょうしん器もかける。それに意味があるのか?
 錠前じょうまえけの人も奇異の目を向けている。

「なるほどなるほど──」
「おい……」
「──ふむふむ……」

 一とおりキャリーバッグの外観を観察したアヤメが首をかしげる。

「おい!」

 マキナは、こらえきれなくてアヤメに声をあげる。

「何? 聞こえてるよ」
「何をしている?」
「キョウちゃんの存在を確認してるんだよ」
「そんなことは分かる。分かるが、それで分かるのか?」
「まあまあ、任せてよ。それじゃあ……」
「「…………」」

 ロックスミスとマキナは顔を見合わせる。どう見ても中の様子など分かりそうもない。
 次にアヤメは、転ばせているキャリーを起こす。

「ふむふむ……」

 ぐぬぬぬ……マキナがうなる。バッグを起こしたからと言って、やっていることはさっきと変わらない。
 今度は前後のフタの嵌合かんごう部分を重点的にながめている、だけにしか見えない。

「なるほど」

 またしても、ひとり納得するとアヤメはバッグに聴診器を当てて聴き始める。
 見当違いにしか見えない検査にマキナは我慢の限界を感じる。

「あ~、薬を過剰かじょうに投与したのかな~?」
「薬? それで?」

 マキナが脊髄せきずい反射のように問う。

「うん。睡眠導入剤か麻酔ますいで、生命活動がいちじるしく低下してる──」
「それくらい分かるわ。それで?」

 至極しごく真っ当のことを言われキレかけるが今はにんの一字にてっする。

「──やっちゃうんだよね~、素人は。キョウちゃんには悪手。からに閉じこもっちゃうんだよね~」

 アヤメは、某国連中の方をさげすむように振り返る。

「それで?」と待ちきれずマキナがうながす。

「まったく。後処理のことを考えてよね~。このまま連れ帰っても眠り続けるだけで困ったことになったろうね~」
「おい!」

 マキナも振り返り、青くなってる連中を眺める。問題はキョウの処遇だ。

「さすがに直接いじれないと起こせないけどね~。でも、中の人とは通信できる」
「お前……いったい何を?」
「やっぱ、鍵穴が一番通じるな~」なんてつぶやきながら、アヤメはメガネ越しにキャリーの鍵穴をのぞいている。

「キョウちゃん……まだ、起きてるよね? 落ち着いて……薬が身体に回らないように防衛機能が働いてる。だから落ち着いて……緊張や興奮するとこっちを受け入れないから……」

 アヤメの言っていることがマキナは理解できない。

「寝~むれ良い子よ~♪……」

 子守り歌を唐突に歌い出す。ますます、理解できない。しかし、まだ我慢だ。

「そうそう……。リンク確保。あ~~……やっぱり麻酔の過剰かじょう投与か~。そっちの解毒げどくはキャリーから出てからの方がいいね」
 ≪ボク、助かるの。早く出して≫
「あ~、出るのはもうちょっとかかるかな~。慚悔ざんかい性をもうちょい下げとこうか。思い出せないかな? 連れ去ったヤツのこと」
 ≪見た見た。あの野郎~、でも黒服黒メガネだから特徴がなくて……≫
「興奮しないで。それで他には?」

 今のアヤメは、キャリーバッグとお話するヤバいやつにしか見えない。

 ≪受け渡されて、ボクが本人か確認したヤツは顔が見えて覚えてる≫
「ほうほう、よ~く思い出して」

 やおらポケットから携帯を取り出し操作し始める。

「ありがとう。はい、キョウちゃんを運んだヤツの顔」
「そんなことは分かってる」

 携帯にはキャリーバッグを運んでいたヤツらの顔が映っている。

「どうしてそいつらの顔が撮影さつえいされたんでしょうか?」
「それは……。しかし、証拠しょうことして弱い」

 アヤメが某国ぼうこくのヤツにも見せつける。確かにたじろいではいるが。

「どこでられた? 誰も撮影する機会はなかったよね」
「そうだ。どこかで盗撮とうさつされたに違いない」

 案の定、ヤツらも認めようとしない。

『キャリーの中の人は、本人確認のためアイマスクを取ってひとみの色を確認したってさ。盗撮されたって言うけど、間近で盗撮されたのも分からなかったの?』

 アヤメがロータリア語で話し始める。それほど話せるのに驚く。マキナはある程度分かるもののアヤメほど堪能たんのうではない。

『それは……』
『誘導されるな。はったりだ』

 運び役の二人が狼狽うろたえるのを責任者が一喝いっかつする。

『そうかな~。そこの二人で覗きこんでる。携帯に保存された写真でキョウちゃん──中の人を確認してる、としか思えない』

 アヤメが改めて携帯を操作する。静止画をスワイプして動画に変える。

『おい……どこでブツを確認する?』
『まあ、機に戻る途中の物陰だな』

 動画が再生されているが画面は暗くて音声のみ。

『顔は……アイマスクしていると分からん』
ひとみの色も違いない、な』

 アイマスクらしき裏地が外されるとくだんの二人が映る。

『気持ち悪。おい、眼球が動いてる』
『まあな、夢でも見てるんだろう』
『いや、麻酔ますいが効いていて夢って見るか?』
『さあ、知らんな。瞳の色が同じで瞳孔どうこう反射もある。もう確認は充分だろう』

 一人が指でまぶたを閉じたり開けたりして、確認している様子が映る。

『どうして、それを……』
『バカな!』

 運び役が焦るのを確認して、アヤメが動画を止める。

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