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4.本家からの再出発

176.ボールじゃないからね?

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「何をする!? 退け!」
「何もしない。しばらくとどまっていてくれればいい」
「離陸が近づいている。邪魔じゃまをするな」
「そのキャリーを見せてくれれば」
「わが国の機密だ。見せるわけにはいかない」

 何かめてる……揉めてるのは、いいけどボクを巻きこまないで? 本当ほんとれそう。中身が出るから。

『クッソ~……ふんぬ~~っ!』
「あっ!!」

 ええっ! うっそ~!! 投げやがった! 飛んでる飛んでる!

「笹、打木! 気更来きさらぎ! そっちに飛んだ!」
「ハッ?」「「了解!」」
『奴らに渡すな!』
『防御! 防御っ!』
「攻めこめ!」
「左っ! 回りこめっ!」

 目が、目が~! 目が回る~~ぅ!

「取った~!!」
『よこせっ!』

 羽衣はごろもさん? がつかまえてくれた? おお、やった~、ってオエ~。も、もうダメ……。

『させるかっ!』
『押し戻せっ!』
「渡すか! 笹!」
「おう!」

 また投げられた~、回る回る~、やめて~!

〝ピーーッ! ピーーッ! ピーーッ!……〟

 何か、ホイッスルを、けたたましく鳴らしながら近づいてくる。ピーポーピーポー、サイレンも聴こえてきた。助けが来た?

 何でもいいから揺らさないで? お願い。

『そのまま! 動かないで!──』
「皆さん、落ち着いて。臨検りんけんくだりました! 紛争をやめてください!」
『──エ・ロータリアの皆さん、臨検を行います。責任者の方、こちらにお願いします。繰り返します……』

 や、やっと止まった……。リンケン? って、なんか分からんけど、おかみ介入かいにゅうしてくれたのかな?

『何の権利で臨検などと。受け入れられるワケがない』
『あなたは?』
『本機の警備責任者だ』
『よろしい。私は、外務省の木田と申します。貴国航空機で服務する人員に男性略取りゃくしゅの疑いがかかっており、臨検を行います』

『横暴だ! わが国にそのような卑劣ひれつなものは、いない』
『であれば、臨検に応じていただけますね?』
『しかしながら、国家の秘密にかかるものに関して捜索そうさくに応じるワケにはいかない』
『仕方ありません。部屋へ移動し、落ち着いて一人ずつお話を聴かせてもらいましょうか……』

 何か話が長いな~、こじれてるの?

『これ、開けてもらえますか?』
『機密書類のため、見せるワケにはいかない』
『読んだりはしません。外観を観察するだけです』
『……本国に戻るまで開ける手段がない』
『それは……鍵が無い……とか?』
『……そのとおり、だ……』
『では、我々が代わりに開けても問題ありませんね?』
『そ、それは……』

「おい。やってくれ」
『待て! 見られるとマズい書類なんだ』
「書類にしては……軽い──」

 お? 持ち上げられた? やっと移動してくれる?
 って思ったら、また転ばされた……。

「──か~。10の5乗の錠前じょうまえに電子ロック。厄介やっかいですね~」
「ダメか?」
「あ~、時間をかければ」
「それはダメだ。手早く頼む」
「そんな無茶な。それを知ってか、あちらさん余裕にしてますね?」

 どしたの? 何かダメ? 開けようとしてくれてるの? だったら早くして。

「身体検査して鍵をさがすか?」
「鍵を持ってる、ならね? 持っていたとしても電子ロックの解除パスをしゃべるとも思えませんね~。私はしゃべらない」
「あんたね~。取りあえず何とかして?」

 あ~、鍵はたぶん持ってるよ。渡さないだろうけど……。

「レントゲン対策されてるだろから透視不可だろうし、キャリーの筐体きょうたい超硬ちょうこうで穴をけられないだろうし……地道にやりますか……」
「開けられないですか?」

 マキナの声? ここだよ。ここにいるよ。早く助けて~。

「あ? はあ……まあ……」
「困ってます? 困ってますよね~?」
「何だ、アヤメ。お前の出番じゃないぞ?」

 アヤメさんまで居るの? 何しに付いてきたんだよ。

「いやいや、中にキョウちゃんがいるって分かれば良いんでしょ?」
「はあ~。まあ、そうだが?」
「ちょっと、なに勝手に話すすめてるの。中に人が居るだろう、って重さで推定すいていできるけど、どうやって中にいるって確定するのよ」

 そーだそーだ。こっちは、身体が動きさえすれば音を立てたりできるけど、動かないんだから……。

「それはね~……おっと、詳しく言えないけど捜してる子は特別製なのよ~」
「お前……何を知ってる?」

 こっわ~。マキナのドスの利いた声、初めて聞いた。でも……特別製って何? 特別製って。

「ちょっと、人を特別製ってないわ~。人権団体に訴えるよ。そもそも男の子なんだから男性保護団体に言いつけてやる」
「あ~いや、やっぱナシ。さっきのは忘れて。とにかく、中身が人だって分かれば良いんでしょ?」
「おい、アヤメ?」
「まあ、そうだけど?」
「まっかせなさ~い」
「ぬぅ~~。アヤメ、誤魔化ごまかすな……あとで分かってる、な?」

 胡散うさんくさ~い。さすがアヤメさん、胡散臭い。

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