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4.本家からの再出発
163.満員風呂
しおりを挟む「ちょ、マキナ見えてる見えてる」
「脱いだら見えてあたり前だ」
「それはそうだけど、少しは隠そうよ」
バスタオルでマキナの裸体を慌てて隠す。タマちゃんたちは……なぜだ、興味なさそう。
アヤメさんたちは、見せつけるよう仁王立ちしてるし、タンポポちゃんたちまで真似してる。
いや、四女ツバキちゃんは恥ずかしがってる。よく見ると三女カエデさんは若干照れがあるね。
自分でやったんだから自己責任だよ。ボクは隠してあげないからね?
もしかしなくても、みんな入るんだ。う~、もう仕方ない。
着物を脱いで脱衣カゴに容れていく。シュルシュルと帯を解く衣ずれの音が脱衣場に響く。てか、シンとしてそれしか聴こえない。
手を止めて回りを見ると、みんながボクに注目してる。
「もう、あっち向いててよ。タマちゃん、携帯をこっちに向けない」
「そんな~」
「〝そんな~〟じゃないよ。ボクなんか録って何が楽しいのさ」
「愉しいしかありません」
「そんな、きっぱり言われても……。楽しいのはタマちゃんだけ。どこで腐っちゃったの?」
「腐ってなんかないよ。発酵しただけ」
「…………」
そこに違いはあるの? まあ、今さらになってるけど。
「キターーー(゜∀゜)ーーー!」
上衣を脱いで肌襦袢まで脱いでいくとタマちゃんが奇声を上げる。
「タマちゃん、放り出すからね?」
「お口、チャック」
脱ぐのを止めてタマちゃんをにらむ。まったく、調子がいい。
「ふぉ~ふぅ~」
肌襦袢を脱ぎきると、烈しい鼻息がしてくる。もう無視してマキナの手を曳き共に浴場に入る。
洗い場で前後に並び、後ろに座ってマキナの背中を洗う。
「やっぱり少しふと──ふっくらしたね」
「そ、そうか?」
素肌の横っ腹を擦るとぷにぷに感がよく分かる。
「ただいま、マキナさんの背中を洗っております」
「ちょっと、そこ、実況しない。浴場に服着て入らない」
「じゃあ脱いでくる」
「いや、そうじゃなくて。出て行って、ってこと」
もう理屈が通じない。二人っきりなら密着して洗えたのに。
何なんだ。他のみんなは裸になっていても体を洗わないで、こちらを注目してるって。
「交代しようか。洗ってやる」
「う、うん」
「うひょ~」
マキナと席を替わって前に座る。もう、ガヤがうるさくてしょうがない。
「少し痩せたか?」
「そ、そうかな~。そうでもないと思うけど」
マキナが背中に密着して洗ってくる。ちょっと話題提供しすぎだよ。
「こちらの生活はどうだった?」
「まあまあだったよ。……そうだ、農場の露天風呂に入ったよ」
「そうか……」
外野からは「何話してるか分からん……」って聞こえてくる。
「こ、今夜も、いっぱい、する、よね?」
「そうだな……どうしようか……疲れてるし……」
「そうだね、疲れてるね、明日からで、いいよね?」
「うそだよ……。今夜もいいけど……妹たちがいるからな~」
「そうだね。アヤメさんたちが居るからね~。彼女たちが帰ってからにする?」
「帰ってからか~。そう上手く行くかな?」
「えっ? それって、どう言う……って、タマちゃん、何してんの?」
タマちゃんが、すぐ近くまで来て聞き耳を立てている。
「こそこそ話すと聴こえない……」
「聞かせる話じゃないから、こそこそしてるの!」
「キョウちゃんの話題はみんなが知りたいんだよ?」
「知りたいのはタマちゃんだけだよ。退いてシャワー浴びるから」
まったくもう。マキナもどん引きだよ。
「(キョウちゃんの)エッチい話は全国一〇〇万人の読者が求めてるのに~」
そんなことは知らん。タマちゃんには一〇〇万人の読者がいるの? そんなところで人の醜聞を流布するな。
「次は私の番ですね?」
「は?」
シャワーで泡を流すとマキナは浴槽に逃げた。ボクも入ろうとするとアヤメさんが押し戻し、洗い場で背中を向けボクの前に座る。
「やれやれ……」
アヤメさんを洗い終わるとカエデさんが座る。何かデジャブーを見てる。いつかやった流れだね~。
「ボク、湯冷めすると思う」
「いいからいいから」
「…………」
いいからいいからじゃないよ。
「ふぉ~……はひぃ~……」
「変な声出すなら洗いませんよ?」
「そんな~、このために生きてきたのに~」
「それってどんな人生ですか? ボクは人の背中を洗うのが人生ですか?」
「そうだよ~。結婚しても男に洗ってもらえない人が大多数だよ~」
「そんなこと、ないでしょ。結婚してるんだし」
「結婚してても混浴は嫌うのが普通だよ~。キョウちゃんが変なんだよ~。お陰で女の夢が叶ったよ~」
「それほどですか?」
「キョウちゃんって、やっぱり自覚なさすぎ。どこかネジが緩んで──ネジが外れて壊れてる」
タマちゃん、ボクを辱しめすぎ。ボクってそれほど?
「てか、また近いよ、タマちゃん。シャワーかけるよ?」
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