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3.喜多村本家に居候
140.羽衣ヒート
しおりを挟む「いかがでした?」
「う、うむ……なかなか……刺激的……であった……」
「そ、そうですか」
息を切らせたミヤビ様とお湯に浸かる。思ってた反応と違う。
「義兄上、余もお願いします」
「レニ様はまたにいたしましょう」
「そんな~。では余が義兄上を洗いまする」
「いえ、もう洗っていただきましたので」
「はあ~、そう言わず、もう一度」
「──危ない!」
勢いよく立ち上がったレニ様がよろけ、それを支える。
「ほら、まだ回復していらっしゃいませんよ。またにいたしましょう」
「そ、そのようです。また、いつでも出来ますもの……」
「そ、そうです、よ?」
ありゃ。これって、長居するフラグなのかな?
寄り添ってレニ様とお湯に浸かる。
また、射貫かれる視線を感じる。タンポポちゃんたちだな~って横目で見たら目が吊り上がってるよ。
「ちょっと、子供たちを見てきます」
「あっ!」
まとわりつくレニ様を放してタンポポちゃんの方に移動する。
「キョウ様~。アレ、アレを私にも」
移ってる途中で羽衣さんにインターセプトされる。
「まだ、懲りてないんですか? わがまま過ぎると解任ですよ」
「そんな~。その前にぜひ、子作りしましょう」
声を落として言ってくる。
「羽衣さんはそれでいいの。仕事、失くすかもしれないよ」
「仕事なんてど~でもいいんです。男に近づけると思って頑張ってきたのに──」
「おい! ウイ、なにしてる」
気更来さんがボクたちに詰めよってくる。
「──もう我慢の限界なんです」
「ウイ、やめろ!」
「気更来さん、ちょっと待って」
気更来さんを止めて、少し距離を取る。
「今夜、日付が変わるころトイレで……」
いっそう声をひそめ羽衣さんに言う。
「本当に? 本当ですね?」
「うん」とうなずく。途端に必死さが和らいだ。
ふやけた顔で羽衣さんは気更来さんへ向かう。気更来さんは訝しげ。
あれだね。ヒートってヤツ。女の欲望に取りつかれてる。誰彼となく襲いかかっちゃう。
って言っても、襲われそうなの、ボクかタマ・水無の三人だよな~。
鎮めてあげないと身の破滅だよ。まあ、マキナに許可もらおう。
「タンポポちゃん、顔がこわいよ?」
「うるさい。なに話してたの?」
タンポポちゃんたちのところに行くと、鬼の形相でにらんでくる。
「別に、なにも」
「ウソ。よからぬ相談でしょ?」
タンポポちゃんの近くに座ると距離を空けられる。くすぐらないって。
「ホントだよ? 興奮してるから慰めてあげただけ」
「ウソね」
「うん、ウソ」
「ウソつきは、おしおき」
「お、お仕置きは、やめて」
なんでバレるんだ。女性にウソは通じないって本当だね。こんな年頃にその片鱗を覗かせるとは。
マキナには、正直にしてよう。
「みんな、忘れ物ない?」
「そんなヘマはしない」
「しない……」
「わすれない……」
少し欠けたお月様が、やっと稜線から姿を覗かせて来るころ、露天風呂から撤収する。
「余は、露天風呂を気に入りましたぞ」
「うむ。なかなか好いものであった」
「そうでしょう」
レニ様ミヤビ様も満足されたようで何より。
「混浴じゃなかったら、気に入ったかも」
「いいお尻──いい月が録れた」
「そ、そう。今度は、男だけで入りに来ようよ」
水無ちゃんは、おおむね好評。タマちゃんは、なに言ってるのかな? お尻、ってなに?
「えへ……ふへへ……むふふ……」
「…………」
緩み切った顔の羽衣さんに気更来さんが怪訝な表情をしてる。バレバレですよ、羽衣さん。せめてその時までは表情を引き締めてないと……。
かくて、多くの問題をはらみつつ車を列ねて屋敷に戻る。
「それじゃ、お休み」
「お休み~」
「うん。お休み」
本館のエントランスでタマちゃん水無ちゃんと別れる。
「これ、そなたはどこへ行く?」
二階でエレベーターを降りるとミヤビ様に呼び止められる。
「あ~、タンポポちゃんたちを寝かしつけてきます」
「そうか……。そなたには夜の勤めがあるのじゃから早く戻ってくるのだぞ」
「そうです。余と夜のコンビネーションを確認いたしませんと」
「あ~……分かりました」
ミヤビ様たちと分かれると子供たちとトイレに急ぐ。もう、みんな舟をこぎ始めてる。
「みんな、寝る前におしっこして来てね?」
「もう、眠い」
「ねむい……」
「もうねる……」
「ボク、様子見にこれないから夜中に行きたくなっても知らないよ?」
「分かった……」
「しかたない……」
「キョウ……」
みんながおとなしく個室に向かうのにマナちゃんがぐずる。暗くないから怖くないでしょ。
「マナちゃんも一人でできるようにならないと……」
「うう~……」
「分かった。もう、今夜だけだよ?」
「ん~」
ちょっと、ボク離れさせないとダメかも知れない。
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