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3.喜多村本家に居候
137.露天風呂
しおりを挟む「急ぎ用意させましょう。日没後は農婦たちも風呂に入りません。入っていても少数です」
「えっ、いいの?」
あいにく、夜空しか見えませんが、とサザレさんは申し訳なさそう。でも、それで充分ですよ。
「お委せください」
急遽、農場の露天風呂に入るのが決定する。
初露天風呂、楽しみだ~!
「そなた、そんなに興奮して大丈夫か?」
「そ、そんなに興奮してる?」
自分ではそうでも無いつもりだけど……興奮しているのは間違いない。
「外で風呂に入るのが、それほどのことですか?」
レニ様は懐疑的。
「まあ、入ってみれば分かります」
「外っていいわね~」
「うん……」
「でも農場……」
幼女ーズももれなく付いてくる。
「露天風呂に入りたいとは……」
「さすが、キョウ様」
「まさか、出かけてまで入りに行くとは」
「期待を裏切らない」
「あの風呂では、いかがして敵を防ぐ……」
「お護りするには、あと四人は欲しいな……」
護衛・警護たちまで付いてくる。だから壁内ではめったな事起こらないって。
ボクたちは、二台のワゴンに乗り込んで入出門へ少し戻り、横路から山を登って行く。
林の中を通って丘陵を舐めるように奥に進むと牛舎などの並ぶところに着く。
その横を通り抜けて宿舎のとなり、屋根だけの四阿みたいな前に停まる。
「ここ?」
「はい。その衝立のような壁の中で着替えます」
「暗いね。月でも出てればいいのに……」
「そうですね……。もうしばらくすると欠けた月が出ますが。こちらには裸電球くらいしか照明がありません」
「ふ~ん」
「一人で先に行かない!」
「そうそう」
「おしおき……」
「ああ、ゴメンゴメン」
子供たち、ほったらかしだった。
「キョウよ、急くでない」
「義兄上、お待ちを」
ミヤビ様たちも焦って付いてくる。
ボク、かなり舞い上がってるみたい。
「それで、その籠に服を容れるの?」
「はい、こちらの分だけでは足りませんので」
いっぱい荷物を持ったサザレさんが不思議だったけど、そう言うことね。
ボクたちは、着替えや湯上がり用のローブをもらったカゴに容れていく。
「こちらを着けて、お入りください」
「湯浴み着?」
「外は冷えるので湯冷めせぬように」
「なるほど」
「あの~、これは何事です?」
「連絡していたはずですが」
かなりラフな恰好の女が現れて訊いてくる。オーバーオール姿で農場の管理者かな?
レニ様が恐る恐る脱いでいた服を慌てて繕う。
「あなたも聞いているでしょう? 滞在しておられるキョウ様が露天風呂を所望されて、こちらに赴いたのです」
「キョ、キョウさま?」
「分かったならお下がりなさい」
「は、はい。マキナ様のあのキョウ様が……。あ、あの、一言ご挨拶を……」
「無礼ですよ──」
「なに?」
「──キョウ様?」
「あ~、この農場を預かります。安倉と申します。あ~、このような所にお越しくださり、ありがとうございます」
「ごめんなさい、騒がせて。露天風呂があるって聞いてお邪魔しました」
「い、いいえ。ようこそいらっしゃいました。存分、お寛ぎください……。可憐でお可愛らしい……」
「は?」
「い、いえ。それでは私はこれで……」
「ありがとう」
ふらふらしながら安倉さんは帰っていった。大丈夫かな?
「義兄上、余は心臓が口から飛び出る心持ちでしたぞ」
「大げさな~。こちらがお邪魔してるんですから、これくらいのハプニングは許容しなきゃ」
「ふ~む……なるほど。さすが義兄上」
いや、感心されるほどでもないけど。露天風呂は不特定の人との出会いなんだから。
「うわ~、結構大きい。十数人入れるね」
「あ、義兄上、壁がありませぬ」
「そうだね」
「そうだね?……」
「露天風呂だから。屋根も無いところがあるよ」
「そのようなところでは、丸見えではありませぬか!」
「大丈夫。相手も丸見えだから」
「…………」
あら。ぱっくり口を開けて、いかにも呆気に取られてレニ様が固まる。
「そなた、冷えるぞ。早く入らねばな」
「かけ流しのようですけど上がり湯で入ってください」
「う、うむ」
ミヤビ様、上がり湯しないつもりだったな。なにげにミヤビ様とは初混浴だな。
「まずは、マナちゃんかな~?」
「うん」
こちらは、イスがないので跪いて洗うしかないね。おまけにスポンジとかも無い。仕方ない。
「義兄上、それがぬるぬるでしょうか?」
「そうですよ~」
「……違う」
「そこな子は違うと申してますが?」
「だ、第一段のぬるぬるかな~?」
「そう、なのですか……」
「そうそう」
レニ様、誤魔化されてちょうだいよ。
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