上 下
132 / 203
3.喜多村本家に居候

132.板ばさみ? 引っ張りだこ?

しおりを挟む


「ちょっと~、キョウちゃんの部屋見たいな~」
「うん、見せて」
「う、それは……」
 ボクの部屋はいろいろ見せられない状態じょうたいなのよね~。

「さあ義兄上あにうえもどりましょうぞ」
「キョウ、帰るのよ」
「うん、かえろ」
「かえる……」
 レニ様、タンポポちゃんたちがっついてくる。

「あの、その……それは、ここの責任者にいてみないと、なんとも」
「怪しい……」
「うん、怪しい」
 まあ、うたがわれるよね~。

「何も怪しくないよ。あの……古い家だから仕来しきたりとかいっぱいあって、ね?」
「ふぅ~ん。まあいい。夕食は一緒に食べられるよね? その時に聞かせて」
「そうそう」

「あ~……それも、どうかな~なんて……」
「ますます怪しい……」
「そうだね。いったい何をかくしてるの?」
「うんうん」
 二人が疑念ぎねんを深めちゃった……。

「それは……」
義兄上あにうえ、もうよいではありませぬか? 戻りましょう。そなたら、義兄上あにうえを困らせるでない」

「うっ。ま、まあ、あとで聞くよ」
「キョウちゃん……遠い人になった……」
「じゃ、じゃあ、あとでね?」
 あとでって言っても、良い言い訳が何も浮かばない。

 物思いにふけりつつ、レニ様タンポポちゃんたちに引きられ本館に戻る。


 ◆

「ねえ……」
「分かってる」

 水無ミナ悪巧わるだくみしている。それをタマも分かっている。

「こっそり付いてかない?」
必至ひっし

 タマ水無ミナは、部屋にもどるふりして距離をけキョウのあとをける。

 キョウたちは屋敷やしき──迎賓げいひんかんの端まで行くと両開きのドアを抜けて行く。

「──思い出したけど」
「なに?」
羽徳ハノリ殿下でんかの第一正室せいしつ
「うん」

山級やましな怜瓊レイニって言う」
「それが?」
「レイニってレニに似てない?」
「ああ、確かに。それで?」

「それだけ」
「ガクッ──そのレイニ様があのレニ様だと?」
「まだ確証がない」
「まあね」

おくこもってるからレイニを見た人がいない」
「ふう~ん」
「うわさでは豊かにったかみあでやかな着物を着てる」
「ふんふん」

背丈せたけは一六五センチらしい」
「まあまあの身長だね」
「でもアレ﹅﹅は、ちっちゃ──キョウちゃんより低い」
「あ~、キョウちゃんは──」

「自称一六〇センチ。でも、本当はギリ一五五」
「あ~、キョウちゃん思ったより低いかな~なんて思ってた。見栄みえっぱりだよね。それが?」
「そのキョウちゃんより低い」
「まあ、そうだったね」

「私は一六三センチ」
自慢じまんか! 私も一六〇はあるから」

 などと取りめのない話に脱線だっせんして使用人の屋敷を抜けて行く。

「こ、こんにちは」
「え、ええ、こんにちは?」
 そこでは使用人との接触せっしょくもままある。

「ここはなに? キッチンにランドリー。使用人の働くところ?」
「うん」
「こんなところに住んでないよね」
「おそらく」

「あ! こけた」
「むう」
「す、すばやいね、タマちゃん」
 タマは幼女の転倒てんとうを見るやドアのいた部屋に飛び込む。水無ミナあわててタマにならう。

想定そうていずみ」
 ドヤ顔のタマに水無ミナがイラっとする。

「ここって居室きょしつだね」
「うん」
 しのんだ部屋はベッドが並び質素しっそな家具しかない。二人は、しばらく待機してやり過ごす。

「もういいかな?」
「尾行再開」
 使用人の部屋から出るとまた、かべ沿って二人は歩み始める。


 渡り廊下ろうか手前のとびら越しに見ているとキョウたちは壁方向に向いている。

「あれ? あそこ、ドアか何か?」
「かもね」
「消えた」
「急ぐ」
 キョウたちが壁に消える。二人は、両開きを開けて消えた場所へ渡り廊下を急ぐ。

「これなに? 壁の中に消えた?」
「エレベーター」
「ああ、エレベーターか」
「建物に合わせて装飾そうしょくされてる」

「は~、なるほど」
「二階に停まってる」
「部屋は二階かな」
「断定不可能。また動きだした」
 エレベーターの動きを観察していると二階から上へと動き出す。

「五階か~。二階とどっちよ」
 エレベーター表示が最上階五階で止まる。

「五階。責任者に会いにいった」
「そうか。二階で待ってるとキョウちゃんと会えるかな?」
「たぶん会えない。レニ様がレイニなら部屋は最上階」
「ああ~、そこに戻ろうって言ってたから」

 突如とつじょ、タマが歩きだす。

「タマちゃん、どこ行くの」
「……おしっこ」
「なんだ……私も行く」
「早くして」

 まったくマイペースな二人である。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

声劇・シチュボ台本たち

ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。 声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。 使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります) 自作発言・過度な改変は許可していません。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...