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3.喜多村本家に居候

130.蒼湖中央駅

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 湖畔こはんに着くと湖岸こがん沿ってしばらく走る。

 目の前に現れた桟橋さんばしに乗って湖を突っ切る。途中の空港へのインターチェンジをスルー、そのまま南を目指す。

 あっと言う間に南湖岸の街並みがせまってくる。そのまま市街地に入りメインストリートを進む。

 駅前通りから駅前ロータリーに車が進入する。警護のさささんと打木うちきさんにドアを開けてもらい外に出る。

〔キョウ:駅前に着いたよ。黒い車二台とワゴン車。見える?〕
 駅前を見回すけどそれらしい人影が見当たらない。

水無ミナ:あ~、見えるけど人垣ひとがき邪魔じゃまでなかなか近づけない〕
〔タマ:殲滅せんめつせん滅せん滅〕

 殲滅せんめつってタマちゃん、護衛もそこまでしない。人垣かき分けてくる程度でいいでしょう。

〔キョウ:分かった。こちらからも行く〕

「笹さん打木さん、付いてきて?」
「「御意ぎょい!」」

 駅前にはそこそこ人がいるけど、一際ひときわ人の集まるところがある。そこだろう。

「あ、義兄上あにうえ、危険ですぞ」
「レニ様は車で待っててください」
「そんな……。よ、も行きます」
 車から飛び出しレニ様も付いてくる。そして、うでからめてくる。なして?

「我々も付いて行きます」
「私たちも」
「そう? じゃあ、お願い」

 他の車から気更来《きさらぎ》・羽衣《はごろも》コンビ、歩鳥《ほとり》・斎木《さいき》コンビが合流してくる。陣容じんようがすごくなっちゃったな~。

「あれ? 少年K、蒼湖おうみ中央にあらわるなう」
「少年K、激写げきしゃ、激写、激写!」
「となりの子も若いキャワイイ!」
 ボクを見つけた周りの観衆かんしゅうかまびすしい。写真はらないで。

 警護たちが人の流れを断ち切って進んでいく。

「キョウちゃん! こっちこっち……ってだれ?」
「キョウちゃん……やはり……」
 護衛とともにけてくるタマちゃん水無みなちゃんが唖然あぜんとして足が止まる。羽鳥来はっとりさんまで怪訝けげんな表情をする。

「みんな大丈夫だった?」
「全然、大丈夫じゃない……」
「キョ、キョウちゃん、そっちの人は?」

「ああ、あとで説明する。まず車に乗って」
 って言いながらレニ様の腕をほどこうとするけどあらがわれる。

 ボクたちの移動に合わせ、群衆ぐんしゅうと化した通行人が間をけてせまってくる。

「生《なま》少年K、なまK、なまK」
「少年Kのみならず少年が集まってる。少年密度たっけ~」
「す~はぁ~す~はぁ~す~はぁ~、これが少年のにほひぃ~」
爆写ばくしゃ! 漠写ばくしゃ! 曝写ばくしゃ!」
 曝写──写真の拡散はやめて?

「さあ、早く乗って?」
 みんなに乗車を勧める。

「何これ? またリムジン?」
「むぅ……」
「僕、違うのに乗るから」
「我々も」
 羽鳥来はっとりさんとタマミナの護衛は別の車へ行ってくれる。警護たちも分かれていく。

「我らも別の車に乗ります」
「はい、ありがとうございます」
 タマ・ミナが乗り込むと、笹・打木コンビは外からドアを閉める。そのさい、別の車に乗ると申告しんこくしてくる。

『発進します……』
 インターホン越しに運転手さんが言う。

「お願いします」
 するすると車は動きだす。駅前に集まってる人たちから名残なごりしそうな視線が集まってる。


「それで……そちらのかたは?」
「キョウちゃん、道をみ外した……」
 踏み外すってなにさ?

 車両前方、来る時に笹・打木コンビの座っていた進行方向に背を向けた座席にボクとレニ様。対面、進行方向に向いた座席には、真城しんじょうタマキ・通称タマちゃんと、水無月みなつきユウナ・通称水無ミナちゃんが座る。

「ああ、こちらは──」
「キョウ義兄上あにうえとは義兄弟となったレイニじゃ。見知りおけ」
「「……は?」」
 そんな上から言われるとほうけちゃうでしょ。レニ様の腕をこうとするけどガンとしてゆずらずからめ続ける。

「──いや、これは、諸般しょはんの事情で今、喜多村にお迎えしてる、やんごとなき御方おかたで」
「義兄弟はいいとして、どうしてベタベタしてるの?」
「うんうん……」
 ごもっともな疑問をいてくる二人。

「さあ? ボクも分かんない」
「何を言われる。三人の熱い夜をお忘れか?」
「熱い……夜? 三人?」
「やはり。キョウちゃんはアッチに行った……」
 だからタマちゃん、意味分かんないって。

「レニ様、シーシー。あのことは内密ないみつに」
「どうしてです?」
 どうしてって言っても、ど~してもです。

「怪しい……」
「うん、怪しい。でも、それはそれで筆がはかどる」

 市街地を走り抜け南湖岸こがんから湖上道路へ車は走る。

「あのでっかいのは空港?」
 水無ミナちゃんが空港島を見て感想を言う。

「そうだよ」
「飛行機で来ればよかった」
「うっ。リニアに乗ってみたかったの」

「そうだね~。ボクもリニアで新都に帰ろうかな~」
「いけません。義兄上あにうえは古都から出られませぬ。保傅ほふのお役目がありますゆえ」
「そ、そうだった~」

 で、でもすぐにお子が産まれるわけじゃないから帰る機会はあるよね。

保父ほふ? なにそれ?」
「いや、それは、ね?」
かしこくも煌太女こうたいじょ殿下でんかの──モガッ」
 レニ様のおしゃべりなお口はフタをします。

「こうたいじょ……って何?」
「この国をべるこう継嫡けいちゃく放蕩ほうとう娘、羽徳ハノリ殿下でんか
 タマちゃん、余計な知識はするする出てくるのね。

「それで何でその煌太女こうたいじょ様が話に出てくるの?」
「さあ?」って言ってタマちゃんも首をかしげる。

「ハノリ殿下のお子を義兄上あにうえが育てることになったのじゃ、とともに」
 あちゃ~。レニ様、腕力強い。ボクの拘束こうそくを外して曝露ばくろしちゃったよ。

 やっぱり、人には腕があと四本くらい必要。

「ど~言うこと、キョウちゃん」
「むむむっ?」

「それは追いおい。ほら北岸が見えてきた」
 とっさにみんなの興味をらす。ボクがあとでみんなに話すと言い、レニ様にはだまっててもらう。

 北湖岸こがんに着いてからは湖岸沿いを走って来た道を戻っていく。

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