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3.喜多村本家に居候
124.タマ・ミナ、見つかる?
しおりを挟む「〝あ〟ではない。なぜ、ミヤビ様たちのお相手をしておらぬ?」
「だって、モールに遊びに行きたいとか言いだしてるから、他にすること探してもらってるんだよ」
「そうなのか……ご承知ならばよい。それで、そなたは何をしておる?」
「ん? タンポポちゃんたちを見に」
「そうなのか? あまり彼奴らを甘やかすでないぞ?」
「全然、甘やかしてないよ? ボクは、びしびしやる教育パパですから……」
「とてもそう見えぬが……。まあ、べったりせぬことじゃ」
「もっちろん、分かってるって」
サキちゃんが疑わしげに顔を歪める。
「話は、それだけ?」
「いや、こちらに向かったと言うそなたの友じゃがのう、見つかった」
「ほんと? 良かった~」
「それが……良いとも言えぬ」
「え? それってどう言う?……」
「報せてきた者によると四国におる」
「は? どうして四国に」
「それが……リニアで九州まで行き過ぎ、早く戻らねばと焦り近道だと称して四国に行ったのじゃ、と……」
「意味、分かんないけど?」
「わしも分からん。しかし、付き添う護衛がおるから、その内こちらに来るじゃろう」
「そんな悠長な。なんとか出来ない? ボクが迎えに行くよ」
「無理じゃ。あちらから連絡して来ぬ限りは」
「そんなあ~。その護衛と連絡つくんでしょ?」
「いや、影とは単独行が基本で、その裁量を持っておる。その影も渡りをつけぬ限りは所在を掴めぬのじゃ」
「そんな、厄介な……。護衛って影の人なの?」
「そうじゃ。その友が奇異な行動をしそうだと察知して無理に同行したそうじゃ」
「その人を教えて貰うわけには……」
「無理じゃな。そちらは、そちらの流儀がある。渡りをつけるには幾つも繋ぎを経由するゆえ容易にゆかぬ」
「ぐぬぬ~」ハイテク隆盛の世になんて時代錯誤。
「危急な連絡ではないゆえ、そやつに任せておれ」
そう言い、サキちゃんは戻って行く……。これはもう、奥の手を使うしかないか……。
サキちゃんを追いかけるように道を戻り、エレベーター前でサキちゃんが五階に上がったのを確認する。
空いたエレベーターを喚ぶとボクも五階に上がる。行き先は護衛たちの部屋。ミヤビ様たちは……おとなしくテレビ観てる、な? よしよし。
「ちょっと、いい?」
「どうされました?」
「羽衣さんにお願いが……」
「へ? わたくし、ですか?」
うん、と頷いて部屋の隅に呼ぶ。
「あのさ~、貸してほしいものが、あるんだ~」
「な、なんでしょう?」
上目遣いで頼んでみると、どぎまぎして答える。
「そのメガネ、貸して?」
「ッ! ダ、ダメです……これは……」
「そんな~、貸してくれたら~、ご褒美、あげるのに~」
「ゴクリ……。い、いや、これだけはダメ! です」
「ちぇっ。仕方ない……。笹さん、ちょっと~」
「は、はい。なんでしょうか?」
一番ゆるそうな羽衣さんがダメなら……。代わりに笹さんに頼もう。
「笹さんは、ボクの忠義の人、だよね~?」
「もちろんです……。ですが、いつものキョウ様ではありませんな」
チッ。気づいちゃうか~。まあいい。
「なら、ボクのお願い、聞いてくれるよ、ね?」
「それは……もちろん。事と次第によりますが」
「そんなこと言わないで、ね? ちょ~っと──」
「ダメです」
「──えっ?」
即、否定? なんでよ~?
「そんな……そのようなキョウ様は、キョウ様ではありません」
「な、ボクはキョウだよ。いつものボクだよ?」
「いいえ。そのような媚びるキョウ様は、キョウ様ではありません!──」
あ~、そっちね?
「──いつも毅然……とは、してらっしゃいませんが、人に媚びたりはしない」って論破される。
「わ、分かった。単刀直入に言うね……。笹さん、メガネ貸して」
「ぐっ! そ、それは……ダメ、です──」
苦渋の表情で笹さんが拒む。ど~してよ~?
「──お館様より決して渡してはならぬ、と申し付けられておりますので……」
「ちぇっ。サキちゃん、先回りしてたか~」
「何か?」
「いえ、こっちの話。ねぇ~、友達が大変なんだよ。あのメガネがあると、きっと助けて、見つけてあげられるんだよ。お・ね・が・い♡」
自分でやってて寒けがする。かなり、メンタルが削られた~よ。
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