113 / 203
3.喜多村本家に居候
113.また黒メガネ?
しおりを挟む「キョウよ、皆のガス抜きをしたいのじゃが?」
「ガス抜きって何?」
なんか唐突だね~?
「今のまま、昂ったままでは業務に支障がでる──」
「ふむふむ」
「──ひと時、辛抱して皆の好きにされてみぬか?」
「え~~っ。そんなのイヤだよ」
何いってるの、この人。
「大丈夫じゃ。そなたの記憶に残らぬようにする。酷いこともせぬ。どうじゃ?」
「記憶に残らないと酷いか、そうじゃないか分からないと思うけど?」
そんな都合よく行くわけないよ。
「そうじゃの~。分かった。聴覚は残しておく。それでどうじゃ?」
「聴覚だけ、ってあとはどうなるのよ?」
「感覚遮断して分からなくする、たぶん」
たぶん……って……
「そんなことできるの?」
「できる。黒メガネで管理者権限にアクセスできたようじゃから、たぶん」
「また、たぶん?」
少し考える。
「この事態を収拾できるんだね?」
「おそらく──」
おそらくとか、たぶんが多すぎ。
「──仕方なかろう。実験も検証もこれからのものを勝手に発動させてしまったのじゃ。わしにも分からん」
あやつが居れば分かるものを──ってサキちゃんが呟く。
もしかして、ボクって実験台にされる予定だったの?
「……分かった。どうすればいいの?」
「気更来、あのメガネを」
「えっ? は、はい」
「あの黒メガネするの?」
「そうじゃ」
あれは禁止って言ってたじゃん。
「メガネでそんなこと、できるの?」
「おそらく、できる」
まったく、「おそらく」とか「たぶん」とか……。いつものサキちゃんらしくないよ。
程なく、気更来さんが鈍色の金属ケースを持ってくる。あのメガネケースだ。
「ほれ、着けてみよ」
「うん……」
差し出されたケースを開けて中のメガネを着けてみる。
──あ! こんなところまで覗かれてる。これは……監視カメラ?
「では、『ステータス』で身体ステータスを見てみよ」
「ステータス? おおっ? 何かいっぱい数値が出た──」
「やはりか……。では、言う通りにせよ」
「うん……」
言われるまま『外接』に切り換えて『周辺探索』をカット。これで頭が疲れないらしい。
でも、監視カメラが分からなくなったよ?
『内部』に戻って『運動機能』から『随意』と『感覚』から聴覚の他をカット──って『警告』って出たよ?
──ちょっと~、聞いてる?
「ああ、警告が出たか? 無視して三十分後にデフォルトに復帰と設定。皆のもの急げ。風呂マットを持って来よ……」
──ちょっと~それだけ? 何が起こってるのさ? 目の前、真っ暗になったよ~?
「声を上げるな。全てキョウが聴いているぞ」
──お~い、聴いてる? って自分の声、聞こえない。なんで?
「……うっく……くっ」
「……うふっ……ぬふっ」
「そなたら、静かにせぬか」
「三十分、しか、ないのに、なりふり、かまって……ううっ……」
──もういい。……ええっと、身体ステータス……普通? だね……。百分の五十あたりをうろうろしてる。
──身長の項目は……さすがに無いか……クッソ~。
──『頭脳』がバッドになってるよ? なんだよ、指数が『40』って低すぎ。
──ちょっと上げてやろ。[↑]をポチッ……あれ?
──ポチッポチッ!……あれ? なんで上がらない?
──ポチッポチッポチッ!……ダメだ。ロックされてる?
──『知能』『記憶』も低めだな~。
──『外向性』は高めで外交的、『内省性』は低めで悩まないようだけど……。
──これってボクの性格そのまま?
──まあ、良くも悪くも変更できなくて、良かったような悪かったような……。
「これ、そろそろ時間じゃ。片付けよ、急げ!」
──お! やっと終わり?
「暇すぎだよ。って、何? この匂い~」
やっと視覚や臭覚が戻って来たと思ったら……なま臭い。
それに、いつの間にかマット──お風呂マットに寝かされてるし。
「どうじゃ? 痛いことはされておらんじゃろ?」
「痛いってほどでも無いけど、手首とか指とかぐきぐきする~」
「……あれほど無理するなと言っておったのに……」
「なに?」
「なんでもない。それで、どうじゃった?」
どうって言われても……
「なんか、周りが死屍累々、なんだけど?」
見回すと、女の人が折り重なって倒れてる。何あれ?
「気にするな。皆、天国にイっておるだけじゃ」
「ダメじゃん、天国行ったら」
まあ、表情はふやけてるから大丈夫……か?
「ぬるぬるされるって、こーゆうことだったのね?」
身体じゅう粘液まみれになってる~。
またしても、ボクは、サザレさんたちに身体を洗われる羽目に……。
スペシャルソープのお陰で、またいい匂いに戻ったけどさ~。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説



こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。




会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる