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3.喜多村本家に居候

112.みそぎの予行

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「あの~まわり、人が集まっててこわいんですけど~?」
「何ですか、あなたたち。これは神聖しんせい儀式ぎしき(の予行)なんですから。下がりなさい」

岩居いわいさんだけズルい。私たちも検査をお手伝いします」
「ダメです。これからヌルヌルしてあそ──お体をきよめなければならないのです。下がりなさい」

 サザレさん、いま本音がもれてませんでした?

介助かいじょが一人二人は必要でしょう? お願いします」
「……仕方ありませんね~」

 いや、そこで折れないでほしいんだけど?

「ちょっと待って。介助ならさささんと打木うちきさんにお願いします」
「「「そんな~」」」

 羽衣はごろもさん、斎木さいきさんたちが悲鳴をあげる。

「我らでよろしいのですか?」
「そ、そのような大役たいやくを?」

 そんなに狼狽うろたえなくても……。

「あなたたちが一番信頼しんらいできますから」
「キョウ様……」
「なんとうれしいお言葉」

 聞いた笹さん、打木さんが感泣かんきゅうしてる。それほど?

「私たちもず~っとおまもりして来ましたよ?」
「そうだそうだ」

 気更来・羽衣の両名がとなえる。

「私たちはマキナ様、直々じきじき依頼いらいを受けて護ってるんだ」
「そうだそうだ」

 歩鳥ほとり斎木さいきのご両人も反論する。らちかないな……。

「分かった。順番ね? まずは笹さんと打木さんにお願いするから。これ決定」
「「「くっ……」」」

 護衛・警護の四人がしぶしぶ退しりぞいて……笹さん打木さんの後ろに並ぶ。

 女性陣──たぶん使用人館で働いてる人たちも並んでいく。あの~、今じゃないから、のちのちだからね?

「ちょ、ちょっと~。妻をあらう、のは──」
「…………」

 タンポポちゃんが異論いろんを上げるけどサザレさんのひとにらみでだまり、すごすご湯船に戻っていく。

「はぁ~……サザレさん。続きをお願いします」
かしこまりました。では笹は右半身、打木は左半身をお願いします。わたくしは下半身を重点的に……」
「「「ズルい!」」」

 周囲から非難ひなんの声があがる。

役得やくとくです!」ってサザレさん、言い切ったよ。

「あ、あの~。スポンジ、とかじゃないんですか?」

 ブラックボトルのソープを手に取り両手でこねている。

「素手の方がよく感じますから」
「はあ……そうですか……」

 何を感じるんだ。異物いぶつのこととかだよな。

「で、では……参ります……むふ~」

 大きく息をくとおそる恐るヌルヌルの手をボクの下半身に……。その手つきがやらし~んですけどぉ。

「そなた、なぜワシに知らせぬ?」

 そんな風呂場にサキちゃんが乱入してくる。

「あ、忘れてました」

 なんか引っかかってたけどサキちゃんのことだったな。なんやかやで知らせるのを忘れてたわ。

「忘れるとは何事じゃ」
「マサキ様、お静かに。今、大事なところを──大事なところです」
「お、おう。そうか?……」

 サザレさんが一喝いっかつするとサキちゃんの語威ごいが一気に落ちる。

「わしもヌルヌルやってみたいのじゃが?」

 何言ってんの、この人。

「ご遠慮えんりょください。儀式ぎしき(予行)の最中さいちゅうです」
「そ、そうか……」

 毅然きぜんとするサザレさんにしおれるサキちゃん。サザレさんはサキちゃんにも強権を持ってるよう。

「あの~、もうそろそろ良いんじゃないですか?」
「そうですか? 念入りにやりませんと」
「そうなんですね……」

 そんなに、くちゅくちゅやられるとみるんですけど?

 そんなことより、サザレさんの表情がヤバいんですけど……大丈夫かな。

「サザレよ、やりすぎではないか?」
「そんなことは……はっ! わたくしとしたことが……」

 サキちゃん、グッジョブ! サザレさんが正気に戻ったよ。

「笹さん、打木さん、ありがとう」
「「いいえ」」
「貴重な経験をいたしました」

「サザレさん、次は?」
「泡を流したあと、お湯で体を温め、おしものを着付けます」

 もちろん、ボクはされるがままらしい。

 シャワーであわを流してもらうと浴槽よくそうかる。そこまでサザレさんの介助つき。

「どうってこと、なかったね」
「そう思うか? 後ろを見よ」
「えっ?」

 洗い場の女性のみならずお湯に浸かる人たちまでボクを見ている。

「どういうこと?」
「そなたのにおいじゃ。それが女をたかぶらせる」
「そう? それほど、でも……」

 となりのサザレさんを見たら、また顔がヤバくトロけてた。

「……サザレさん?」
「はっ! 申し訳ありません。わたくしもれているつもりでしたが……」

 かぐわしい香りとキョウ──つまりボクの匂いが混じって何とも自制じせいかなくなるらしい。

 サザレさんとサキちゃんが居なかったらヤバかったのか。
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