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3.喜多村本家に居候
97.煌家と喜多村家
しおりを挟む貴きお方って……サキちゃん、もっと分かりやすく言ってよ。
「そなた、食事中になんじゃ。携帯なぞ触りおって……」
「すみません。ちょっと早急に調べないといけないことが……」
「あとにせよ。携帯は逃げぬぞ?」
「あ、はい……」
サキちゃん、なんでこんな時に居ないのさ。
砂を噛むような気持ちで食事を終え、検索サイトにアクセスする。
〝煌家 ウィキ〟っと。
「家系図、嫡出子、二十代なかばだよな……。ええっと……その年代には……煌太女羽徳様?」
「なんじゃ?」
声の方を向くとミヤビ様がいる。返事して欲しくなかったわ~。
「なんでもありません」
「その名を、人前で呼んではならんぞ。お忍びゆえ」
「は、はぁ~?」
お忍び? 煌めく純白のスーツに仮面舞踏会の仮面して「お忍び」?
ご自分もじゅうぶん発展的とお見受けいたします。
ああ~今度は頭、痛くなってきた……。
「何なに……ご学友に……喜多村槙……奈……」
「そなた、魂が抜けたような顔をしておるぞ?」
在って欲しくなかった名前が見えた。
今度は〝喜多村 系譜〟で検索してみる……。
〝その源流は五條家に遡り……(略)……次第に勢いを失くし、傍流であった喜多村家が商業界で隆盛を誇り……(略)……五條といえば喜多村家を指すに到る。
元は堂上家で摂政・関白を輩出、華族の流れを汲み(略)──〟
「あかんでしょ」(✳️ダメでしょう)
「何がダメなのじゃ」
「いえ、喜多村家ってすごい……お貴族様だったんだと」
「わが国に貴族など居らん」
「まあ、今は、そうなんでしょうけど……」
そんな家の人が、なんでボクを拾ったの?
それに、五條……。なんか聞いたことある名前。気のせい、だよね? 字が違うし。
「まあ、考えても仕方ない」
「そなた、何やら燃え尽きておるぞ?」
「はい……。灰のようになりました」
「洒落か?」
「はあ、そうですね。皆はこのあと、何がしたい」
気持ちを切り替え、みんなに今後の要望を訊こう。
「買い物?」
「う~ん……」
「お菓子?」
「だいたい、買い物でいいか。二階のファッションフロアーでうろつこうか? ボクも服を揃えたいし」
「分かった」
「うん」
「うろつくのであれば、各階を回って下りて行かぬか?」
「それもいい」
「あまり長居すると迷惑がかかるので今回は服だけにしましょう」
「そうなのかや?」
「仕方ないわね?」
「分かった」
「うん」
皆の同意を取り付けた。あとは……
「気更来さん、まだエスカレーターで行けそう?」
「おそらく」
「じゃあ、出ようか?」
「うむ」
「「は~い」」
「うん」
食事の精算になって、奢ると豪語した羽徳──ミヤビ様はお付きのサイフ頼りだったようで、代わりにボクが(マキナのサイフで)支払った。
「皆、あまり離れたり遠くに行っちゃダメだよ~」
「分かってるわよ」
「うん」
「大丈夫、大丈夫」
「わらわが選んでやろう」
それは御免被りたい。ファッションフロアーに下りて、普段着やナイティーを物色する。
「そなた、あちらに下着があるぞ?」
「取りあえず、パジャマ、部屋着が欲しいので……」
「ならば、あとにするか」
「少年Kは、普段着や寝間着を物色しております──」
まだ居たんだ。ひつこいな、サガラ取材班。
「──是非とも、試着された方が良いです。そのお姿をカメラに収めたいのです」
「なんでそんなこと、しなきゃいけないの?」
「そりゃもう、K様がお召しになったなれば爆売れですから──」
ちゃんと取材許可もらってある、と宣言する。もう、サキちゃんの仕業だ、決定。
勝手に許可したからってボクが聞く必要はないからね?
「──それにお召しの物は、こちらの商店から譲渡されるそうですよ?」
ピクッと眉が上がる。
何だって~。ぐぬぬ~。誰がそんな釣り餌なんかに……釣られちゃった、てへっ。
試着コーナーの前、照明とスチルカメラマンの前で一人ファッションショー紛いをやらかした。
着替えて出て、撮影。部屋に戻って着替えて出る、のルーチンワーク。
──死にたい。
「良いヨ~良いですヨ~、笑ってキョ──K様」
「遠藤、ちゃんと撮れてる?」
「もう、ばっちりです!」
「よしよし」
サガラは護衛の作る柵の外で近くに寄らせない。
「こちらをお持ちください」
「あれ? 新品の服?」
撮影が終わると未開封のパッケージを渡される。
「試着した服は?……」
「スタッフが美味しくいただきました!」
「返せ!」
「そなた、乗り乗りであったではないか?」
「うっ」
そうなんだ。イヤイヤやってたけど、カメラマンが乗り乗りに乗せるので終いにはポーズなんか取ってた。
サガラ取材班は次に行った下着コーナーまで付いてきて、ボクを口八丁手八丁で転がして、また試着ショーをさせられた。
「そなた、これ! これ!」
煽情的な下着をミヤビ様が選んでくる。
「キョウ、これも可愛い」
「これ」
「これも、これも」
幼女ーズもピンクや紅い下着を見つけて持ってくる。
試着した肌着は死守するつもりが、手放さないとタダにならないと泣く泣く渡した。
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