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3.喜多村本家に居候

86.『バツ』のあるゲーム

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「んブッ……あんまぁ~い」

 ゲームしながら大人の飲み物とやらをひと口含んだ。その飲み物──ココアに似たものが甘くて仕方ない。

 どう考えても子供向きの飲み物だ。コップは四つ。ボクも含まれてる。

「どうしたのよ?」
「ココア? が甘過ぎ」

 そう言うとタンポポちゃんがひと口飲む。

「ん? こんなもんよ」
「ん、美味しい」
「ちょうど良い」

 幼女ーズがひと口飲んでは感想を言いあう。

「ボクはダメ。他の……」

 部屋を見回しすみっこの冷蔵庫を見つけて、そこへ向かう。

「ちょっと~」
「別の飲み物を取ってくる」

 タンポポが離席りせきとがめるけど、ベッドから冷蔵庫へ。

 冷蔵庫に茶色い液体が入ったペットボトルがあった。麦茶だと思ってそれを取るとベッドに戻る。

「キョウの番」

 ベッドに座り直すとマナちゃんがカードをかか催促さいそくする。

「はい、これね」

 マナちゃんのカードを取ってタンポポちゃんに手札を向ける。

 そうして五じゅんほどすると態勢は決した。

 タンポポちゃんが勝ち、マナちゃんが負け。

 しばらくゲームを続けると皆パンツ一丁になった

「そろそろ終わりにしようか?」
「まだまだ、これからよ」
「そうそう」
「夜は長い」

「ボク、眠くなってきた。もう寝ようよ?」
「じゃ、じゃあ、あと一回だけしましょ」
「もう一回」
「それがいい」

「ふぅ、じゃあ次で終わり」
「キョウ、シャッフルして配って」
「分かった」

 ボクはシャッフルする。タンポポちゃんが直前に勝ったのでアリサちゃんから配って手配を見る。

 手配からペアを捨てていく。

 ゲーム始めは、タンポポちゃんから始めて、マナちゃんが勝ってボクが負けた。

 ボクが最後に回ると負ける確率が高い気がする。まあ、そう感じるだけだけど。

 今回、ジャックを持ってる。ジャックを取ったり取られたりしなけりゃ勝てるけど……。

「うっ……」

 ボクは小さくうめく。四巡目くらいにマナちゃんからババをもらった。

 ゲーム中にババを引いたのは初めてだ。カードをタンポポちゃんに向けるとブタカードを抜かれてホッとする。

 いや、ババを取ってくれても良かったけど。

「まだ、ジャックがペアにならないね?」
「そ、そうね」
「まだね」
「…………」

 皆の反応に少し違和感を覚えたので、手配の様子を観察した。順調に手配を少なくしている。

 回っていくカードは同じカードが回っている。もうジャックが捨てられていいはずなのにペアにならない。

 いくらなんでもおかしいと思ってると……。

 ボクのジャック、ジョーカー、ブタの三枚からブタを引いたタンポポちゃんからペアが捨てられ二枚になる。

「勝った」

 タンポポちゃんから一枚取ったアリサちゃんがペアを捨てて、手札が一枚になって勝利宣言。手札のジャックを見せる。

 一枚になったタンポポちゃんは無言、手札はブタだ。あとは消化試合、ボクがマナちゃんの二枚から一枚取る。

「勝った」
「は?」

 思わず声がでた。マナちゃんも勝利宣言してジャックを見せる。

「キョウ、カード」

 呆然ぼうぜんとするボクから、タンポポちゃんがジャックを引いていく。

「まさか……」
「ハイ、どっち?」

 ボクとタンポポちゃんの一騎打ちになった。タンポポちゃんが二枚のカードを突きつけてくる。

 ゴクリと唾を飲む。カードを置いてペットボトルからひと口飲む。

 麦茶と思ったけど、なんか違うんだよな~。まあ、それはいい。

 ブタを引いたらジャックがタンポポちゃんの手札に残ってボクが負け。

 ジャックを取り戻してもボクは捨てカードが無くてゲーム継続。

 次に、タンポポちゃんがブタを引いてペアを作り手札が無くなったらボクが引くカードが無くなってゲームオーバーだろう。

 手許にジャックがあったとしても。まあジョーカーも持ってるけど。

 ボクはジャックを引いてジョーカーを引かせるしかない。

「早く!」

 タンポポちゃんが催促さいそくする。

 待てよ。ジョーカーを引かせてブタを引きよせるなんて出来るか?

「えい!」
「はい、キョウの負け」
「うぐっ……」

 意を決して引いたカードはブタだった。ハートの8とクラブの8を場に捨てると、後ろにひっくり返る。

「みんな、何をキョウに命令する?」
「ちょっと待って。最初に勝ったアリサちゃんだけだよ、命令できるの」
「勝ちは一人と誰が言った?」

「──えっ?」

 確かに勝ちが一人とは聞いてないけどさ~。勝利者が三人ってひどくない?

 だってパンツ一丁から、三つの命令も聞けと?

「──三つも命令、聞けないよ?」

 抗議こうぎするボクに三人はジャックを突きつけてくる。

「分かった。何すればいい?」

 ちなみに暗くしないとパンツ脱がないと宣言する。

「何よ。お風呂で裸になったじゃない」
「お風呂と部屋じゃ違うの」
「もう、妻は口答えしない。私も全部脱ぐから、それでいいでしょ?」
「脱ぐ」
「私もゼンラでいい」

「いや、ボクの意見は?」
「意見が通ると思う?」
「……思う?」
「ほらほら」

 みんなが持ってるジャックを振ってボクの目の前で見せつける。

「分かった。脱ぐのはいいけど、二つめ、三つめの命令は?」
「……どうする?」
「ん~?」
「何する?」

 考えてなかったのかよ!

 ボクはベッドの上の片付けをしてみんなを見守る。

「お休みのキスとか、どう?」
「う~、やる」
「すごい! それがいい」

 なんか決まったようだけど不安だ……。

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