【悲報】みんながボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~

ペロりねった

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2.5◇古都へ

64.モールからの脱出!

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「こちらです──」

 気更来きさらぎさんの案内で次は洋装店へ移動する。

「こんにちは。蒼屋あおやキョウです。──」

 洋装店に入るとまず、定型の挨拶あいさつで話を始める。店の人も分かったものでドレスを数着すぐに用意してくれた。

 姿見で体に当ててすぐ決める。花が一輪咲いている程度で、デザインはシックに抑えられたものがそろっている。

 一着はイヴニングを選び三着を決済し、すぐに梱包こんぽうしてもらう。

「はあ、これではじはかかないかな? あと……履物はきものとかバッグとか──」
「こちらです」

 気更来きさらぎさん、優秀。すぐ不足をさっして案内してくれる。

 ボクは、ものを見るなり即決して買っていく。荷物は護衛の歩鳥ほとりさんや斎木さいきさんにあずかってもらう。

 護衛なのに荷物持ちにしてゴメンね。

 草履ぞうりは歩きにくいので、ローファーのままで移動していく。

「よし! これで良いと思う?」

 気更来きさらぎさん、歩鳥ほとりさん、斎木さいきさんにく。皆、うなずいてくれるので撤収てっしゅうする。

気更来きさらぎさん、羽衣はごろもさんを呼び戻して、車に戻りましょう」
「了解。ウイ、聞こえるか?──」

 気更来きさらぎさんが羽衣さんに連絡してくれる。

「こちらです──」

 連絡をつけて気更来きさらぎさんが先導していく。ボクがそのあとを、護衛ふたりが荷物を抱えて続く。

 喧騒けんそうけ、お客さんをって小走りにエレベーターに向かう。

 さすがに人が増えてエスカレーターは危険が増したらしい。

 まだ危険じゃない気はするけど、そこは専門家に任せる。

「羽衣が来ます」
「な、何、あれ?」

 エレベーターにたどり着いたところに、群衆ぐんしゅうを引き連れたような羽衣さんがけてくる。

 ボクたちはエレベーターのドアが閉じないようにしながらそれを待つ。

 羽衣さんがすべり込んで乗るとエレベーターのドアを閉める。

 ゆっくり、動き出してエレベーターは下りていく。

 すんでのところで暴女たちを振りきった。

「ふぅ~。こっわ!」

 羽衣さんの後ろには目を血走らせて追いかけてくる女たちがいた。

 あちこち黒服がやぶれかけた羽衣さんが息を切らして座り込んでいる。

 お疲れ様、と思いつつ頭のショーツに手を伸ばすと気づいた彼女にガウってえられた。

 ほんに犬になっとりおす。

「ボクのキャミソールは……」

 聴いてみると、逃げ回る内、紛失ふんしつしてしまったらしい。苦悶くもんの表情で答えてくれる。


「まだこれからです。一階は死霊しりょう巣窟そうくつとなっている可能性が……」

 気更来きさらぎさんが殊更ことさらに危機感をあおってくる。

「ま、まあ、それは可能性でにおいをき散らしてないから大丈夫な気が──」
「甘い! 甘すぎますよ。『おとこ』って一言あがると四方しほうから囲まれるかも知れませんよ」
「そ、そう?……」

 そうかなあ~? 気更来きさらぎさんの話は話半分に聞いておこう。

 そう話しつつ背後から羽衣さんの持つショーツをつかむがかかえ込んで放さない。

「一同、生きて帰るぞ!」
「「おう!」」
「……ぉぅ」

 気更来きさらぎさんの気合いに歩鳥さんと斎木さんが合わせるが、羽衣さんはまだ息が整わず力なく返す。

 しかし、生きてって、それほど?

 そして、ゆるゆるとエレベーターのドアがく。

 ドアの外は一見、平静なショッピングモールで、そこにいるのはただの買い物客たちだ。

 外へ、出口へ向かって小走りに行く。

 気更来きさらぎ、ボク、歩鳥、斎木、そして羽衣が続く。

 ボクたちの姿が場にそぐわなくて、ほうけて見ていた客たちが、徐々じょじょに異様さに気づき連れの人と顔見合せたりいぶかしげに見て判断を迷っている。

「何、撮影さつえい?」
えらい人……か」
「和服って……もしかして」
「あれ、男性警護士……なんじゃ?」
「おとこ……」
「──男」
「男がいるぞ!」
「うそ、男? どこ?!」
「どこよ? おとこ~!」

 気更来きさらぎさんのいう通り、男と判断されると一気に騒然そうぜんとなる。

「もうバレた。我々で進路確保に先行する。後方、キョウ様に近付けるな! 羽衣、行くぞ!」
「「おう!」」
「ウイ!」

 羽衣さんの「ウイ」ってしゃれか? そんな突っ込みしつつボクたちは、小走りして駆け出す気更来きさらぎさんのあとを追う。

 歩鳥さんと斎木さんは電撃警棒をかかげて周りを威圧いあつしている。

 それを見て男が居ると確信した女たちが遠巻きに囲んでくる。

「荷物をこっちに!」

 護衛たちの荷物を少し受け持つ。

 二人のすきねらって暴女が突っ込んでくる。

 それを警棒でぐ二人。

 いたすきにまたタックルをかけてくる女。

 まだ個々人的で散発する程度だけど面で来られるとマズいな。

 もう少しで出口のところに前へ回り込んでくる女が数名いる。

 両脇りょうわきの二人が間に合わなそう。

「これはやりたくなかったのに……」

 ボクは、注意をらすようふところかたまりを投げつける。

 それに気を取られた女を斎木さんがいでクリア。

 ボクはもう一つの塊を反対方向に投げて反対側の女の気をぐ。それはボクが履いていたタイツを丸めたもの。

 前方がいて、そこへ突っ込んでいくボクたち。

 出口のこちらにじん取る気更来きさらぎさんの脇を抜け外へ。

 外側は羽衣さんが出口に人をせ付けなくしていた。

「羽衣、ゴー」
「おう!」

 ボクたちを追い抜いた気更来さんが羽衣さんに声をかけてつゆ払いに駆けていく。

 後ろの出口から「おとこ~!」とさけびながら女たちが殺到さっとうしてくる。

 それほど出入口は大きくないので、その追従ついじゅうこわくない。

 危機はだっしたようだけど黒リムジンの前に数人の女たちが……。

 まさかとは思うけど、パジャマの匂いに釣られた?

「下がって。下がらないと実力者行使します!」
「田中! すぐ出る。準備できてる?」
「できてます!」

 気更来さんが女たちを威嚇いかく、羽衣さんがドライバーに声をかける。

 少し開けた窓からドライバーが答える声がする。

 車はすぐ発進できるようだ。

「お早く!」

 ボクたちはリムジンのいたドアへすべり込んだ。

「発車!」
「了解!」

 エンジンがうなりを上げて発車する。タイヤはスキール音をあげる。

 そうして、モールからボクたちは生還せいかん? した。

 ふう~、疲れた……。
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