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2.5◇古都へ
62.なぜに脱ぐ?
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「はあ~、着いてしまったか~」
山への登り坂を上がって外回りから駐車場に入っていくと、盛大にため息をつく気更来さん。
併設された立体駐車場ではなく、屋外駐車場に入り、モール出入口の近くに車を駐める。
「その覚悟、魅せて──見せてもらいましょうか? キョウ様」
「そんな大袈裟な」
「脱いでください」
いま脱げと聞こえた、聞き間違い?
「……はい?」
「脱いでください、その情欲を煽るものを!」
と言ってボクのピンクパジャマを指さす。
やっぱり脱げと言ったみたい。
「脱ぐ必要性、あります?」
情欲とは穏やかじゃないな。なら、今まで周りを煽情してきたとでも?
「あります! それを見てると、こう……ムラムラするのですよ。モールは暴女の巣と化している可能性があります」
その為にはパジャマ、そのピンク色が駄目なのだと力説する。
やっぱ、グールってのは虚言だったのか。こっちの女性は怖いのかな?
「分かりました。脱ぐ必要があるんですね?」
また大袈裟な~、本当かな~? とは思いつつも前席の二人の目を見るととても真剣な顔で気更来さんと羽衣さんが頷いた。
「では、脱ぎます」
決意を込めてそう言うと皆、他所を向いてくれる。前をはだけ、腕を抜き、ズボンを脱ぎ肌着のみとなった。
「はあ~はあ~、強烈ですね~」
「そうだな……」
喜多村家の護衛が呼吸を荒くしながら話す
もしかして……臭う、とか?
一晩、お風呂入ってないしなあ~。かなりの強行軍で汗もかいている。
そう言えば、病室でマキナと香具羅メイに挟まれて寝汗かいてる。
臭っても不思議じゃない。そう思い自分の腋の匂いを嗅ぐ……。
ちょっと臭うか……な? まあ、自分じゃ分からない。
護衛の歩鳥さんと斎木さんは平気みたいなんだけど。
「ぬげました……」
そう宣言すると歩鳥さん顔を背けたまま脱いだ自分のジャケットを渡してくれる。
礼を言って、ボクは受け取り羽織る。うん、そっちはそっちで女の匂いにまみれてる。
「もう見ても良いですよ?」
「キョウ様、やはり、はあ~、やめませんか? はあ~」
「匂いが……凄い……です」といいながら車のドアを開けて外に出る羽衣さん。
「ええ~っ、そんなに臭い? ボク」
あんまりだわ、それ。ボクってそんなに臭う? 臭い? ショック!
両隣の二人はそうでもないけど、喜多村家の護衛は酔ったように顔を赤らめ虚ろになっている。
「どこかでシャワー、浴びた方がいい?」
「そんな場所、ありませんよ」
「皆、緊急警護態勢で行く。私と羽衣が前、歩鳥と斎木は後方を頼む。──」
一呼吸ためて見回したのち、気更来さんは「行くぞ!」と気合いの声を上げる。
「「「おう!」」」
残る三人は声を合わせて合意した。
歩鳥さん、斎木さんが背後から警棒を取り出し握る。
そんな、気合い入れるほど?
降車すると、警棒を伸ばすシュッカチッと音がする。
前の二人も一緒で警棒を取ると伸ばし、手元のスイッチを入れバチバチと音をさせる。
四方を護られながら、ボクは駐車場から店内へ。
心なしか、皆さんふらふらして足許が覚束ない。
周りに目を配りながら歩道を急ぐ。開店直後くらいだろう、人は疎らだ。
店内へ向かう人はボクたちを見るとギョっとして凝視してくる。
四人が臨戦|態勢で護っている。そのボクはぶかぶかのジャケットを羽織っただけだから。
服の下に伸びる脚はタイツを履いてるだけだった。
脚を出すのは間違いじゃ? これこそ煽情的じゃない?
注目されて然るべし。
店内に入って警戒しつつ足早にエスカレーターへ。二階に上がり服飾エリアへ移動する。
「先に肌着が欲しいな」
気更来さんに希望を言う。まず下着の替えを確保しないと。
「くっ……了解。奥だ」
他、三人頷くと服飾エリアを突っ切って奥のランジェリー・コーナーへ急ぐ。
そこそこいるすれ違う人々に警戒しながら進む。
「こちらです。店員は……」
特に問題なく肌着のところに辿り着いた。全然、平気で危険なんてない。
でも開店直後でランジェリー辺りには店員さんはいない。朝の整頓や陳列なんかをしているのかな?
「これと……これ。あ、これも良いな……」
買い物カゴを見つけて抱えると見つけた肌着をカゴに入れていく。
気づけばなんだか、周りから徐々に人が集まってきた。
「キョウ様、グールが匂いを嗅ぎ付けてきました」
なんですと? 周りを見ても普通に女性がいるだけ……でもなかった。
匂いを嗅ぐ仕草でふらふら歩きよって来るようだ。
「そんなにボクって臭いんだ……」
そんな人たちの包囲網が狭まってくる。
ちょっと拙いかも?
「気更来さん、大丈夫そう?」
「まだ大丈夫です。肌着をかき集めたら移動します。お早く」
ボクは頷いて、ラックから取る手を早めた。
山への登り坂を上がって外回りから駐車場に入っていくと、盛大にため息をつく気更来さん。
併設された立体駐車場ではなく、屋外駐車場に入り、モール出入口の近くに車を駐める。
「その覚悟、魅せて──見せてもらいましょうか? キョウ様」
「そんな大袈裟な」
「脱いでください」
いま脱げと聞こえた、聞き間違い?
「……はい?」
「脱いでください、その情欲を煽るものを!」
と言ってボクのピンクパジャマを指さす。
やっぱり脱げと言ったみたい。
「脱ぐ必要性、あります?」
情欲とは穏やかじゃないな。なら、今まで周りを煽情してきたとでも?
「あります! それを見てると、こう……ムラムラするのですよ。モールは暴女の巣と化している可能性があります」
その為にはパジャマ、そのピンク色が駄目なのだと力説する。
やっぱ、グールってのは虚言だったのか。こっちの女性は怖いのかな?
「分かりました。脱ぐ必要があるんですね?」
また大袈裟な~、本当かな~? とは思いつつも前席の二人の目を見るととても真剣な顔で気更来さんと羽衣さんが頷いた。
「では、脱ぎます」
決意を込めてそう言うと皆、他所を向いてくれる。前をはだけ、腕を抜き、ズボンを脱ぎ肌着のみとなった。
「はあ~はあ~、強烈ですね~」
「そうだな……」
喜多村家の護衛が呼吸を荒くしながら話す
もしかして……臭う、とか?
一晩、お風呂入ってないしなあ~。かなりの強行軍で汗もかいている。
そう言えば、病室でマキナと香具羅メイに挟まれて寝汗かいてる。
臭っても不思議じゃない。そう思い自分の腋の匂いを嗅ぐ……。
ちょっと臭うか……な? まあ、自分じゃ分からない。
護衛の歩鳥さんと斎木さんは平気みたいなんだけど。
「ぬげました……」
そう宣言すると歩鳥さん顔を背けたまま脱いだ自分のジャケットを渡してくれる。
礼を言って、ボクは受け取り羽織る。うん、そっちはそっちで女の匂いにまみれてる。
「もう見ても良いですよ?」
「キョウ様、やはり、はあ~、やめませんか? はあ~」
「匂いが……凄い……です」といいながら車のドアを開けて外に出る羽衣さん。
「ええ~っ、そんなに臭い? ボク」
あんまりだわ、それ。ボクってそんなに臭う? 臭い? ショック!
両隣の二人はそうでもないけど、喜多村家の護衛は酔ったように顔を赤らめ虚ろになっている。
「どこかでシャワー、浴びた方がいい?」
「そんな場所、ありませんよ」
「皆、緊急警護態勢で行く。私と羽衣が前、歩鳥と斎木は後方を頼む。──」
一呼吸ためて見回したのち、気更来さんは「行くぞ!」と気合いの声を上げる。
「「「おう!」」」
残る三人は声を合わせて合意した。
歩鳥さん、斎木さんが背後から警棒を取り出し握る。
そんな、気合い入れるほど?
降車すると、警棒を伸ばすシュッカチッと音がする。
前の二人も一緒で警棒を取ると伸ばし、手元のスイッチを入れバチバチと音をさせる。
四方を護られながら、ボクは駐車場から店内へ。
心なしか、皆さんふらふらして足許が覚束ない。
周りに目を配りながら歩道を急ぐ。開店直後くらいだろう、人は疎らだ。
店内へ向かう人はボクたちを見るとギョっとして凝視してくる。
四人が臨戦|態勢で護っている。そのボクはぶかぶかのジャケットを羽織っただけだから。
服の下に伸びる脚はタイツを履いてるだけだった。
脚を出すのは間違いじゃ? これこそ煽情的じゃない?
注目されて然るべし。
店内に入って警戒しつつ足早にエスカレーターへ。二階に上がり服飾エリアへ移動する。
「先に肌着が欲しいな」
気更来さんに希望を言う。まず下着の替えを確保しないと。
「くっ……了解。奥だ」
他、三人頷くと服飾エリアを突っ切って奥のランジェリー・コーナーへ急ぐ。
そこそこいるすれ違う人々に警戒しながら進む。
「こちらです。店員は……」
特に問題なく肌着のところに辿り着いた。全然、平気で危険なんてない。
でも開店直後でランジェリー辺りには店員さんはいない。朝の整頓や陳列なんかをしているのかな?
「これと……これ。あ、これも良いな……」
買い物カゴを見つけて抱えると見つけた肌着をカゴに入れていく。
気づけばなんだか、周りから徐々に人が集まってきた。
「キョウ様、グールが匂いを嗅ぎ付けてきました」
なんですと? 周りを見ても普通に女性がいるだけ……でもなかった。
匂いを嗅ぐ仕草でふらふら歩きよって来るようだ。
「そんなにボクって臭いんだ……」
そんな人たちの包囲網が狭まってくる。
ちょっと拙いかも?
「気更来さん、大丈夫そう?」
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