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2.5◇古都へ
56.腹痛をかかえて空の旅 *
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本話の後半、◆マーク以降に【性描写】があります。ご注意ください。
マキナとヘリで一路、新浜松へ向かっていた。護衛ふたりも一緒だ。
『綺麗だね……』
『ああ、そうだな……』
『どれくらい新浜松までかかるかな?』
『うん、小一時間くらい、か?』
『そうですね。それくらいで着くと思います』
マキナの答えにパイロットさんも同意する。
眼下はまだ眠った街が横たわっている。人影は無く、走る車はトラックくらいだ。
学校の校庭を飛び立ったあと、紫の空を丘陵沿いに進んでいく。そこから、不二の樹海を飛び新浜松へ行く。
上空に上がると、白みかけてきた地平線がはっきりして、空は青みが増している。
どこを向いても見たことのない景色が広がっている。
地上の構造物や森、山に道路がジオラマや模型のように小さくなって、テレビやWe-tubeで画面越しにしか観たことのない風景だ。
しかも、画面ではなく目視で見ると迫力が違う。おまけに今は実際に空を飛んでいる。
あっと言う間に山の上に移って、ボクたちの乗っているヘリの左斜めには、雄大で美しい不二の山が見えている。
不双の国の名の本になった山だ。頂上にはまだ雪が残り白い化粧をしている。
家からは微かに小さくしか見えなかった山が裾野の森を従えて目の前に鎮座している。
ところが、だ。ゆったりと空の旅を、ってほどは楽しめない。
その景色に水差すようにヘリコプターのエンジン音とローターの風切り音が台無しにしている。
その重低音と振動が地味にお腹に効いている。ヘッドセットをしていてもうるさいので、していない護衛の二人には申し訳ない。
ボクは腹痛がしてきてトイレに行きたくて堪らなくなっている。といっても、用足しじゃない。
周りの景色がどれだけ美しくとも、一瞬たりとも楽しむことができないほど、苦しさを増してきている。
まるで夢の中へ飛び立ちそうな錯覚を感じる。苦しく歪める表情をマキナが覗いてくる。
『大丈夫か?』とマキナが心配そうにお腹を擦って尋ねてくれる。
しかし私は、腹痛のせいで返事したくなくて、ただ頷くしかできない。
お腹を愛撫してくれるマキナの心遣いはありがたいが、正直迷惑。
ヘリの振動にプラスされて擦られているのが、確実にスタミナを削ってくる。
やがて、不二の山の向こう側で、白波が立つように海の果てが白くなり朝日が輝き始めている。
紫から茜色へ徐々に空が染められていく。神々しく神秘的なパノラマが展開されている。
だというのに、ボクは鈍痛に堪え必死で我慢しているしかない。
業を煮やし、マキナの手を両の手で包んで止める。
山地を越えると、海岸が見渡せるようになる。波が、たなびくように積層になって打ち寄せている。
その美しい風景にも心が躍るが、脂汗が噴き出してきてボクは、とうとう我慢できなくなってしまった。
『マキナ、もうダメかも』
『何? どうすれば良い』
『トイレ。多目的がいい。マキナも一緒に』
意味、分かるよね、とマキナに媚びる。声はパイロットさんにも聞かれるので直接的な言葉は使えない。
『君、どこかに緊急着陸だ。妻が拙い』
『アイ・アイ!』
声、でかいんだよ、パイロットさん。
ボクは素晴らしい景色をろくに感動できずに空の旅を終えようとしている。
『まだ持つか? どこか病院にでも……』とマキナはボクを心配そうなまなざしで見つめてくる。
ボクの腹痛は治まるんだ、マキナがいれば。病院に行っても、搾精機が無いとダメだし、まだどこも開いてないだろう。
搾精機のオペレーターが常駐していないだろうし、居ても初めての人にしてもらうのは恥ずかしい。
マキナはパイロットや護衛と手分けして眼下を見回し、緊急避難的に着陸できる場所を探している。
この辺りは津波からの復興途中で、空き地は多いが、多目的トイレを備えた商業施設は少ないようだ。
夜が明けかけた時刻でもあり、人気も少ないのだけれど。近くにあるサービスエリアの駐車場に強引に着陸することにした。
夜明けころであることが幸いして、停まっている車も少なく助かった。
ヘリが降りるまで、私はひたすら我慢を続けたが、ヘリが着地してやっとの思いで降りてからは、マキナに抱えてもらってトイレに急ぐ。
歩く振動が地味に効く。まばらな人がヘリの音に聴いて驚き、着陸してきて驚き、ピンクのパジャマのボクに驚いていた。
「見ないで!」と叫びたいのを我慢する。
トイレを見つけ、そこへ飛び込むとボクは、ほっと一息ついた。
◆
個室の中の入るや否や、マキナに抱きついてその唇に吸い付いた。
マキナの唇をむさぼりつつ、汚れるのも構わずパジャマをずり落とす。
マキナの火が点るのを待つのも、もどかしくそのズボンのベルトに手をかけた……。
リラックスしてマキナと余韻を愉しみ見つめあっていた。
「明るい所は恥ずかしい、ね」
「そうか……お前を良く見られて嬉しかったよ」
「……ばか」
息のかかる距離で睦言を囁き合っていると、まだ収まりの悪い鼻息が互いの肌を撫でて、こそばゆい。
ピンクの頭が鮮明になるまで互いの温もりを感じていたいが気持ちを奮い立たせる。
皆をあまり待たせていても済まないので、身支度を念入りに調えてトイレを出た。
また、空の旅に出発するべく、ヘリコプターへ向かう。
マキナとヘリで一路、新浜松へ向かっていた。護衛ふたりも一緒だ。
『綺麗だね……』
『ああ、そうだな……』
『どれくらい新浜松までかかるかな?』
『うん、小一時間くらい、か?』
『そうですね。それくらいで着くと思います』
マキナの答えにパイロットさんも同意する。
眼下はまだ眠った街が横たわっている。人影は無く、走る車はトラックくらいだ。
学校の校庭を飛び立ったあと、紫の空を丘陵沿いに進んでいく。そこから、不二の樹海を飛び新浜松へ行く。
上空に上がると、白みかけてきた地平線がはっきりして、空は青みが増している。
どこを向いても見たことのない景色が広がっている。
地上の構造物や森、山に道路がジオラマや模型のように小さくなって、テレビやWe-tubeで画面越しにしか観たことのない風景だ。
しかも、画面ではなく目視で見ると迫力が違う。おまけに今は実際に空を飛んでいる。
あっと言う間に山の上に移って、ボクたちの乗っているヘリの左斜めには、雄大で美しい不二の山が見えている。
不双の国の名の本になった山だ。頂上にはまだ雪が残り白い化粧をしている。
家からは微かに小さくしか見えなかった山が裾野の森を従えて目の前に鎮座している。
ところが、だ。ゆったりと空の旅を、ってほどは楽しめない。
その景色に水差すようにヘリコプターのエンジン音とローターの風切り音が台無しにしている。
その重低音と振動が地味にお腹に効いている。ヘッドセットをしていてもうるさいので、していない護衛の二人には申し訳ない。
ボクは腹痛がしてきてトイレに行きたくて堪らなくなっている。といっても、用足しじゃない。
周りの景色がどれだけ美しくとも、一瞬たりとも楽しむことができないほど、苦しさを増してきている。
まるで夢の中へ飛び立ちそうな錯覚を感じる。苦しく歪める表情をマキナが覗いてくる。
『大丈夫か?』とマキナが心配そうにお腹を擦って尋ねてくれる。
しかし私は、腹痛のせいで返事したくなくて、ただ頷くしかできない。
お腹を愛撫してくれるマキナの心遣いはありがたいが、正直迷惑。
ヘリの振動にプラスされて擦られているのが、確実にスタミナを削ってくる。
やがて、不二の山の向こう側で、白波が立つように海の果てが白くなり朝日が輝き始めている。
紫から茜色へ徐々に空が染められていく。神々しく神秘的なパノラマが展開されている。
だというのに、ボクは鈍痛に堪え必死で我慢しているしかない。
業を煮やし、マキナの手を両の手で包んで止める。
山地を越えると、海岸が見渡せるようになる。波が、たなびくように積層になって打ち寄せている。
その美しい風景にも心が躍るが、脂汗が噴き出してきてボクは、とうとう我慢できなくなってしまった。
『マキナ、もうダメかも』
『何? どうすれば良い』
『トイレ。多目的がいい。マキナも一緒に』
意味、分かるよね、とマキナに媚びる。声はパイロットさんにも聞かれるので直接的な言葉は使えない。
『君、どこかに緊急着陸だ。妻が拙い』
『アイ・アイ!』
声、でかいんだよ、パイロットさん。
ボクは素晴らしい景色をろくに感動できずに空の旅を終えようとしている。
『まだ持つか? どこか病院にでも……』とマキナはボクを心配そうなまなざしで見つめてくる。
ボクの腹痛は治まるんだ、マキナがいれば。病院に行っても、搾精機が無いとダメだし、まだどこも開いてないだろう。
搾精機のオペレーターが常駐していないだろうし、居ても初めての人にしてもらうのは恥ずかしい。
マキナはパイロットや護衛と手分けして眼下を見回し、緊急避難的に着陸できる場所を探している。
この辺りは津波からの復興途中で、空き地は多いが、多目的トイレを備えた商業施設は少ないようだ。
夜が明けかけた時刻でもあり、人気も少ないのだけれど。近くにあるサービスエリアの駐車場に強引に着陸することにした。
夜明けころであることが幸いして、停まっている車も少なく助かった。
ヘリが降りるまで、私はひたすら我慢を続けたが、ヘリが着地してやっとの思いで降りてからは、マキナに抱えてもらってトイレに急ぐ。
歩く振動が地味に効く。まばらな人がヘリの音に聴いて驚き、着陸してきて驚き、ピンクのパジャマのボクに驚いていた。
「見ないで!」と叫びたいのを我慢する。
トイレを見つけ、そこへ飛び込むとボクは、ほっと一息ついた。
◆
個室の中の入るや否や、マキナに抱きついてその唇に吸い付いた。
マキナの唇をむさぼりつつ、汚れるのも構わずパジャマをずり落とす。
マキナの火が点るのを待つのも、もどかしくそのズボンのベルトに手をかけた……。
リラックスしてマキナと余韻を愉しみ見つめあっていた。
「明るい所は恥ずかしい、ね」
「そうか……お前を良く見られて嬉しかったよ」
「……ばか」
息のかかる距離で睦言を囁き合っていると、まだ収まりの悪い鼻息が互いの肌を撫でて、こそばゆい。
ピンクの頭が鮮明になるまで互いの温もりを感じていたいが気持ちを奮い立たせる。
皆をあまり待たせていても済まないので、身支度を念入りに調えてトイレを出た。
また、空の旅に出発するべく、ヘリコプターへ向かう。
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