上 下
52 / 203
2.新居からの新生活

52.忍びの者、登場?

しおりを挟む
 薄暗い病室をうかがうが……特に変でもない。

 気持ち悪くなって、窓の方へ歩いていく。

 カーテンをめくって、格子がまり転落防止処置しょちされた窓から夜景を見る。

 夜空に少し太った半月が浮かんでいる。

「なんか、さびしい」

 もう、寝よう、か? でも、目がえてしまったな。

 二度寝できるかなと、思ったら廊下ろうかから物音が聴こえた……。

 それに耳をませて聴いてみる。確かに聴こえる。

 でも、かなり遠くだ。静かに歩いてドアに近づき耳を澄ませる。

 う~ん、確かに遠くから争うような音が聴こえるな?

「なんだろう……」

 好奇心に負け、ドアを開けて外、廊下に出て様子をうかがう。

 それは、言い争うような声まで聴こえる

 少し怖くなってドアを閉めマキナの元へ。

「マキナ、マキナ……」

 マキナは、変わらず眠っていた。

「……ん?……何」と寝ているのを起こされ不機嫌ふきげんに答える。

「下の方で物音が……。下で争ってるみたい」
「また、入院患者が守衛しゅえいとでもめてるんじゃないか?」
「そう……かな」
「もう、寝ろ」

 釈然しゃくぜんとしないまま、ベッドに戻ろうとすると、にわかにヒタヒタと足音が近づいてくる。

「マキナ、だれかくるよ」
巡回じゅんかいだろ? もう寝ろよ」
「でも……」

 違うんだ。足音は一つじゃない。ボクは、身動みじろぎせず、その音に耳を澄ませる。

 ヒタヒタと、確実にこちらに向かって来ていた。しかし、それはまよいながら進んでいる。

 まるで、何かを探すように。複数、二つ以上の音がする。

 また、ドアに近づいて扉に耳を当てて聴いてみる。

 息を殺して足音の行方を探る。

 それは、まよったあげくドアの前に止まった。

「失礼します」

 ドアに当てた耳ごと扉の動きに引きられボクはたおれた。

「や、申し訳ありません。マキナ様は?」

 マキナ? マキナの知り合い、なの?

 その人は真っ黒な服で……まあ端的たんてきに言えばくノいちだ。後ろにももう一人、ひかえている。

 何でくノ一が、って考える前に。

貴女あなたは? マキナは寝ています。御用は何ですか」

至急しきゅう、起こしてください。ぞくです。ここから避難ひなんします」

 意味がわかんないけど、まあマキナを起こそう。

「マキナ、危険がヤバいって、じゃなくて。賊が来てるって」
「はあ? 何の冗談だ」
「冗談じゃないっぽいよ?」

「あの人が……」って、名前が分からないので、彼女の方を見てマキナをうながす。

「申し訳ありません。名前は、明かせません。草とでもかげとでも、お呼びください」
「じゃあ、影さん。マキナに説明を」

 怪しさマックスだけど、彼女はドアの側から部屋の中には入って来ない。

 敵ではないようだし、まだ信用できないけど、直ちに危害を加えられない程度には信じられそうだ。

「喜多村の暗部か……」
「その通りです。私たちは、キョウ様をおまもりしていました」
「ほう?」
「少しお耳を……」

 諦めて、マキナはベッドから脱け出し彼女の本へ。

 なんだ、マキナも汗かいて肌着がれてるじゃん。

 よく我慢がまんしてたな。

「…………」
「……アンナ……うむ……か」

 あれ、アンナって言った? 気のせい?

 まあ、深刻な話の割りに肌着姿のマキナと黒装束のくノ一で、なんか笑える。

緊急きんきゅう事態じたいだそうだ。キョウ、逃げるぞ」
「逃げるって、どこに?」
「……来ました」

 後ろのくノ一がささやく。来たって、賊?

避難ひなんばしごでは、安全確保ができません。窓から脱出しましょう」
「うぬ……仕方ないか……」

 ちょっとちょっと、不穏ふおんな言葉が出ましたけど?

「窓? って、あの窓? 鉄格子ごうしの、あの?」

 ボクは、月明かりがうつったカーテンの方を指さした。

「まあ、そうだな……」
「お早く。ドアにベッドでバリケードをします」

 言ってる間に部屋へ入って来た黒ずくめの二人がベッドに取り付いた。

 急に来るから、身構みがまえてしまったよ。

「あ!……」そこにはメイが、まだ寝てる。

 そんな事はおかまい無しに、移動のローラーのロックを外すとベッドをドアにぶち当てる。

 当然、寝ていたメイは振り落とされ、したたか床に体を打った。

「な、何⁈ 地震?」
「違う! メイ、出番だよ。服着て、戦闘せんとう態勢たいせい!」
「お? おう!」

 寝ぼけまなこのメイは、即座そくざにジャック・ジュリアに変身した!

 さあ、ジャクジュリ(仮)、活躍を望むぞ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

入社した会社でぼくがあたしになる話

青春
父の残した借金返済のためがむしゃらに就活をした結果入社した会社で主人公[山名ユウ]が徐々に変わっていく物語

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

お兄ちゃんは今日からいもうと!

沼米 さくら
ライト文芸
 大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。  親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。  トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。  身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。  果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。  強制女児女装万歳。  毎週木曜と日曜更新です。

転職してOLになった僕。

大衆娯楽
転職した会社で無理矢理女装させられてる男の子の話しです。 強制女装、恥辱、女性からの責めが好きな方にオススメです!

トリビアのイズミ 「小学6年生の男児は、女児用のパンツをはくと100%勃起する」

九拾七
大衆娯楽
かつての人気テレビ番組をオマージュしたものです。 現代ではありえない倫理観なのでご注意を。

カジュアルセックスチェンジ

フロイライン
恋愛
一流企業に勤める吉岡智は、ふとした事からニューハーフとして生きることとなり、順風満帆だった人生が大幅に狂い出す。

歩みだした男の娘

かきこき太郎
ライト文芸
男子大学生の君島海人は日々悩んでいた。変わりたい一心で上京してきたにもかかわらず、変わらない生活を送り続けていた。そんなある日、とある動画サイトで見た動画で彼の心に触れるものが生まれる。 それは、女装だった。男である自分が女性のふりをすることに変化ができるとかすかに希望を感じていた。 女装を続けある日、外出女装に出てみた深夜、一人の女子高生と出会う。彼女との出会いは運命なのか、まだわからないが彼女は女装をする人が大好物なのであった。

処理中です...