43 / 203
2.新居からの新生活
43.病室はヒロイン栄華の夢のあと
しおりを挟む
目が覚めるとベッドの上にいた。
目の前には無影灯の眩しい光。訳が分からない。
「あら、目が覚めちゃった?」
覗き込む白衣にマスク姿の女性。眩しい逆光で眩惑され、よく見えない。
「ここ……は?」
影になってよく分からないが、目元は見慣れた感じの人だ。
起き上がろうとして腕が拘束されているのに気づいた。頭を上げて見ると足も拘束されている。
身体には検査衣をまとっているものの、前がはだけられてボクの全てが曝されている。
さっきまで夢で見ていた『ウィメン・イン・ブラック』の1シーンみたいだ。
悪い予感しかしない。
「誰? ボクに何してるの?」
「単なる検査だよ」
「ゴメンね」と言って白衣の女は、ボクの体調を調べていたと言う。
マジ、映画だ! と驚いて完全に頭が覚醒した。
「どうして拘束?」
「勿論、暴れないように……」
「検査ですよね? イヤな事されなければ暴れませんよ」
もうイヤな事されてるしね。今すぐ逃げ出したい。
グローブを嵌めた彼女の手がボクの股間に伸びてきて……。
「やめて! 赤井さん! マキナ!」
思い切り叫んで、赤井さんやマキナを呼び、拘束を外そうと四肢を動かし暴れた。
例え、それが無理だとしても……。
「もう、仕方ない」
そう言い女は手を止め、カートの上にある注射銃を取るとボクの腕に当てて射った。
ボクはすぐに意識がなくなり……マキナ~!
「マキナ……」
気づくと病室にいた。
かなり豪華な個室だ。傍らにマキナの姿が見えた。ベッドの横に座っている。
はあ~、よかった。その気遣う表情を見てボクは安堵した。
また、悪い夢を見ていたようだ。
「どうして? マキナは、なぜ居るの?」
「お前が倒れたから──って聴いて病院に搬送させたんだ」
なんだか苦々しげに目を伏せマキナが言う。
「そうですか。赤井さんは……。母は?」
「ああ……赤井は、仕事を終わらせて帰した。つい先ほどまで付き添っていたんだが……。君の母さんは──」
報せたが、忙しいそうで……と、申し訳なさそうに顔を背けてしまう。
母は、やっぱり変、らしい。マキナの歯切れの悪さから良く分かる。
もうその現実に向き合う覚悟をしないといけないのかも知れない。
「……やっぱり、そうですか」
半ば感じていた不調和が現実になった瞬間だ。
「知っているのか」とマキナが聴くのでボクの予想を話す。
ほぼ、その通りだろう、とマキナが肯定してしまう。
家に行って見たと言うマキナの話を聞く。
早めに退社したあと、車を走らせ見に行ってくれたらしい。それによれば、実家は空き家になり「売家」になっていたと。
あまりに早いその転身に呆気に取られる。婚姻して三日だよ?
マキナは、身辺調査に隠された秘密がかなり有った、と自責する。
母は、いわゆる「ホスト狂い」ではないかと。
新しい遺伝子を求めて男に貢いで散財しているのではないか、と結論したと言う。
姉にも母の様子を聴いたが、母には「連絡つけづらい」くらいにしか捉えていなくて、見聞きした証拠を報せるのを躊躇っているよう。
「蒼屋から喜多村に名を変えるか?」
唐突にマキナが聴いてくる。少し考えたあと、ボクはまだ蒼屋でいる、と断る。
将来は分からないけど、婦夫別姓が許されているので別に婚家の名を名乗らなくても良い、今はまだ。
囲われ婚だと、否応なく変えさせられるらしいけれど……。マキナは、そこまで求めて来ない。
「せめて、学園を卒業するまでは蒼屋でいます」
「……分かった」
しんみりする中、ドアが開いてあの! エロ医師が入ってくる。
「あっ! エロ改造魔人!」
その姿は、変わらぬ白衣にマスク姿で聴診器を首から下げている。
あれは、夢じゃなかったんだ!
「何よ、それ?」
女医師は抗議して、「それは、なんだ?」とマキナは理解不能の表情をする。
『ウィメン・イン・ブラック』に出てきた悪役だとボクが告げると、「へえぇ~?」っと興味をなくしている。
昔、そんな映画があったな、と回顧する程度だ。シリーズは、4作まで作られたのに。
勧善懲悪のストーリーで、ドタバタの喜劇要素があって、すごく面白い。
「酷い。マキ姉、言ってやって」
「フム、強ち間違ってない、かな?」
顎に手を当て虚空に視線を向けながら納得している。
「ひっど~い」
「で、誰なんです? この、悪辣医師」
「長妹のアヤメだ。お前の二人目の主だな」
ほぉ~うと、長いため息をついてマキナが紹介してくれる。
「──チェンジで!」
即座にダメ出ししてボクはチェンジを要求する。
目の前には無影灯の眩しい光。訳が分からない。
「あら、目が覚めちゃった?」
覗き込む白衣にマスク姿の女性。眩しい逆光で眩惑され、よく見えない。
「ここ……は?」
影になってよく分からないが、目元は見慣れた感じの人だ。
起き上がろうとして腕が拘束されているのに気づいた。頭を上げて見ると足も拘束されている。
身体には検査衣をまとっているものの、前がはだけられてボクの全てが曝されている。
さっきまで夢で見ていた『ウィメン・イン・ブラック』の1シーンみたいだ。
悪い予感しかしない。
「誰? ボクに何してるの?」
「単なる検査だよ」
「ゴメンね」と言って白衣の女は、ボクの体調を調べていたと言う。
マジ、映画だ! と驚いて完全に頭が覚醒した。
「どうして拘束?」
「勿論、暴れないように……」
「検査ですよね? イヤな事されなければ暴れませんよ」
もうイヤな事されてるしね。今すぐ逃げ出したい。
グローブを嵌めた彼女の手がボクの股間に伸びてきて……。
「やめて! 赤井さん! マキナ!」
思い切り叫んで、赤井さんやマキナを呼び、拘束を外そうと四肢を動かし暴れた。
例え、それが無理だとしても……。
「もう、仕方ない」
そう言い女は手を止め、カートの上にある注射銃を取るとボクの腕に当てて射った。
ボクはすぐに意識がなくなり……マキナ~!
「マキナ……」
気づくと病室にいた。
かなり豪華な個室だ。傍らにマキナの姿が見えた。ベッドの横に座っている。
はあ~、よかった。その気遣う表情を見てボクは安堵した。
また、悪い夢を見ていたようだ。
「どうして? マキナは、なぜ居るの?」
「お前が倒れたから──って聴いて病院に搬送させたんだ」
なんだか苦々しげに目を伏せマキナが言う。
「そうですか。赤井さんは……。母は?」
「ああ……赤井は、仕事を終わらせて帰した。つい先ほどまで付き添っていたんだが……。君の母さんは──」
報せたが、忙しいそうで……と、申し訳なさそうに顔を背けてしまう。
母は、やっぱり変、らしい。マキナの歯切れの悪さから良く分かる。
もうその現実に向き合う覚悟をしないといけないのかも知れない。
「……やっぱり、そうですか」
半ば感じていた不調和が現実になった瞬間だ。
「知っているのか」とマキナが聴くのでボクの予想を話す。
ほぼ、その通りだろう、とマキナが肯定してしまう。
家に行って見たと言うマキナの話を聞く。
早めに退社したあと、車を走らせ見に行ってくれたらしい。それによれば、実家は空き家になり「売家」になっていたと。
あまりに早いその転身に呆気に取られる。婚姻して三日だよ?
マキナは、身辺調査に隠された秘密がかなり有った、と自責する。
母は、いわゆる「ホスト狂い」ではないかと。
新しい遺伝子を求めて男に貢いで散財しているのではないか、と結論したと言う。
姉にも母の様子を聴いたが、母には「連絡つけづらい」くらいにしか捉えていなくて、見聞きした証拠を報せるのを躊躇っているよう。
「蒼屋から喜多村に名を変えるか?」
唐突にマキナが聴いてくる。少し考えたあと、ボクはまだ蒼屋でいる、と断る。
将来は分からないけど、婦夫別姓が許されているので別に婚家の名を名乗らなくても良い、今はまだ。
囲われ婚だと、否応なく変えさせられるらしいけれど……。マキナは、そこまで求めて来ない。
「せめて、学園を卒業するまでは蒼屋でいます」
「……分かった」
しんみりする中、ドアが開いてあの! エロ医師が入ってくる。
「あっ! エロ改造魔人!」
その姿は、変わらぬ白衣にマスク姿で聴診器を首から下げている。
あれは、夢じゃなかったんだ!
「何よ、それ?」
女医師は抗議して、「それは、なんだ?」とマキナは理解不能の表情をする。
『ウィメン・イン・ブラック』に出てきた悪役だとボクが告げると、「へえぇ~?」っと興味をなくしている。
昔、そんな映画があったな、と回顧する程度だ。シリーズは、4作まで作られたのに。
勧善懲悪のストーリーで、ドタバタの喜劇要素があって、すごく面白い。
「酷い。マキ姉、言ってやって」
「フム、強ち間違ってない、かな?」
顎に手を当て虚空に視線を向けながら納得している。
「ひっど~い」
「で、誰なんです? この、悪辣医師」
「長妹のアヤメだ。お前の二人目の主だな」
ほぉ~うと、長いため息をついてマキナが紹介してくれる。
「──チェンジで!」
即座にダメ出ししてボクはチェンジを要求する。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる