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2.新居からの新生活

33.いつもの朝、のはずだった……

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「おはようございます、赤井さん。手伝います」

「おはようございます、キョウさん」

 今日こそは、お弁当を作るんだと、朝食の準備に加わる。


「朝ご飯ですよ」

 マキナを起こして、朝食にする。

 今日は、とりささ身のバターソテーに即席コーンスープ、生野菜のサラダだ。

 ちぎったレタス、斜め切りのセロリ、千切りのキャベツなどを盛り、ミニトマトと半分に切ったいちごえる。ドレッシングはお好みで。

 皮をいだ胸肉を一口サイズに切り、フライパンにバターを一切れ温めかし、胸肉を入れるとアルミホイルの落としブタをして弱火でむし焼きにする。

 げない頃合いに鶏肉をひっくり返し、溶けたバターと鶏のあぶらをかけて、また落としブタをする。

 うら表に焼き目が付いたら、赤ワインを少しそそぎフランベ、火を止め煮詰につまったタレを肉に流しかけて、皿に取る。

 残った汁に皮をいて火を着け、汁をかけながらカリっとげるように焼く。

 皿に取った胸肉に皮をえて汁をかざりかけする。

 スープカップにインスタントのコーンスープを入れてお湯を注いで完成。

 マキナと朝食を食べている内に、赤井さんはお弁当の調理に入って、卵焼きやソーセージを焼いている……。

 今日も手伝えそうにない。

 朝食を食べるとお弁当をもらい、マキナに送ってもらって登校する。昨日と同じだよ。

「行ってらっしゃい」のキスに応えて送り出すのもお約束に。

 昇降しょうこう口でミナちゃんとタマちゃんと合流して教室に向かった。車でも確認かくにんたけど携帯端末に母から返信がない。

「あの車の人が、旦那だんなさん?」

「うん、うん」とミナちゃんの質問にタマちゃんもすなずき、その問いに賛意を示す。

 見られたか。同時刻に登校すれば目にまるよね。

「そ、そうだよ。……見てた?」

「見てた。お熱いことで」

 タマちゃんもミナちゃんに同意してうなずく。

 そこまで見られたか……。立ち直れないかも。

「誰にもしゃべっちゃダメだよ?」

「喋らないけど、ムダだと思う……」

「ムダ」とタマちゃんまで言う。

 二人に言われると地味にこたえる。

「今日は部活がないし、暇、だよね?」

 ニマついてミナちゃんがいてくる。機嫌きげんがいいとイヤな予想しかできない。

「いや、部活なくても暇じゃないよ?」

「ナンでよ、部活ないんだからヒマに決まってるでしょう」

おくは忙しいの!」

 と言うのはウソだけど。そうでも言わないとミナちゃんの言いなりになりそうだ。

「奥って……家にこもってるだけでしょう? どこかに行くとでも?」

「そうだよ。実家に物を取りに行きたいの」

 誤魔化ごまかすように携帯を確認するが、母の返信はまだない。

「ええっ? まだ荷物の移動がんでないの。役に立たない旦那だな」

「主人を悪く言うのはゆるせない」

 教室までへの足を止めミナちゃんににらみつけた。

「ご、ごめん。そうじゃなくて、その……新居が見たくてね」

「ごめん」と二人は白状した。まあ、そんなことだと思ってたけどね。

「キョウちゃんの『愛の巣』が見たいの」

 ミナちゃんの言葉にタマちゃんも鼻息を鳴らして同意する。

「ダメ」

「そんなあ~。タマちゃんも言ってよ」

「……見せて」

 タマちゃんが腰を折って上目づかいでうったえてくる。そんな可愛く頼《たの》んできても……。

「ダ、ダメなものはダメ」

 って、ミナちゃんも同じポーズで訴えてきたけど、君は可愛くない。

 二人を迂回うかいして教室へ向かう。

「ねえ、ねえ~」

 二人にまとわりつかれながら教室に着き、自席に座る。

 今日は搾精さくせいがないので、授業まで時間に余裕があり過ぎる。

 彼らが自席に向かわず回りに纏わり付くのが鬱陶うっとおしくなり。

「母さんの都合が悪くて行けなかったら考える」とけ合ってしまった……。意志薄弱はくじゃくだ。

 途端に二人は機嫌が良くなり、自席に座って授業の準備を始めた。

「連絡つかないな……」

 返事が来ないのは母の都合が悪いのかもしれない。お昼まで待ってダメだったら、実家はまた今度にしよう。
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