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2.新居からの新生活

31.働いたあとの入浴は……

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「ふぃ~っ」

 労働のあとの風呂はいい。社会人になった気分。

 普通なら家にこもっているか、婚姻こんいん先の家にかこわれる人生しかない。

 そもそも、男の求人がないから自立するすべがない。ごく狭少きょうしょうな職種しか無い。

 それでもしないと、男にお金もうけはできない。

「自転車くらいならマキナは買ってくれる、だろうなあ~」

 しかし、車購入や運転免許を取るお金はねだれない。

「……あのまま、働かせてくれないかな~」

 そうすれば、少しは自由にできるお金ができる。もしダメなら、夜のお店か何か、特殊な接客業で探すしかないだろう。


『あの……。俺、帰るわ』

 お風呂のとびらしにケイト先輩が話しかけてきた。赤井さんとの話は終わったのかな?

「あ、はい。おつかれ様でした。気を付けて帰ってください」

『それじゃ』

『キョウさん。私も帰ります。マキナさんのご飯は温めてあげてくださいね』

「はい。ありがとうございます。お気を付けて」

 赤井親子は一緒に帰るようだ。ええっと、なんだっけ?

 訊きたいことがあったんだけど思い出せない。また、今度で良いか……。


 ドアの開閉音がすると、家の中は静寂せいじゃくに包まれ、チャプチャプと時折お湯のねる音しか聞こえない。

「明日は……部活ない……し、何……するかな……」

 お湯の温かさで睡魔すいまおそってきた。お風呂を上がって復習するか……。


 お風呂を上がってスウェットを着ると、自室に上がってカバンから作業着とお弁当箱を取り出した。

 そこまでして、洗濯機の使い方をいて置けば良かったと後悔した。まあ、見れば分かるか……。

 作業着、ジャージと弁当箱を持ってダイニングに入ると食器は洗われていた。

 洗い物くらいするのに、と思いながらお弁当箱を洗って食器カゴにせておく。

 ジャージと作業着などよごれものをランドリーに持っていき、洗濯せんたく機に放り込む。

 操作パネルをにらんで見ると、量と時間を設定してスタートボタンを押すだけみたい。

 洗濯機をスタートさせると、勉強道具をダイニングに持ってきて、今日の復習をする。


 ああ~まだ何か忘れてるなあ~と、考えながらタブレット操作やノートに書き込んで復習していると、玄関からドアの開閉音がした。

「お帰りなさい」

「ん、ただいま」

 急いで玄関へマキナを迎えに行って、カバンを受け取る。

「食事ですか? お風呂に入ります?」

「風呂は食事のあとで」

「分かりました」

 急いでダイニングに戻り、勉強道具を端に寄せて片付けると、料理の皿をレンジに入れて温める。

 マキナは、ダイニングに入ってくると冷蔵庫に直行して缶を取り出しけると、その場で一口飲んだ。

 缶ビールとかかな?

「くうう~、この一口がたまらん!」

「お酒って、そんなに美味おいしいですか?」

「ん~、そうでもない……」

 じゃあ、なんで飲むんだよ? って、オブラートに包んで訊いてみる。

「ルーチンになってるな。ほろいすると気持ちいいが、美味くはない。それと──」

 食前に炭酸を飲むと食が進むんだ、と言う。なるほど。

 ボクのタブレットやノートを見ながら立ったまま、また一口飲んでる。

 食器だなからスモールグラスを取り出して、マキナの席に置く。

 料理が温まる間にお風呂の追いきを始める。

「温まりましたよ」

 温まった料理とよそったご飯を席に置いて、ソースやマヨネーズなど調味料もえる。

 タブレットから手を放したマキナは座って食べ始める。

 対面に座ると、空いたグラスにビールをぐ。冷えたものを飲むと知っていたならグラスを冷やして置ければ良かったけど、仕方ない。

「今日はありがとうございました。何かいろいろ迷惑めいわくかけて」

「なんでもない。しかし、お前は、もうちょっと……気を付けろ」

「……はい」

 グラスがいたので、またぐ。

「あの仕事って、どうやったらできますか?」

「……はあ? 仕事って清掃か?」

「そうです」

「お前に仕事をさせる心算つもりはないぞ。仕事してどうする?」

「それは……」

 働いてお金をかせぐ言い訳が思い付かない。

「お前は卒業まで大人しくしていればいいんだ。たのむから心配させないでくれ」

「…………」

 心配させるなといて言葉をげなかった。でも……。

「ほら……社会勉強です、よ。社会に出て女性が働くのを見て大変さを知る、とか。男の立場で新しい発想が生まれる、とか……」

 じ~っと、マキナはボクをる。心の中を見透みすかすように。

 グラスをあおると、ボクに差しだす。また、ビールをぐ。

 そのグラスをテーブルに置くと、泡の立ち具合を見るように見入っていた。
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