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2.新居からの新生活

27.秘書室と社長さん

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「失礼しま~す」と、秘書ひしょ室に入室してゴミを集める。

 こちらの美人さんもボクを見て、うすら笑いしてくるね。まあ、いいけど。

 いた扉から社長室に凸撃とつげきしようとしたら秘書さんに止められた。

 少ししか社長室が見れなかったよ。秘書室から追い出されそうになったら、奥から声が。

「──ちょっと君」と呼んだ秘書さんをつかってボクは社長室に通された。

 執務しつむ机の奥にどっかり座って書類を見ている社長とおぼしき人。後ろに松林が隅に描かれている海辺の絵がかかげてある。

 マキナが年風貌ふうぼうの人だ。間違いなくマキナの親族だろう。

「可愛い清掃員だね?」

 そう言って書類を置き、こちらに、と手招てまねきする。

 入口のドア辺りで秘書さんが少し狼狽うろたえていた。

 承諾しょうだくする秘書さんを目で確認すると、社長の前へ進んだ。

 立ち上がるとこちらに歩みってボクを観察する。あごを親指と人さし指でつまみながら、ぐるっとボクの周りを回って正面に戻るとうなずいた。

蒼屋あおやキョウくん、掃除頑張がんばって」

「はい?」

 用事は終わったとばかり、マキナ似の社長は席に戻った。ひかえていた秘書さんにボクはかれて社長室を出る。

 秘書室・社長室の仕事はすでに終わっており、秘書室前で待つケイト先輩と一緒に今日の作業を終えた。

 マキナの親族だとしても、どうしてボクの名前を知っていたのか?……。

 いや、婚約の報告はませた言っていたけど、名札の青屋からボク──蒼屋キョウに辿たどり着いたのか。

「お前、何やってんだよ。心臓が止まるかと……」

「すみません」

 集積所にゴミを収めて、道具を洗って片付けたら終了だ。

「あとはやっておく」と言う先輩に任せてロッカーでマキナに報告する。

〔終わりました。着替えて帰ります。

〔掃除の責任者さんは責めないで〕っと。

 短文入力中は、着替えそっちのけのおば──お姉さんたちに熱烈ねつれつかまわれて辟易へきえきしました。


「おーい、帰るぞ?」

「なんだ。もう片付けちゃったの?」

「センパ~イ!」

 助かった~。ケイト先輩が道具を片付け、ロッカーに来てくれた。

 お姉さんたちにまとわり付かれて着替えができない。

「お姉さんたち、帰らなくていいんですか?」

「いいのいいの。帰ってもご飯食べて寝るだけだし」

「そうそう。この子と居ると何か若返る感じがするのよね~。いいにおいするし」

「そうなのよ。どんなコロン、使ってるの?」

 お姉さんたちは、ボクの首許くびもとわきに鼻先を無遠慮ぶえんりょいでくる。

「さ、さあ?……」

 あのソープのせいかな? 母に持たされただけで良く知らないんだよね。

 しかも、動いて汗がにじんだことで匂いが発散してるかも知れないし、閉じた場所で匂いがこもっているのかも知れない。

「もう、困ってるでしょう。この子はお姉さんたちほどスレてないんですから」

 ケイト先輩がお姉さんたちを引きがしてくれる。

「さあ、早く着替えた、着替えた。片付けて帰りますよ」

「そうね。また、話聞かせてね?」

「まあ、また今度でも良いわね」

 やっと引き下がって、お姉さんたちが着替えていく。先輩がたてになってくれたので着替え始める。

「ありがとうございます……」

 先輩のかげでスクールバッグからジャージを取り出し、ささっと作業着をいでいく。

 ジャージ姿になると借りた作業着をたたみ、それをどうしょうか考える。洗って返すのが普通だろう。

「作業着をどうするかなやんでるのか? また使うかも知れないから持って帰ればいいだろう」

 作業着の一枚や二枚で、どうなるものでもないと太鼓判を押す。

 次に使わなくても洗って返すんだろうし、確かに先輩のいう通りだ。IDカードを返すのもその時でいいか。

 たたんだ作業着をバッグにめる。

 お姉さんたちも、「おつかれ」と言って帰って行った。

「俺、ロッカー室のかぎを返してくるから、通用口で待っててくれ」

「分かりました」

 ボクは、了承りょうしょうしてロッカー室から通用口へ向かう。先輩は戸締とじまりとかまでやらないといけないんだね。
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