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2.新居からの新生活
24.新しい帰り途
しおりを挟むさて、帰りは新しい経路を使って帰ろう。更衣室に着くとネットで調べてみる。
路線を確認していると、実家の向こうにマキナの会社、新居は別路線で学園からは実家より近い。しかし、駅から徒歩の距離がかなりあった。
「電車通学はかなりつらいかな?」
自動車免許がほしい。車もほしい。
そのうち実家にも寄らないといけない。身近なものは揃えてしまったので不自由はないけどね。
なんとなく実家の先、マキナの会社に行ってみようかな、と発想が湧いた。
善は急げで、ジャージのまま学園を出た。丘陵を下り最寄駅から電車に乗った。
車内は人がまばら。ジャージ姿もそれほど奇異には見られていない。
会社の最寄駅で電車を降りる。地図アプリで確認するとすぐ会社だ。
歩き出すと前を見慣れた人が歩いてる。
「あれ? ケイト先輩?」
ほぼケイト先輩に違いないと思うけど確認まではできない。こんなところに家があるとは思えない。
マキナの会社までの道を先輩らしき人を追いかける形になった。
会社まで、前を歩く人と逸れることがなかった道程も会社に着くと先輩|(仮)は裏の方に向かう。
会社の正面に回って確認すると花壇のあるエントランスで間違いなくマキナの会社だ。
でも正面から入って会わせてもらえるかな? いや、会えるだろうけど、サプライズできない。
うん、どちらかと言うとサプライズしたいために会社に来たみたいなものだ。
「先輩似の人みたいに裏に回ったら……」
もしかしたら、裏口から入れないかな?
急いで裏にまわってみたけど先輩|(仮)の姿はなかった。まあ当たり前だろうけど。
うろちょろすると駐車場側に人が通る裏口を見つけた。
そこへ行ってみるけどドアにチェックボックスがあって部外者は入れなくしてある。当然か。
ダメ元で携帯端末をかざすと解錠できてチェックをパスできた、ラッキー。
お邪魔しますと、会社内に入り恐る恐る歩いて行くと、作業着の人に見つかり、「遅い」と怒られる。
「す、すみません」
怒こる勢いに押されて、つい謝ったら、ロッカーに連れていかれた。
「ちっこいのに仕事できるか?」
作業着の女は不躾にボクの身体を見回して、そう呟いたあと、「名前は?」と訊かれた。
ムッとしたけど正直に答えるとIDカードに記名して渡してくる。
「青屋じゃなく、蒼《あお》──」
「何?」
「何でもありません」
名前、間違えてるよ。いいけどさ。
どうやら仕事にきたバイトとかとボクを間違えてるみたい。
「作業着はそこから選んで。作業は先輩に聞きながら一緒にするように」
と、何もかも一方的に進めて、その人はロッカー室から消えた。まあ、好都合だけど……。
一々、人の姿を見て「ちっこい」って付けるのは、やめてほしい。容姿ハラスメントで訴えますよ。
去り際まで「ちっこいのに……」と捨てゼリフみたいに言って行ったし!
まあ、潜入成功? マキナ、会社のセキュリティが心配だよ。
作業着があるロッカーから着られる物を探す。みんなMサイズ以上だった。
仕方なくMの作業着をパッケージから出して身体に当ててみた。案の定、ぶかぶかだよ。
ジャージを脱いで通学カバンにしまい、作業着を着ていると乱暴にドアが開かれ人が入ってきた。
ヤバいと思ったけど、気にしていない風でなるべく落ち着いて着た。慌てると余計に恥ずかしい。
慌ててボロを出さない限りは、見てくれは女子と変わらない姿だから男と判断できないはず。
着終わってドアの方を見たら作業服のケイト先輩が呆然としていた。
「ど、どうしてここに?」
「えっと、作業しにきました?」
「そんなワケないだろう」
「ですよね~。なんか廊下歩いていたら作業員と間違われて」
「いや、そんなことじゃなくて、だな……」
ちょっと主任に文句言ってくる、とか言う先輩を宥めて止めた。
サプライズには持ってこいなので、先輩には協力してもらおう。
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