*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

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翌日。

善は急げ、ということでコブラに履歴書を書かせると、早速バイト先のコンビニへ向かった。

オレの旅行中、店長はずっと出勤のシフトだったから店にいるだろう。

もしいないとしても、店長の家はコンビニのすぐ裏という目と鼻の先だ。

トラブル発生時にすぐかけつけてくれる距離にいるのはありがたいが、こんなコンビニ中心の生活で息が詰まらないか心配にもなる。

もちろん店長は四六時中働いているわけではなく、休んでいる時は代わりに奥さんや息子さん、娘さんが登場して手伝ってくれている。

まさにコンビニ一家だ。

みんな嫌な顔一つせずオレにも接してくれるし、店長同様性格も優しい。

店長の周りにいる人はみんな良い人だ。

この人あってこの家族有り。

関わると関係を断ちたくなくなるような何かがある。

それでも諸事情で辞めていった人はいるが、みんな最後には店長と一緒に仕事ができなくなるのは残念、と店長との別れを嘆いていた。

なので、ここを卒業してもお客としてこの店を利用する退職者は多い。

オレもここを辞めたとしてもきっと利用するだろう。

それほどこの店、というか店長はお気に入りだ。

店に入るとすぐに店長を見つけた。

比較的来店客の少ない時間を狙ってきたが、店長は暇を持て余すわけでもなく、商品を陳列し直したり軽く清掃したりしていた。

よく働く人だ。

「あれ?あれあれ?プーさんじゃない。どうしたの?」

作業の途中でオレの姿に気づいた店長は、驚きながらも迷惑にならないような声量で声をかけてきた。

「店長さんにもその呼び名で呼ばれているんですね」

背後からコブラがつぶやいた。

その声に反応して、店長が後ろを覗き込む。

「あれ?初めましてさんだね。プーさんのお友達?」

「はい。昨日知り合ったばかりですけど」

「へー。学生さんは人と仲良くなるのが早いねぇ」

「店長、この子昨日ちょこっと話したお隣さん」

「ん?・・・あぁー!プーさんの家で寝込んでるって言ってた子?」

「そうです」

昨日旅行鞄を持って立ち寄ったコンビニはここだ。

飲み物を購入するつもりが、コブラが気になってコブラ用の買い物をしてしまった。

旅行に持っていくには変わったチョイスだね、と店長に言われて事の一部始終を話して自宅へ戻ったのだった。
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