*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

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トリップ47というサークルだってそうだ。

1人だったら日本全国を旅行するなんてできなかった。

でもこのサークルに入って、自分達で計画を立ててあれこれしているうちに、近場だったら1人でも小旅行できるくらいにはなった。

自分で何かをやってみようという気持ちがないと、身に付けたい力は付かない。

「でもバイトってお金貰うじゃないですか。それなのに鈍くさいことをしていたら迷惑になりそうで」

「最初から完璧にしようと思うからそういう考えになるんだって。徐々に慣らしていって、1つずつできるようにしていくんだ。反復作業で身に付けていくってのは、受験勉強の時に経験済だろ?」

「はい・・・でも何度やってもだめなことってありますよね」

「だったら諦めて次のバイトを探せばいい。1つにこだわり続ける必要ないんだし」

「それだと長続きしないやつって思われて、次のバイトで断られたりしませんか?」

「大丈夫だよ。たかがバイトだし。就職の時にそれだとさすがに問題有りだけど、バイトはもっと気軽に考えればいいよ」

「気軽に・・・ですか」

「早くバイト見つけないといつまで経っても朝食抜きのままだぞ。とりあえず何でもいいじゃん、やってみれば。大学生なんて講義受ける時以外は自由なんだし。この時間あるうちにいろんな経験しておかないと損だぞ。就職して社会人になったら本当に時間がなくて、休日は疲れて寝てるだけって卒業した先輩が愚痴ってた」

年に2回、サークルでは卒業生を交えて親睦会が行なわれる。

参加は自由だが、オレは昨年2回とも参加して、そこで卒業した先輩の愚痴を聞いたのだ。

「お前ら、時間があるうちに青春しとけよ」

これが親睦会の時に卒業した先輩から送られる愛のメッセージらしい。

ずっと変わらずこのセリフ。

社会人になるとこの言葉以外出てこないようだ。

その言葉を重く受け止め、オレは青春を謳歌している。

「自信ないんだったらオレのバイト先紹介してやろうか?オレからの紹介だったら入りやすいし、知り合いが一緒だと多少は安心だろ」

「本当ですか?」

コブラの顔がパッと明るくなった。

よほどバイトをすることに不安があるらしい。

バイト未経験なのかもしれない。

「ちなみにくまのさんは何のバイトをされてるんですか?」

「コンビニ。駅前の」

「え」

コブラの表情が一転した。
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