*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

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今は何より経験者の正しい意見が知りたい。

でも身近にそんな人は・・・。

「あ」

ひらめいた。

いるじゃないか、身近に。

この薬箱を強引に手渡した人が!

経験者も経験者、何しろオレが過去にあれこれ悩んだことをズバッと助言してきた実績がある。

親なので子どもの考えることなんてお見通しということだと思うが、知識も経験もオレの数倍。

頭痛の治し方なんてものもすぐに思いつくだろう。

正月に1度帰ってから連絡することがなかったので、急にかけると驚くかな?と考える時間も惜しく、早速受話ボタンを押した。

勤め人でないと言えど、朝のこの時間帯は忙しい。

父親が仕事に出かけてから洗濯と洗い物をするのが日課だったから、今はそれで動き回っている頃だろう。

長いコールの末、やっと電話が繋がった。

「どないしたん?何かあったんか?困りごとか?」

開口一番、矢継ぎ早に質問された。

定期的に連絡を取っているわけではないので、連絡が入った時は何かあった時だと思われている。

それもマイナスの要因で。

母親の声が携帯電話から漏れてくるくらい大音量なので、コブラを気遣ってベランダに出る。

「実は知り合いが頭痛で寝込んでて、熱がひかなくて」

「そやから普段からちゃんと気いつけやって言うてるやろ」

「いやいや、オレじゃなくて知り合いやって」

きちんと主語を入れて説明しているのに、早とちりする母は単語しか聞き取っていない。

せかせかする関西人の特有なのかもしれないが、こんな勘違いが多いので結局余計に時間がかかったりする。

「どうしたら頭痛が治るか?ってことなんやけど」

「頭痛って言われても、どんな痛みやの?」

「どんなって、ズキズキ以外に何かあるってこと?」

「あるがな。右・左どちらかだけが痛いんか、全体が締め付けられるように痛いんか」

何だ、それは。

頭痛って1つだけじゃないのか。

小さい頃、数回程度しか経験はないが、その時はそんなこと聞かれもしなかったように思うが。

疑問に思いつつ、ベランダからコブラに症状を確認する。

全体が締め付けられるように痛いと言っている。

「ほな緊張型やな」

「緊張・・・?」

「血流が悪くて頭痛くなるやつや。冷やしたらあかんで」

「え!!」

さっき親切心で冷たいタオルをかけた。

あの行為はダメだったのか。
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