*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

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「う・・・」

メールのやり取りに夢中で一瞬コブラのことを忘れていたが、ベッドに目を向けるとコブラが体を起こしていた。

寝ぼけたまま、あさっての方向を見ている。

「目、覚めたのか。ちょっと熱計ってみるか?」

薬箱から体温計を取り出し、コブラに手渡す。

思えば薬も体温計もこちらに来てからまだ使用したことはなかった。

まさか初めて使うのが今日出会ったばかりの後輩になろうとは、ワッキーですらこんな未来は想像できなかっただろう。

数分後、ピピッと電子音が鳴って体温を確認すると、37,8度あった。

薬を飲む前に何度あったのかはわからないが、飲んだ後でも高熱であることに違いはない。

「高いな」

今でこれほど高いのなら、昼の気温の上昇とともに体温ももっと上がるかもしれない。

「大丈夫です。薬も飲みましたし、あとは眠っていれば良くなると思うので」

コブラは再びベッドから立ち上がろうとする。

しかしまだ頭が痛いのか、こめかみ辺りを押さえた。

「ダメだって。無茶するなよ。悪化するぞ」

「でももう出かける時間じゃ・・・」

「まだ大丈夫だ」

とは言うものの、出発時間は迫っていた。

もう本来出かけようとしていた時間だ。

駅まで徒歩15分のところを、早歩きすれば乗ろうと思っている電車には乗れる。

何だったら走ってもう少し時間を確保しても良い。

「ほら、横になってろ。頭ズキズキ痛むんだろ?」

コブラは言われたまま布団の中に戻る。

素直に応じるということは、体調が悪い証拠だ。

人間、弱ると逆らえなくなる。

「まいったな」

コブラに聞こえないように独りごつ。

オレには医学的知識はない。

風邪の対処法なんてわからない。

薬を飲んで一眠りすれば治るものじゃないのか。

ワッキーに対処法を聞いてみたいが、オレももう出かける時間だ。

さすがにワッキーも出発しているだろう。

そんな時に質問すれば、まだコブラに構っていることを突っ込まれるかもしれない。

インターネット上には対処法が述べられているだろうが、いろんな意見があるからどれが1番良い答えなのかわからないし、解決するかわからない。
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