*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

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最寄り駅までは徒歩15分。

駅までは遠いが、大学までは徒歩3分なので、仕方ないと思っている。

いつもは不満に思うこの距離も、目的が旅行となれば楽しくなってくるから不思議だ。

毎日1限目の始業時間ギリギリまで家にいるから、それより2時間前の光景・・・と言っても違いはわからないが、人は少ない。

7時って確かに活動するにはまだ早いよなぁ。

自分の出発に少し苦笑しながら1番最初の角を曲がる。

と同時に足元に何か触れた。

曲がったすぐ先に人がしゃがみ込んでいて、そこにちょうど自分の足が・・・言うならばその人を蹴ったような感じになってしまったのだ。

軽くではあるが、ダメージを与えたことに違いはない。

「すみません!」

オレは慌てて歩み寄った。

が、その人は顔も上げず、しゃがみ込んだままだ。

「ごめんなさい。足が当たってしまって。大丈夫ですか?」

オレも同じようにしゃがみ込んでもう1度話しかける。

するとやっとこちらに顔を向けた。

自分と年が変わらないような若い男だ。

こんなところにしゃがみ込んで、一体何をしているのかと思ったが、顔を見た瞬間すぐにわかった。

目はトロンとしていて、顔が赤い。

具合が悪そうだ。

「大丈夫ですか?」

「あ、あぁ、はい」

オレが何度も声をかけたからか、男は頭を押さえながら答えた。

頭痛なのかもしれない。

「頭が痛くて。少し休もうと腰を下ろしたら立てなくなってしまって」

「具合が悪いなら家で休んでおかないと」

「薬がないんです。それで買いに行こうと」

「駅前までですか?」

この辺りに薬局はない。

お店と言えば駅近くに行かないと何もないというのが大学近辺あるあるで、しかも駅まで徒歩15分というのが不便さを物語っていた。

徒歩3分の大学内に売店はあるが、10時開店だ。

まだあと3時間もある。

急ぎで何かを手に入れるためには、24時間営業のコンビニに行くしかなく、そのコンビニが駅前にしかない。
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