*いにしえのコトノハ*8 なっちゃん

N&N

文字の大きさ
上 下
27 / 28

26

しおりを挟む
お父さんとお母さんの存在を残してくれたことを嬉しく思う。

いつか私の前に現れた時に、呼ぶことを戸惑わせないためだろう。

15年間現れなかった。

だからもうきっと現れることはないだろうけど。

それでも気遣ってくれることが嬉しかった。

私はそっと大将の横に移動し、これで最後になる砂浜を並んで歩いた。

「なっちゃんがいなくなっても1人で頑張るよ。一人前になって帰ってきたら、海の家の大将を譲ってあげられるように」

「うん!」

大将が自然にそう言ってくれることが嬉しい。

きっと何も言わなくても、大将は私が海の家を継ぎたいということに気づいている。

だって親ってそういうものでしょう。

子どもの考えなんてお見通し、なんて言って。

「あ、でも外の世界に行って別にやりたいことができたら、そっちへ進んでくれても全然構わないから」

そんなはずないじゃない。

やっぱりちょっと甘いか。

だって半分父で、半分大将だもの。

先のことはわからなけど、大丈夫。

私は戻ってくる。

大将と過ごしたこの海の家に。

お父さんとお母さん、そして大将が待つこの海に。

私はきっとまた戻ってくる。

波の音を聞きながら、そう胸に強く誓った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

*いにしえのコトノハ*3 too late to do

N&N
青春
判断は何でも早いに限る

*いにしえのコトノハ*2 レインドロップス

N&N
青春
私、後悔まではしてないから

*いにしえのコトノハ*6 おばあちゃんの勘違い

N&N
現代文学
あなた、もう少しだけ そちらで待っていてくださいな

*いにしえのコトノハ*4 1/2

N&N
青春
Loveじゃなくて、Likeじゃなくて、

*いにしえのコトノハ*7 欠けコトバ

N&N
現代文学
本当は・・・ 知ってたんだ。

*いにしえのコトノハ*5 匿名ごっこ

N&N
青春
あれはきっと あの人からだと 自分だけが 知っている

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

N&N
青春
困った時はお互い様 先輩も後輩も 身内も他人も 細かいことなんて 気にすんなよ

処理中です...