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「だから旅館でもとりあえず仲間をいっぱい作るんだよ。夢が早く叶うかどうかは人脈にかかってるんだから」

「えっそうなの?」

「そうだよ。実際この海の家だって誰かここに絡んでいる人が身近にいなきゃ働くことなんてできなかったよ。ただのサラリーマンだし」

「ここはどうやって働けるようになったの?」

「元々はアキさんの親がやってたんだけど、急死しちゃってね。その前にここでアキさんと知り合って顔見知りになっていたから引き継げたんだよ」

「何それすごい!」

「元々は自分がここの常連だったんだ。ここで飲み食いしているうちにみんなとも仲良くなったんだよ」

「そうだったんだ」

それで新たな人の繋がりができて、仲良くなって、夢に繋がっていったのか。

大人の仲間の作り方って素敵だなと思った。

思えば就職すると決めた時、県外に出ることを進めてきたのは大将だ。

理由はそういうことだったのか。

「風が出てきたな」

台風が来ている、ということを忘れるくらい語っていたら、その声に反応するように風が私の髪の毛をなびかせた。

大将が立ち上がったので、私も自然と立ち上がる。

「あの、今までありがとう」

ずっと言おうと思っていた。

だけど照れくさくて言えなかった。

言うタイミングがつかめなくて、ずっと言いそびれていた。

過ぎたことをくよくよ悩んでも仕方がない。

時は進んでいるんだから。

そう言われたことを思い出して、今言おうと思った。

「お父さん」
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