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私の体温が熱くなってきたからか、次第に那智がぐずり始め、家に着いた頃には声を上げて泣いていた。
体を揺すりながら取っ手に手をかける。
出かけた時に施錠したまま、何も変わっていなかった。
本当にどこへ行ってしまったのだろう。
那智の泣き声は大きくなるばかりだが、こちらが泣きたい状況だった。
やがて隣人が那智の声を聞きつけて、外に出てきた。
泣き声がうるさいと怒られるのかと思い、すみません、と会釈混じりのお詫びを述べる。
しかし隣人は怒るどころか、にっこり笑って応えた。
「名方さんだったら出かけられましたよ」
隣人から名方さんの名前が出て驚く。
小さなアパートだが、ちゃんと近所付き合いはしていたようだ。
そんなことよりも。
思わぬところから情報が入り、期待する。
「あの、どこへ出かけたかご存知ですか?」
焦る気持ちを抑えつつ、尋ねる。
「はい、おそらく海に行ってるかと」
「海?」
全く予期していなかった行き先に耳を疑った。
「暑いですからね。頭を冷やすのに川か海、近くにないか尋ねられたので。駅の向こう側が海だから、そっちに行ったと思いますよ」
「そう・・・ですか」
頭を冷やすのに川か海、とは一体どういう意味だろう?
泳ぐつもりなのだろうか?
私が来るとわかっているのに?
体を揺すりながら取っ手に手をかける。
出かけた時に施錠したまま、何も変わっていなかった。
本当にどこへ行ってしまったのだろう。
那智の泣き声は大きくなるばかりだが、こちらが泣きたい状況だった。
やがて隣人が那智の声を聞きつけて、外に出てきた。
泣き声がうるさいと怒られるのかと思い、すみません、と会釈混じりのお詫びを述べる。
しかし隣人は怒るどころか、にっこり笑って応えた。
「名方さんだったら出かけられましたよ」
隣人から名方さんの名前が出て驚く。
小さなアパートだが、ちゃんと近所付き合いはしていたようだ。
そんなことよりも。
思わぬところから情報が入り、期待する。
「あの、どこへ出かけたかご存知ですか?」
焦る気持ちを抑えつつ、尋ねる。
「はい、おそらく海に行ってるかと」
「海?」
全く予期していなかった行き先に耳を疑った。
「暑いですからね。頭を冷やすのに川か海、近くにないか尋ねられたので。駅の向こう側が海だから、そっちに行ったと思いますよ」
「そう・・・ですか」
頭を冷やすのに川か海、とは一体どういう意味だろう?
泳ぐつもりなのだろうか?
私が来るとわかっているのに?
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